大量破壊兵器の用途要件と別表行為
大量破壊兵器キャッチオール規制の用途要件の意味と、核兵器等の開発そのものでなくても対象になる別表行為の考え方を、令和7年10月9日施行の改正後の姿で学びます。
この節で学ぶこと
- 用途要件とは何かを、貨物や技術の使い道に着目して説明できるようになります。
- 核兵器等が6つの区分からなることを、説明できるようになります。
- 別表行為がなぜ用途要件に含まれるのかを理解し、核融合に関する研究などの例外まで見分けられるようになります。
覚えること
- 大量破壊兵器キャッチオール規制が対象とする大量破壊兵器を、法令では核兵器等といいます。核兵器等は6つの区分からなります。核兵器、軍用の化学製剤、軍用の細菌製剤、これらの散布のための装置、これらを300キロメートル以上運搬できるロケット、同じく300キロメートル以上運搬できる無人航空機です。
- 貨物や技術の使い道が核兵器等の開発などに向かうとき、許可がいると判断する入口を用途要件といいます。判断のもとになるのは、輸出者が通常の取引で入手した情報です。
- 用途要件が捉えるのは、核兵器等の開発そのものだけではありません。それに深く関わる危険な活動も含まれます。この活動を別表行為といい、重水の製造や核燃料物質の再処理などがあたります。
1. なぜそうなるのか
3.1 用途要件とは
用途要件とは、輸出しようとする貨物や技術が、核兵器等の開発、製造、使用、貯蔵(これらをまとめて開発等といいます)に用いられるおそれがあるか、という使い道に着目して判断する基準です。
この判断は、輸出者が通常の業務の範囲で入手できる情報にもとづいて行います。具体的には、相手から示された契約書、製品仕様書、技術打ち合わせの記録、電子メールのやり取りなどに、核兵器等の開発等を示す情報が含まれていないかを確認します。
輸出者に、探偵のような特別な調査まで求められるわけではありません。ただし、不自然な用途の指定や、兵器開発を疑わせる要求といった懸念の兆候(レッドフラッグ)が取引のなかにあるのに、それを見過ごして確認を怠った場合は、義務を果たしたとはみなされません。
3.2 核兵器等の6区分
用途要件を正しく判断するには、その入り口にあたる「核兵器等」が何を指すのかを、はっきりさせておく必要があります。核兵器等は、次の6つの区分からなります。
- 核兵器
- 軍用の化学製剤
- 軍用の細菌製剤
- 軍用の化学製剤または細菌製剤の散布のための装置
- 1から4を300キロメートル以上運搬することができるロケット
- 1から4を300キロメートル以上運搬することができる無人航空機
1から4は、兵器そのものや、それをまき散らすための装置です。5と6は、その兵器を遠くまで運ぶための手段にあたります。ここで気をつけたいのは、5と6についている「300キロメートル以上運搬することができる」という条件です。運べる距離が300キロメートルに届かないものは、この区分にはあたりません。この距離の条件は、試験でよく問われます。
なお、無人航空機には、いわゆるドローンも含まれます。ですから、航続距離が300キロメートルを超えるドローンをつくるために使う、という用途が分かれば、それは用途要件にあたります。呼び名がドローンであっても、まず無人航空機として距離の条件を確かめる、という順序で見ましょう。
3.3 別表行為
用途要件が捉えるのは、核兵器等の開発そのものだけではありません。核兵器等の開発に直接はあたらないものの、それに深く関わっていて危険性が高い活動も、あわせて捉えます。この活動を別表行為とよびます。これらの活動が法令の別表に一覧としてあげられているので、この名でよばれます。たとえば重水の製造は、それ自体は兵器づくりではありません。しかし、核開発と深く結びつくため、別表行為に入っています。
別表行為には、たとえば次のものがあります。
- 核燃料物質または核原料物質の開発など
- 核融合に関する研究
- 原子炉やその部分品、附属装置の開発など
- 重水の製造
- 核燃料物質の加工
- 核燃料物質の再処理
いまの別表は、この6つ、つまり原子力に関わる活動だけです。令和7年10月9日に施行された改正より前は、7つ目として「軍または国防に関する行政機関が行う、あるいはこれらから委託を受けて行うことが明らかな、化学物質の開発や製造、微生物や毒素の開発など、ロケットや無人航空機の開発など、宇宙に関する研究」が置かれていました。この第六号は改正で削除されています。古い解説書や問題集には、この7つ目が載っています。施行日を確かめて読んでください。
3.4 例外に気をつける
別表行為には、平和な目的であることが明らかなときの例外があります。危険性が高い活動であっても、平和利用だとはっきり分かるものまで規制してしまうと、通常の研究や産業のさまたげになるからです。
たとえば、核燃料物質や核原料物質の開発などです。これらは原則として別表行為に入りますが、沸騰水型軽水炉または加圧水型軽水炉の運転に専ら付帯して行われることが明らかな場合は、別表行為から除かれます。発電所の日常の運転に付随する作業まで捉えてしまわないための線引きです。
核融合に関する研究にも、同じような例外があります。専ら天体に関するもの、または専ら核融合炉に関するものであることが明らかなときは、別表行為から除かれます。
なお、改正前は宇宙に関する研究が別表行為(第六号)に入っていて、専ら天文学に関することが明らかなものを除く、という例外が経済産業省告示第761号に置かれていました。第六号が削除されたため、この例外の枠組みも別表からは無くなっています。
2. 注意すべきこと
試験で気をつける点
- 用途要件は「使い道」、需要者要件は「相手」に着目します。どちらの入口の話かを取り違えないようにしましょう。
- 核兵器等の6区分のうち、ロケットと無人航空機は「300キロメートル以上運搬できる」ものに限られます。距離の条件を落とさないようにしましょう。
- 別表行為は、核兵器等の開発そのものでなくても用途要件に含まれます。「兵器づくりそのものではないから対象外」と早合点しないようにしましょう。
- いまの別表行為は、原子力に関わる6つだけです。軍や国防機関が関わる化学物質・微生物・ロケット・宇宙研究を捉えていた第六号は、令和7年10月9日に施行された改正で削除されました。改正前を前提にした問題文に出会ったら、施行日を確かめてください。
実務で気をつける点
- グループA向けでは、用途要件は働きません。インフォームを受けたときだけ許可がいります(輸出令第1条第3項・第4条第2項)。ただし、用途が大量破壊兵器に向かうと分かる取引では、巻きこまれを避けるためのリスクマネジメントの確認が残ります。仕向地がどの層かを最初に確かめる習慣が、ここでも効いてきます。
3. 根拠法令
e-Gov突合:済(2026-08-05)。核兵器等開発等省令(413M60000400249)を e-Gov 法令API v2 で取得し、改正前(asof=2025-10-01)と現行を条文で突き合わせて確認しました。別表第六号の削除は、両版の別表を並べて確認しています。告示は法令APIの対象外のため未突合です。
- 大量破壊兵器の定義(核兵器等の6区分)は、輸出令第4条第1項第一号イが根拠です。
- 用途要件は、貨物については核兵器等開発等省令の第一号、技術については核兵器等開発等告示の第一号に定められています。別表行為は、これらの省令・告示の別表に並んでいます。
- 別表行為の例外は別表の各号の括弧書きにあります。核燃料物質等の開発などは軽水炉の運転に専ら付帯するものを除き、核融合に関する研究は専ら天体に関するものまたは専ら核融合炉に関するものを除きます。
- 改正前に第六号(軍・国防機関が関わる化学物質・微生物・ロケット・宇宙研究)が置かれ、宇宙に関する研究の例外を経済産業省告示第761号が定めていました。第六号は令和7年経済産業省令第61号(令和7年9月18日公布・10月9日施行)で削除されています。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- X社の担当者は、仕向地をグループA・国連武器禁輸国・それ以外の3つの層に分けて確かめた。この3つの層は、対象か対象外かを分ける線ではなく、働く要件の数を変える線である。解く
- X社の担当者が輸出令の別表を確かめたところ、別表第3(グループA)に掲げる地域は27か国、別表第3の2(国連武器禁輸国)に掲げる地域は10か国だった。解く
- 国連武器禁輸国は、非グループAとは別の枠として扱われる解く
- X社は、16の項に該当する貨物を大韓民国のY社へ輸出する。大韓民国は2023年7月に輸出令別表第3の地域(グループA)へ加えられ、現在も同表に掲げられている。解く
- X社が16の項(一)の貨物の輸出先を調べたところ、需要者Yが通常兵器の開発を行っていることが分かった。通常兵器の需要者要件は、通常兵器開発等省令の第二号(需要者が開発等を行う旨)と第三号(需要者が開発等を行った旨)が定めている。解く