貸倒れと貸倒引当金
売掛金などの回収不能に備えて貸倒引当金を差額補充法で設定し、実際に貸倒れたときの充当や、過年度に貸倒処理した債権の回収を処理できるようになります。
ねらい
掛けで売り上げた代金は、いつも全額が回収できるとはかぎりません。取引先の倒産などで、回収できなくなることがあります。 このレッスンでは、この回収できなくなること、つまり貸倒れ(かしだおれ)に備えるしくみを学びます。あらかじめ見積もって用意しておく貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)の設定、実際に貸倒れたときの処理、そして過去に貸倒れとした債権を後で回収したときの処理まで身につけましょう。
ストーリー
文房具店には、得意先に対する売掛金がたくさん残っています。 これまでの経験から、売掛金のうちいくらかは、残念ながら回収できないだろうと見込まれます。回収できなくなってから慌てるのではなく、決算の時点で、回収できそうにない金額をあらかじめ見積もって備えておきます。 この備えが貸倒引当金です。貸倒引当金は、売掛金などの資産から間接的に差し引く役割を持つ勘定で、残高は貸方に出ます。備えを設定するときの費用は、貸倒引当金繰入(かしだおれひきあてきんくりいれ)という費用で記録します。
貸倒引当金を設定する仕訳
決算では、売掛金などの期末残高に、回収できない割合(貸倒見積率)を掛けて、必要な貸倒引当金の金額を見積もります。
ポイント
このとき、すでに貸倒引当金の残高がある場合は、見積もった金額と現在の残高との差額だけを新たに繰り入れます。
この方法を差額補充法(さがくほじゅうほう)といいます。 「決算で、売掛金の期末残高500,000円に対して2パーセントの貸倒れを見積もる。貸倒引当金の現在の残高は3,000円である。差額補充法による」取引を考えてみましょう。 見積もる金額は、500,000円の2パーセントなので10,000円です。すでに3,000円の残高があるので、不足する7,000円だけを繰り入れます。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 貸倒引当金繰入 | 7,000 | 貸倒引当金 | 7,000 |
貸倒引当金繰入は費用にあたり、費用が発生したときは借方へ記入するので、貸倒引当金繰入を借方に書きます。 貸倒引当金は、売掛金を間接的に減らす評価勘定です。残高は貸方に出るので、増えるときは貸方へ記入します。よって、貸倒引当金を貸方に書きます。
動かして確かめる
期末残高・見積率・既存の残高を動かすと、差額補充法の繰入額がどう変わるか確かめられます。見積額と既存残高がちょうど同じになると、仕訳が不要になることも試してみましょう。
スタディード / 動く解説
見積額と残高の差額だけを繰り入れる。
期末残高・見積率・すでにある残高を動かすと、繰り入れる金額がどう変わるか確かめられます。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 貸倒引当金繰入 | 7,000 | 貸倒引当金 | 7,000 |
実際に貸倒れたときの仕訳
次の期に、備えていた売掛金が実際に貸倒れたとしましょう。 前の期から繰り越されてきた売掛金が貸倒れたときは、用意しておいた貸倒引当金をまず充てます。 「前期に生じた売掛金5,000円が、得意先の倒産により貸倒れた。貸倒引当金の残高は10,000円ある」取引です。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 貸倒引当金 | 5,000 | 売掛金 | 5,000 |
回収できなくなったので、売掛金が減ります。売掛金は資産にあたり、資産が減ったときは貸方へ記入するので、売掛金を貸方に書きます。 備えてあった貸倒引当金を取り崩して充てるので、貸倒引当金が減ります。貸倒引当金は評価勘定で、残高は貸方に出るため、減るときは借方へ記入します。よって、貸倒引当金を借方に書きます。
例題
それでは、貸倒引当金の設定を自分で仕訳にしてみましょう。 「決算で、売掛金の期末残高400,000円に対して3パーセントの貸倒れを見積もる。貸倒引当金の残高はない。差額補充法による」取引です。
解答は次のとおりです。 見積もる金額は、400,000円の3パーセントなので12,000円です。残高がないので、12,000円をそのまま繰り入れます。 貸倒引当金繰入は費用にあたり、費用が発生したときは借方へ記入するので、借方に書きます。 貸倒引当金は評価勘定で、増えるときは貸方へ記入するので、貸方に書きます。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 貸倒引当金繰入 | 12,000 | 貸倒引当金 | 12,000 |
応用
最後に、過去に貸倒れとした債権を、後になって回収できた場合を見てみましょう。 前期以前に貸倒れとして処理した売掛金が、思いがけず回収できることがあります。このときは、すでに帳簿から消した債権なので売掛金は戻さず、回収額を償却債権取立益(しょうきゃくさいけんとりたてえき)という収益で記録します。 「前期に貸倒れとして処理していた売掛金2,000円を、当期に現金で回収した」取引です。
解答は次のとおりです。 現金は資産にあたり、資産が増えたときは借方へ記入するので、現金を借方に書きます。 過去に消した債権の回収は収益になります。償却債権取立益は収益にあたり、収益が発生したときは貸方へ記入するので、貸方に書きます。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 2,000 | 償却債権取立益 | 2,000 |
注意
なお、当期に発生した売掛金が、その期のうちに貸し倒れたときは、貸倒引当金を使わず、全額を貸倒損失として処理します。貸倒引当金は、前期までの売掛金などに備えて設定したものだからです。
確認問題
学んだ内容を、自分で仕訳にして確かめてみましょう。解答はそのすぐ後に示します。
問1. 決算で、売掛金の期末残高600,000円に対して2パーセントの貸倒れを見積もる。貸倒引当金の残高は5,000円である。差額補充法による。
解答1. 見積額は12,000円、残高5,000円なので、差額の7,000円を繰り入れます。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 貸倒引当金繰入 | 7,000 | 貸倒引当金 | 7,000 |
問2. 前期に生じた売掛金8,000円が貸倒れた。貸倒引当金の残高は12,000円ある。
解答2. 貸倒引当金を充当し、売掛金を減らします。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 貸倒引当金 | 8,000 | 売掛金 | 8,000 |
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 売掛金について電子記録債権の発生記録が行われたときの仕訳解く
- 取引銀行から電子記録債権の発生記録の通知を受けたときの仕訳解く
- 電子記録債権が決済され普通預金に入金されたときの仕訳解く
- 支払期日に電子記録債権が当座預金に入金されたときの仕訳解く
- 買掛金について電子記録債務の発生記録を行ったときの仕訳解く