仕損・減損の処理(度外視法)
総合原価計算で生じる正常仕損・正常減損を度外視法で処理し、発生点に応じて完成品のみ負担と両者負担を使い分けて、月末仕掛品原価と完成品原価を計算できるようになります。
ねらい
製造の途中で生じる失敗品や目減りの処理を学びます。このレッスンを終えると、正常仕損と正常減損の原価を度外視法で良品に負担させ、仕損の発生点に応じて完成品のみ負担と両者負担を使い分けて、月末仕掛品原価と完成品原価を計算できるようになります。
ストーリー
工場で製品を作っていると、どうしても失敗が出ます。加工をしくじって検査に通らなかった不合格品が生じることを仕損(しそんじ)といい、その不合格品を仕損品(しそんじひん)といいます。
また、液体の原料が蒸発したり、粉の材料が飛び散ったりして、物量そのものが消えてなくなることもあります。これを減損(げんそん)といいます。仕損と違い、減損には品物としての形が残りません。
どんなに丁寧に作業をしても、ある程度の仕損や減損は避けられません。通常の生産で避けられない程度のものを正常仕損(せいじょうしそんじ)・正常減損(せいじょうげんそん)といいます。正常な仕損や減損にかかった原価は、製品を作るために必要な犠牲と考えます。ですから、正常仕損や正常減損の原価は、切り捨てずに良品の原価に含めて負担させます。
負担のさせ方として、2級では度外視法(どがいしほう)を学びます。度外視法は、仕損品や減損がはじめから存在しなかったかのように計算する方法です。仕損品の原価を別に計算せず、按分計算のなかで自動的に良品へ含めてしまいます。なお、このレッスンでは、仕損品に売り物としての価値はないものとします。
誰が負担するかは発生点で決まる
良品には、完成品と月末仕掛品の2つがあります。正常仕損の原価を完成品だけに負担させるのか、完成品と月末仕掛品の両方に負担させるのか。それを決める手がかりが、仕損の発生点(はっせいてん)です。発生点とは、工程のどの地点で仕損が生じたかを表す進捗度のことです。
考え方はこうです。仕損の発生点を通り過ぎた品物は、そこで仕損の犠牲を出しながら進んできました。まだ発生点に届いていない品物は、仕損と無関係です。つまり、仕損の発生点を月末仕掛品が通過しているかどうかで、誰が負担するかが決まります。
仕損が工程の終点で発生した場合を考えます。月末仕掛品は加工の途中なので、終点をまだ通過していません。仕損の犠牲を出したのは完成品だけです。この場合は完成品のみ負担になります。
反対に、仕損が工程の始点で発生した場合は、完成品も月末仕掛品も始点を通過しています。この場合は両者負担になります。まとめると、次のとおりです。
| 仕損の発生点 | 月末仕掛品との関係 | 負担のしかた |
|---|---|---|
| 月末仕掛品の進捗度より後 | まだ通過していない | 完成品のみ負担 |
| 月末仕掛品の進捗度より前 | 通過している | 両者負担 |
表の1行目は、たとえば終点発生の仕損と進捗度50%の月末仕掛品の組み合わせで、月末仕掛品は発生点を通過していないため、完成品のみが負担します。2行目は、たとえば始点発生の仕損で、月末仕掛品も発生点を通過しているため、完成品と月末仕掛品の両者が負担します。
ポイント
仕損の発生点が月末仕掛品の進捗度より後なら完成品のみ負担、前なら両者負担です。問題文の「仕損は工程の終点で発生」「工程の始点で発生」という一文が判定の合図になります。
完成品のみ負担の計算
次の資料で計算します。材料はすべて工程の始点で投入しています。月初仕掛品はありません。正常仕損は工程の終点で発生しています。
生産データは、当月投入1,200個、完成品1,000個、正常仕損100個、月末仕掛品100個です。月末仕掛品の加工進捗度は50%です。当月製造費用は、材料費360,000円、加工費230,000円です。
仕損は終点発生で、月末仕掛品の進捗度50%より後です。ですから完成品のみ負担です。
度外視法の完成品のみ負担では、仕損品の数量を完成品の側に含めたまま按分します。 月末仕掛品を先に計算して取り分けると、仕損品の原価が残りの完成品原価に自動的に含まれるからです。
材料費を分けます。分母は、完成品1,000個と仕損品100個と月末仕掛品100個の合計1,200個です。月末仕掛品の材料費は、360,000円 × 100個 ÷ 1,200個 = 30,000円です。
加工費を分けます。仕損品は終点まで加工されたので、換算量は数量と同じ100個です。月末仕掛品の換算量は、100個に進捗度50%をかけた50個です。分母は、完成品1,000個と仕損品100個と月末仕掛品50個の合計1,150個です。月末仕掛品の加工費は、230,000円 × 50個 ÷ 1,150個 = 10,000円です。
月末仕掛品原価は、材料費30,000円と加工費10,000円を合わせた40,000円です。完成品総合原価は、当月製造費用の合計590,000円から月末仕掛品原価40,000円を差し引いた550,000円です。仕損品100個分の原価は、この550,000円のなかに含まれています。完成品の単位原価は、550,000円を完成品1,000個で割った1個あたり550円です。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 製品 | 550,000 | 仕掛品 | 550,000 |
正常仕損費を含んだ完成品総合原価550,000円を資産の勘定である製品の借方に記入します。完成した分だけ仕掛品を貸方に記入して減らします。
注意
加工費の換算量では、仕損品にも発生点に応じた進捗度をかけます。終点発生なら100%なので換算量は数量と同じです。仕損品の換算量を忘れて分母を作ると、月末仕掛品の金額がずれます。
両者負担の計算
次の資料で計算します。材料はすべて工程の始点で投入しています。月初仕掛品はありません。正常仕損は工程の始点で発生しています。
生産データは、当月投入1,100個、完成品900個、正常仕損100個、月末仕掛品100個です。月末仕掛品の加工進捗度は50%です。当月製造費用は、材料費400,000円、加工費380,000円です。
仕損は始点発生で、月末仕掛品も発生点を通過しています。ですから両者負担です。
度外視法の両者負担では、仕損品の数量をはじめから無視して按分します。 仕損品がいなかったことにして計算すると、仕損にかかった原価が完成品と月末仕掛品の両方へ、数量の比で自然に振り分けられるからです。
材料費を分けます。仕損品100個を無視するので、分母は完成品900個と月末仕掛品100個の合計1,000個です。月末仕掛品の材料費は、400,000円 × 100個 ÷ 1,000個 = 40,000円です。
加工費を分けます。月末仕掛品の換算量は、100個に進捗度50%をかけた50個です。仕損品は無視するので、分母は完成品900個と月末仕掛品50個の合計950個です。月末仕掛品の加工費は、380,000円 × 50個 ÷ 950個 = 20,000円です。
月末仕掛品原価は、材料費40,000円と加工費20,000円を合わせた60,000円です。完成品総合原価は、当月製造費用の合計780,000円から月末仕掛品原価60,000円を差し引いた720,000円です。完成品の単位原価は、720,000円を完成品900個で割った1個あたり800円です。
減損の場合も、計算はまったく同じです。正常減損の数量を発生点に応じて完成品のみ負担か両者負担かに振り分け、度外視法で按分します。
例題
次の資料から、度外視法によって月末仕掛品原価・完成品総合原価・完成品の単位原価を計算してみましょう。材料はすべて工程の始点で投入しています。月初仕掛品はありません。正常仕損は工程の終点で発生しています。
生産データは、当月投入1,000個、完成品800個、正常仕損100個、月末仕掛品100個です。月末仕掛品の加工進捗度は50%です。当月製造費用は、材料費200,000円、加工費190,000円です。
答え合わせをします。
まず負担のしかたを判定します。仕損の発生点は工程の終点で、月末仕掛品の進捗度50%より後です。月末仕掛品は発生点を通過していないので、完成品のみ負担になります。完成品のみ負担では、仕損品の数量を完成品の側に含めたまま按分するのがルールでした。
材料費を分けます。分母は、完成品800個と仕損品100個と月末仕掛品100個の合計1,000個です。月末仕掛品の材料費は、200,000円 × 100個 ÷ 1,000個 = 20,000円です。
加工費を分けます。仕損品は終点発生なので、換算量は数量と同じ100個です。月末仕掛品の換算量は、100個に進捗度50%をかけた50個です。分母は、完成品800個と仕損品100個と月末仕掛品50個の合計950個です。月末仕掛品の加工費は、190,000円 × 50個 ÷ 950個 = 10,000円です。
月末仕掛品原価は、材料費20,000円と加工費10,000円を合わせた30,000円です。完成品総合原価は、当月製造費用の合計390,000円から月末仕掛品原価30,000円を差し引いた360,000円です。仕損品の原価はこの完成品総合原価に含まれています。完成品の単位原価は、360,000円を完成品800個で割った1個あたり450円です。
応用
次の資料から、度外視法によって月末仕掛品原価・完成品総合原価・完成品の単位原価を計算してみましょう。材料はすべて工程の始点で投入しています。月初仕掛品はありません。正常仕損は工程の始点で発生しています。
生産データは、当月投入850個、完成品700個、正常仕損50個、月末仕掛品100個です。月末仕掛品の加工進捗度は50%です。当月製造費用は、材料費320,000円、加工費300,000円です。
答え合わせをします。
まず負担のしかたを判定します。仕損の発生点は工程の始点で、完成品も月末仕掛品も発生点を通過しています。ですから両者負担になります。両者負担では、仕損品の数量をはじめから無視して按分するのがルールでした。
材料費を分けます。仕損品50個を無視するので、分母は完成品700個と月末仕掛品100個の合計800個です。月末仕掛品の材料費は、320,000円 × 100個 ÷ 800個 = 40,000円です。
加工費を分けます。月末仕掛品の換算量は、100個に進捗度50%をかけた50個です。仕損品は無視するので、分母は完成品700個と月末仕掛品50個の合計750個です。月末仕掛品の加工費は、300,000円 × 50個 ÷ 750個 = 20,000円です。
月末仕掛品原価は、材料費40,000円と加工費20,000円を合わせた60,000円です。完成品総合原価は、当月製造費用の合計620,000円から月末仕掛品原価60,000円を差し引いた560,000円です。完成品の単位原価は、560,000円を完成品700個で割った1個あたり800円です。
分からなかった点・気になった点
読み込み中です。
この章の問題を解く
章のまとめへ- 単純総合原価計算で完成品を製品へ振り替えたときの仕訳解く
- 第1工程の完成品を第2工程へ振り替えたときの仕訳解く
- 平均法による月末仕掛品原価と完成品原価の計算解く
- 先入先出法による月末仕掛品原価と完成品原価の計算解く
- 等級別総合原価計算による各等級製品の原価の計算解く