直接原価計算の基礎
原価を変動費と固定費に分け、直接原価計算方式の損益計算書で貢献利益と営業利益を求め、全部原価計算との利益差異を固定費調整で説明できるようになります。
ねらい
これまで学んだ原価計算は、すべての製造原価を製品の原価に含める全部原価計算(ぜんぶげんかけいさん)でした。このレッスンでは、もうひとつの計算方法である直接原価計算(ちょくせつげんかけいさん)を学びます。
このレッスンを終えると、原価を変動費と固定費に分け、直接原価計算方式の損益計算書で貢献利益と営業利益を求められるようになります。あわせて、全部原価計算との利益のちがいを説明できるようになります。
ストーリー
ある製品を1個つくるのに、材料や電力など、つくる量に応じて増える原価がかかります。一方で、工場の建物の減価償却費のように、つくる量に関係なく毎月一定でかかる原価もあります。
経営者が「あと何個売れば利益が出るのか」を考えるとき、この2種類の原価を分けておくと見通しが立てやすくなります。原価を変動費と固定費に分けて損益を計算する方法が、直接原価計算です。
変動費と固定費
原価は、操業度(そうぎょうど)との関係で2つに分けられます。操業度とは、生産量や作業時間など、工場がどれだけ働いたかを表す量です。
変動費(へんどうひ)は、操業度に比例して増減する原価です。たとえば直接材料費は、つくる量が2倍になれば、おおむね2倍になります。
固定費(こていひ)は、操業度が変わっても総額が変わらない原価です。たとえば工場の建物の減価償却費や、月給制の工場管理者の給料は、生産量に関わらず毎月一定でかかります。
ポイント
変動費は操業度に比例して増え、固定費は操業度が変わっても総額が変わりません。
直接原価計算と全部原価計算のちがい
2つの計算方法は、固定製造原価(こていせいぞうげんか)の扱いが異なります。固定製造原価とは、製造原価のうち固定費にあたる部分です。工場の固定的な製造間接費がこれにあたります。
全部原価計算では、固定製造原価も製品の原価に含めます。そのため、売れ残った製品があると、その分の固定製造原価は在庫として次の期間へ繰り越されます。
直接原価計算では、固定製造原価を製品の原価に含めず、発生した期間の費用として全額をその期の損益に計上します。 変動製造原価だけを製品の原価とします。
直接原価計算方式の損益計算書
直接原価計算の損益計算書は、まず変動費を差し引き、次に固定費を差し引く形で並べます。例として、次の資料で考えてみましょう。
- 販売単価: 1個あたり ¥800
- 当月の生産量: 1,000個
- 当月の販売量: 800個
- 期首の製品在庫: なし
- 変動製造原価: 1個あたり ¥400
- 固定製造原価: ¥200,000
- 変動販売費: 1個あたり ¥50
- 固定販売費及び一般管理費: ¥60,000
はじめに、売上高を求めます。売上高は、販売単価 ¥800 に販売量 800個 を掛けた ¥640,000 です。
次に、変動費を売上高から差し引きます。変動売上原価は、変動製造原価 ¥400 に販売量 800個 を掛けた ¥320,000 です。ここで掛けるのは、つくった量ではなく売れた量です。
変動販売費は、1個あたり ¥50 に販売量 800個 を掛けた ¥40,000 です。
売上高から変動売上原価と変動販売費を差し引いた金額を貢献利益(こうけんりえき)といいます。英語では contribution margin(コントリビューション・マージン)と表記します。貢献利益は、¥640,000 から ¥320,000 と ¥40,000 を差し引いた ¥280,000 です。貢献利益は、固定費の回収と利益の獲得に貢献する金額を表します。
最後に、固定費を差し引きます。固定費は、固定製造原価 ¥200,000 と固定販売費及び一般管理費 ¥60,000 を合わせた ¥260,000 です。営業利益は、貢献利益 ¥280,000 から固定費 ¥260,000 を差し引いた ¥20,000 です。
以上を損益計算書の形にまとめると、次のようになります。
| 区分 | 金額 |
|---|---|
| 売上高 | 640,000 |
| 変動売上原価 | 320,000 |
| 変動販売費 | 40,000 |
| 貢献利益 | 280,000 |
| 固定製造原価 | 200,000 |
| 固定販売費及び一般管理費 | 60,000 |
| 営業利益 | 20,000 |
売上高から変動売上原価と変動販売費を差し引くと貢献利益が求められ、貢献利益から固定製造原価と固定販売費及び一般管理費を差し引くと営業利益が求められます。
注意
変動売上原価は、当月につくった量ではなく、当月に売れた量をもとに計算します。売れ残った製品の変動製造原価は、在庫として次の月へ繰り越します。
全部原価計算との利益のちがい
同じ資料を全部原価計算で計算すると、営業利益はいくらになるでしょうか。全部原価計算では、固定製造原価も製品の原価に含めます。
まず、製品1個あたりの製造原価を求めます。固定製造原価を製品1個あたりに直すと、¥200,000 を生産量 1,000個 で割った ¥200 です。製品1個あたりの製造原価は、変動製造原価 ¥400 に固定製造原価 ¥200 を足した ¥600 です。
売上原価は、製造原価 ¥600 に販売量 800個 を掛けた ¥480,000 です。売上総利益は、売上高 ¥640,000 から売上原価 ¥480,000 を差し引いた ¥160,000 です。
販売費及び一般管理費は、変動販売費 ¥40,000 と固定販売費及び一般管理費 ¥60,000 を合わせた ¥100,000 です。営業利益は、売上総利益 ¥160,000 から販売費及び一般管理費 ¥100,000 を差し引いた ¥60,000 です。
| 区分 | 金額 |
|---|---|
| 売上高 | 640,000 |
| 売上原価 | 480,000 |
| 売上総利益 | 160,000 |
| 販売費及び一般管理費 | 100,000 |
| 営業利益 | 60,000 |
同じ資料でも、直接原価計算の営業利益は ¥20,000、全部原価計算の営業利益は ¥60,000 となり、¥40,000 の差が生じます。
この差は、固定製造原価の扱いのちがいから生まれます。全部原価計算では、売れ残った製品 200個 の中に固定製造原価が含まれ、在庫として次の月へ繰り越されます。その金額は、製品1個あたりの固定製造原価 ¥200 に売れ残り 200個 を掛けた ¥40,000 です。
直接原価計算では、この ¥40,000 も当月の費用として計上します。そのため、直接原価計算の営業利益は全部原価計算より ¥40,000 少なくなります。
注意
生産量と販売量が等しく、期首も期末も在庫がなければ、2つの営業利益は一致します。差が出るのは、在庫が増減するときだけです。
固定費調整
直接原価計算の営業利益から全部原価計算の営業利益を求める手続を固定費調整(こていひちょうせい)といいます。
計算は、次のように行います。直接原価計算の営業利益に、期末の製品と仕掛品に含まれる固定製造原価を足します。そのうえで、期首の製品と仕掛品に含まれる固定製造原価を差し引きます。
先ほどの資料にあてはめてみます。期首の在庫はなく、期末の製品に含まれる固定製造原価は ¥40,000 でした。直接原価計算の営業利益 ¥20,000 に期末の ¥40,000 を足し、期首の ¥0 を差し引くと、全部原価計算の営業利益 ¥60,000 が求められます。
ポイント
固定費調整では、直接原価計算の営業利益に期末在庫の固定製造原価を足し、期首在庫の固定製造原価を差し引いて、全部原価計算の営業利益に直します。
例題
次の資料から、直接原価計算方式の損益計算書の貢献利益と営業利益を求めてみましょう。
- 売上高: ¥900,000
- 変動売上原価: ¥360,000
- 変動販売費: ¥90,000
- 固定製造原価: ¥180,000
- 固定販売費及び一般管理費: ¥120,000
答え合わせ
貢献利益は ¥450,000、営業利益は ¥150,000 です。
貢献利益は、売上高から変動費を差し引いて求めます。変動費は、変動売上原価 ¥360,000 と変動販売費 ¥90,000 を合わせた ¥450,000 です。貢献利益は、売上高 ¥900,000 から変動費 ¥450,000 を差し引いた ¥450,000 です。
営業利益は、貢献利益から固定費を差し引いて求めます。固定費は、固定製造原価 ¥180,000 と固定販売費及び一般管理費 ¥120,000 を合わせた ¥300,000 です。営業利益は、貢献利益 ¥450,000 から固定費 ¥300,000 を差し引いた ¥150,000 です。
応用
次の資料から、固定費調整によって全部原価計算の営業利益を求めてみましょう。
- 直接原価計算の営業利益: ¥250,000
- 期首の製品に含まれる固定製造原価: ¥30,000
- 期末の製品に含まれる固定製造原価: ¥70,000
答え合わせ
全部原価計算の営業利益は ¥290,000 です。
固定費調整では、直接原価計算の営業利益に期末在庫の固定製造原価を足し、期首在庫の固定製造原価を差し引きます。まず、直接原価計算の営業利益 ¥250,000 に、期末の製品に含まれる固定製造原価 ¥70,000 を足します。次に、期首の製品に含まれる固定製造原価 ¥30,000 を差し引きます。¥250,000 に ¥70,000 を足して ¥30,000 を差し引くと、全部原価計算の営業利益 ¥290,000 になります。
分からなかった点・気になった点
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