工程別総合原価計算(累加法)
いくつかの工程を通して製品を作る工場で、前の工程の完成品原価を前工程費として次の工程へ引き継ぐ累加法により、各工程の完成品原価と月末仕掛品原価を計算できるようになります。
ねらい
いくつかの作業工程を順に通して製品を仕上げる工場の原価計算を学びます。このレッスンを終えると、前の工程の完成品原価を前工程費として次の工程へ引き継ぐ累加法によって、各工程の完成品原価と月末仕掛品原価を計算できるようになります。
ストーリー
前のレッスンでは、1つの工程だけで製品ができ上がる工場を考えました。しかし、多くの工場では、いくつかの作業場を順に通って製品が仕上がります。
たとえば、金属の部品を作る工場を思い浮かべてください。第1工程で材料を切り出して形をつくり、その半分でき上がった品物を第2工程へ送って、そこで磨いて仕上げます。このように、工程ごとに区切って原価を計算する方法を工程別総合原価計算(こうていべつそうごうげんかけいさん)といいます。
工程が分かれても、やることは変わりません。各工程で、これまで学んだ単純総合原価計算をそのまま行います。 違うのは、前の工程で仕上がった品物の原価を次の工程へどうやって引き継ぐかという1点だけです。
前工程費と累加法
第1工程が終わった品物は、まだ製品ではありません。第2工程へ渡される、半分でき上がった品物です。この品物には、第1工程でかかった原価がすでに含まれています。
第2工程では、第1工程から引き継いだこの原価を前工程費(ぜんこうていひ)という1つの費目としてまとめて受け取ります。そして、第2工程で新たにかかる加工費を足していきます。このように、前の工程の完成品原価を次の工程へ順に足し込んでいく方法を累加法(るいかほう)といいます。
前工程費は、第2工程ではどう扱えばよいでしょうか。前工程費は、第2工程に入ってきた品物すべてに、はじめから同じだけ含まれています。ですから、前工程費は、第2工程の始点で投入した材料と同じように、数量の割合で完成品と月末仕掛品に分けます。
ポイント
累加法では、前の工程の完成品原価を前工程費として次の工程へ引き継ぎます。前工程費は、次の工程では始点で投入した材料のように、数量の割合で分けます。
第1工程の計算
次の資料で計算します。この工場は第1工程と第2工程の2つの工程を通して製品を作ります。材料はすべて第1工程の始点で投入し、第2工程では新たな材料を加えません。どちらの工程にも月初仕掛品はありません。
第1工程の生産データは、当月投入1,000個、完成品800個、月末仕掛品200個です。月末仕掛品の加工進捗度は50%です。第1工程の当月製造費用は、材料費300,000円、加工費270,000円です。
第1工程は月初仕掛品がないので、当月製造費用だけを完成品と月末仕掛品に分けます。
材料費は数量の割合で分けます。月末仕掛品の材料費は、材料費300,000円に、月末仕掛品200個が当月投入1,000個に占める割合をかけた、300,000円 × 200個 ÷ 1,000個 = 60,000円です。完成品の材料費は、300,000円から60,000円を引いた240,000円です。
加工費は完成品換算量の割合で分けます。月末仕掛品の換算量は、数量200個に加工進捗度50%をかけた100個です。月末仕掛品の加工費は、加工費270,000円に、月末仕掛品の換算量100個が、完成品換算量800個と月末換算量100個の合計900個に占める割合をかけた、270,000円 × 100個 ÷ 900個 = 30,000円です。完成品の加工費は、270,000円から30,000円を引いた240,000円です。
第1工程の完成品原価は、材料費240,000円と加工費240,000円を合わせた480,000円です。この480,000円が、第2工程へ引き継ぐ前工程費になります。月末仕掛品原価は、材料費60,000円と加工費30,000円を合わせた90,000円です。
第1工程で仕上がった品物を第2工程へ振り替える仕訳は、次のとおりです。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 第2工程仕掛品 | 480,000 | 第1工程仕掛品 | 480,000 |
第1工程仕掛品の勘定から、仕上がった原価480,000円を減らして貸方に記入します。この原価を受け取る第2工程仕掛品の勘定を借方に記入します。
第2工程の計算
第2工程の生産データは、前工程から受け入れた800個、完成品600個、月末仕掛品200個です。月末仕掛品の加工進捗度は50%です。第2工程の原価は、第1工程から引き継いだ前工程費480,000円と、第2工程で新たにかかった加工費280,000円です。
前工程費は、始点で投入した材料と同じように数量の割合で分けます。月末仕掛品の前工程費は、前工程費480,000円に、月末仕掛品200個が受入800個に占める割合をかけた、480,000円 × 200個 ÷ 800個 = 120,000円です。完成品の前工程費は、480,000円から120,000円を引いた360,000円です。
加工費は完成品換算量の割合で分けます。月末仕掛品の換算量は、数量200個に加工進捗度50%をかけた100個です。月末仕掛品の加工費は、加工費280,000円に、月末仕掛品の換算量100個が、完成品換算量600個と月末換算量100個の合計700個に占める割合をかけた、280,000円 × 100個 ÷ 700個 = 40,000円です。完成品の加工費は、280,000円から40,000円を引いた240,000円です。
第2工程の完成品原価は、前工程費360,000円と加工費240,000円を合わせた600,000円です。これが製品の原価になります。完成品の単位原価は、600,000円を完成品600個で割った1個あたり1,000円です。第2工程の月末仕掛品原価は、前工程費120,000円と加工費40,000円を合わせた160,000円です。
第2工程で仕上がった製品を振り替える仕訳は、次のとおりです。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 製品 | 600,000 | 第2工程仕掛品 | 600,000 |
第2工程仕掛品の勘定から、仕上がった原価600,000円を減らして貸方に記入します。この原価を受け取る製品の勘定を借方に記入します。
注意
第2工程では、前工程費と加工費を分けて計算します。前工程費は数量の割合、加工費は完成品換算量の割合です。前工程費まで換算量で分けてしまう誤りに気をつけましょう。前工程費は始点で投入された材料と同じ扱いです。
例題
次の資料から、第1工程の完成品原価と月末仕掛品原価を計算してみましょう。第1工程には月初仕掛品がなく、材料はすべて始点で投入しています。
第1工程の生産データは、当月投入1,000個、完成品900個、月末仕掛品100個です。月末仕掛品の加工進捗度は50%です。第1工程の当月製造費用は、材料費200,000円、加工費190,000円です。
答え合わせをします。
材料費は数量の割合で分けます。月末仕掛品の材料費は、材料費200,000円に、月末仕掛品100個が当月投入1,000個に占める割合をかけた、200,000円 × 100個 ÷ 1,000個 = 20,000円です。完成品の材料費は、200,000円から20,000円を引いた180,000円です。
加工費は完成品換算量の割合で分けます。月末仕掛品の換算量は、数量100個に加工進捗度50%をかけた50個です。月末仕掛品の加工費は、加工費190,000円に、月末仕掛品の換算量50個が、完成品換算量900個と月末換算量50個の合計950個に占める割合をかけた、190,000円 × 50個 ÷ 950個 = 10,000円です。完成品の加工費は、190,000円から10,000円を引いた180,000円です。
第1工程の完成品原価は、材料費180,000円と加工費180,000円を合わせた360,000円です。これが第2工程へ引き継ぐ前工程費になります。月末仕掛品原価は、材料費20,000円と加工費10,000円を合わせた30,000円です。
応用
例題の続きです。第2工程の完成品原価と月末仕掛品原価を計算してみましょう。第2工程には月初仕掛品がなく、新たな材料は加えません。
第2工程の生産データは、前工程から受け入れた900個、完成品700個、月末仕掛品200個です。月末仕掛品の加工進捗度は50%です。第2工程の原価は、第1工程から引き継いだ前工程費360,000円と、第2工程の加工費220,000円です。
答え合わせをします。
前工程費は、始点で投入した材料と同じように数量の割合で分けます。月末仕掛品の前工程費は、前工程費360,000円に、月末仕掛品200個が受入900個に占める割合をかけた、360,000円 × 200個 ÷ 900個 = 80,000円です。完成品の前工程費は、360,000円から80,000円を引いた280,000円です。
加工費は完成品換算量の割合で分けます。月末仕掛品の換算量は、数量200個に加工進捗度50%をかけた100個です。月末仕掛品の加工費は、加工費220,000円に、月末仕掛品の換算量100個が、完成品換算量700個と月末換算量100個の合計800個に占める割合をかけた、220,000円 × 100個 ÷ 800個 = 27,500円です。完成品の加工費は、220,000円から27,500円を引いた192,500円です。
第2工程の完成品原価は、前工程費280,000円と加工費192,500円を合わせた472,500円です。月末仕掛品原価は、前工程費80,000円と加工費27,500円を合わせた107,500円です。投入した原価の合計は、前工程費360,000円と加工費220,000円を合わせた580,000円で、完成品原価472,500円と月末仕掛品原価107,500円の合計と一致します。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 単純総合原価計算で完成品を製品へ振り替えたときの仕訳解く
- 第1工程の完成品を第2工程へ振り替えたときの仕訳解く
- 平均法による月末仕掛品原価と完成品原価の計算解く
- 先入先出法による月末仕掛品原価と完成品原価の計算解く
- 等級別総合原価計算による各等級製品の原価の計算解く