変動対価と売上割戻
割戻が見込まれる販売について、返金する見込み分を返金負債として処理できるようになります。
ねらい
販売した代金の一部を後から得意先へ戻す見込みがあるときの処理を学びます。このレッスンを終えると、割戻の見込み分を売上から差し引いて返金負債として計上し、割戻を実施したときに取り崩せるようになります。
ストーリー
第1章の仕入割戻では、当社が割戻を受ける買い手の側でした。今度は反対に、当社が割戻を行う売り手の側です。
あなたの会社は、得意先との間に「1か月の購入額が一定の基準を超えたら、代金の2%を割り戻す」という取り決めを結んで、商品 ¥400,000 を掛けで販売しました。得意先の購入ペースからみて、この基準は達成される見込みです。
このように、受け取る対価の金額が後の条件しだいで変わることを「変動対価(へんどうたいか)」といいます。割戻が見込まれる分の ¥8,000 は、後で返すことになるお金です。返す見込みのお金まで売上にしてしまうと、収益が実態より大きくなります。そこで、割戻の見込み分は売上に含めず、「返金負債(へんきんふさい)」という負債の勘定で処理します。
図解
販売時の要素の動きを見てみましょう。売掛金は代金の全額 ¥400,000 で計上しますが、貸方は売上と返金負債に分かれます。
借方(左)
- 売掛金資産の増加 400,000
貸方(右)
- 売上収益の増加 392,000
- 返金負債負債の増加 8,000
仕訳と理由
販売した日の仕訳です。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 400,000 | 売上 | 392,000 |
| 返金負債 | 8,000 |
借方は売掛金 ¥400,000 です。得意先に請求できる代金は全額なので、資産の増加として総額を借方に記入します。
貸方の1行目は売上です。割戻の見込み分 ¥8,000 を差し引いた ¥392,000 だけを収益の増加として貸方に記入します。
2行目が返金負債です。割戻の条件が達成されたら返すことになる ¥8,000 は、収益ではなく「返す義務」です。負債の増加として貸方に記入します。
後日、得意先の購入額が基準を超え、割戻 ¥8,000 の実施が確定して、得意先に対する売掛金と相殺したときの仕訳です。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 返金負債 | 8,000 | 売掛金 | 8,000 |
返す義務を果たしたので、返金負債という負債を借方で減らします。貸方は売掛金です。割戻の分だけ得意先へ請求できる金額が減るので、資産の減少として貸方に記入します。
ポイント
販売時に売上を ¥392,000 にしてあるため、割戻を実施しても売上をあらためて減らす必要はありません。
例題
次の取引を仕訳してみましょう。
得意先へ商品 ¥600,000 を掛けで販売した。取り決めにより、この得意先には代金の1%の割戻を行う見込みである。
答え合わせ
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 600,000 | 売上 | 594,000 |
| 返金負債 | 6,000 |
割戻の見込み額は ¥600,000 かける 1% で ¥6,000 です。売掛金は総額の ¥600,000、売上は見込み分を差し引いた ¥594,000、返金負債は ¥6,000 となります。
応用
例題の続きです。次の取引を仕訳してみましょう。
得意先の購入額が基準を超えたため、割戻 ¥6,000 の実施が確定した。割戻額は当社の普通預金口座から得意先へ振り込んだ。
答え合わせ
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 返金負債 | 6,000 | 普通預金 | 6,000 |
返す義務を果たしたので返金負債を借方で減らします。今回は売掛金との相殺ではなく実際にお金を振り込んだので、貸方は普通預金です。資産が減るので貸方に記入します。
注意
相殺か振り込みかで貸方の勘定が変わる点に注意してください。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- サービスの提供が完了したときの役務収益の仕訳解く
- サービス提供の完了にともない仕掛品を役務原価へ振り替える仕訳解く
- 出荷基準を採用する会社が商品を出荷したときの仕訳解く
- 割戻が見込まれる商品を掛けで販売したときの仕訳解く
- 割戻の実施が確定し売掛金と相殺したときの仕訳解く