G検定(ジェネラリスト検定)
はつめいしゃ
発明者
Inventor
発明者とは、発明をした者のことです。特許法には発明者という語を直接定める条文がありません。第29条第1項が発明をした者に特許を受ける権利を認め、第36条第1項第2号が願書に発明者の氏名と住所または居所を書くよう定めています。発明者の位置づけは、この2つの条文から導かれます。
詳しい説明
定義
発明者を理解するには、先に発明という語を押さえておく必要があります。特許法第2条第1項は、発明を、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの、と定めています。簡単に言えば、自然の法則をうまく使って技術的な課題を解決する考え方のうち、ある程度以上に高度なものが発明です。
一方で、特許法には発明者という語そのものを定義する条文がありません。発明の定義はあるのに、発明をした人を直接定める規定は置かれていないのです。そのため、発明者がどのような者かは、ほかの条文の書き方から読み取ることになります。
手がかりになる条文は2つあります。
1つ目は第29条第1項の柱書です。
> 産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。
この条文は、発明をした者に、その発明について特許を受けることができる立場を認めています。特許を受けることができる主体が、発明をした者という言い方で示されている点が大切です。
2つ目は第36条第1項第2号です。第36条第1項は特許出願の願書に書く事項を定めており、その第2号は次のとおりです。
> 発明者の氏名及び住所又は居所
この条文は、願書に発明者の氏名と住所または居所を書くよう求めています。ここで初めて発明者という語が登場します。
2つの条文を並べると、次の構造が見えてきます。第29条第1項は、特許を受けることができるのは発明をした者だと定めます。第36条第1項第2号は、出願のときに発明者を願書に書くよう定めます。発明者という語を定義する規定は無いものの、この2つの条文を合わせて読むことで、発明者とは発明をした者である、という位置づけが導かれます。定義規定から直接出てくるのではなく、条文の組み合わせから導かれる、という点を押さえておきましょう。
制度の要点
実務では、発明者は自然人、つまり生身の人間であるという理解のもとで運用されています。この理解には、条文の文言から近づくことができます。
まず、第29条第1項の主語は発明をした者です。者という語は、行為をする主体を指す言葉です。発明をするという行為の担い手が想定されています。
次に、第36条第1項第2号が願書に書くよう求めているのは、発明者の氏名と住所または居所です。氏名は人の名前を指す言葉であり、住所や居所は人が生活の本拠としたり、実際に住んだりしている場所を指す言葉です。これらの記載事項は、名前を持ち、どこかに住んでいる人間を前提にした書き方になっていると読めます。
このように、者という主語と、氏名や住所という記載事項を合わせて見ると、条文が想定している発明者の姿は人間であると理解できます。ただし、ここで確認できるのは、条文の文言がどのような主体を想定しているかという点までです。発明者の範囲をどこまで認めるかは、法律の解釈と運用の問題として扱われています。
また、特許を受けることができる者と願書に書く発明者は、条文の上では別々に定められています。第29条第1項は特許を受けることができる者を、第36条第1項第2号は願書に書く事項としての発明者を定めています。2つの条文がそれぞれ何を定めているかを区別して読むことが、制度を正確に理解する助けになります。
AIとの関わり
AIが技術的な課題の解決策を生み出す場面が増えたことで、AI自体が発明者になれるのか、という論点が、特許の実務や裁判例で議論されています。上で見たとおり、特許法の条文は発明をした者や、発明者の氏名と住所といった言葉で書かれています。AIが生み出した成果について、これらの文言がどのように当てはまるのかが問題になります。
この論点は、日本に限らず各国で取り上げられています。AIを使って開発を行う人にとって、成果の権利を誰が受けられるのかという問題につながるため、実務でも関心を集めています。議論は現在も続いており、この用語集ではその結論を示しません。AIと知的財産の関係を学ぶときには、発明者を定めた条文の書き方が議論の出発点になっている、という点を押さえておくとよいでしょう。
試験で問われること
G検定
- 特許法には発明者という語を直接定義する条文が無く、第29条第1項と第36条第1項第2号の2つの条文から、発明者は発明をした者であるという位置づけが導かれることを確認しておく。
- 第29条第1項の柱書が、産業上利用することができる発明をした者に、その発明について特許を受けることができると定めていることを確認しておく。
- 第36条第1項第2号が、特許出願の願書に書く事項として、発明者の氏名及び住所又は居所を挙げていることを確認しておく。
- AI自体が発明者になれるかという論点が、特許の実務や裁判例で議論されていることを確認しておく。
最終更新日: 2026/09/23