特定類型の全体像とみなし輸出管理
居住者への技術提供でも許可が必要になる場合があるという、みなし輸出管理の考え方と、外国の影響を受ける3つの特定類型の全体像を説明できるようになります。
この節で学ぶこと
- みなし輸出管理が導入された理由を説明できるようになります。
- 特定類型と呼ばれる3つの場合の全体像を区別できるようになります。
覚えること
- 居住者から居住者への技術提供は、原則として役務取引の許可の対象外です。ただし、受け手の居住者が外国の強い影響を受けている場合には、非居住者に提供したのと実質が変わりません。この場合を規制の対象に取り込むしくみがみなし輸出管理です。2022年5月1日に施行された役務通達の改正で明確化されました。
- 外国の影響を受ける場合は、特定類型として3つに整理されています。通達の原文は番号を丸で囲んだ表記を使いますが、本教材では特定類型1、2、3と書きます。
- 特定類型1。外国政府や外国法人との契約に基づき、その指揮命令に服し、またはそれらに善良な管理者の注意をもって従う義務を負う場合。
- 特定類型2。外国政府等から多額の金銭その他の重大な利益を得ている、または得ることを約束している場合。
- 特定類型3。本邦における行動に関して外国政府等の指示や依頼を受ける場合。
- 特定類型に該当する居住者への機微技術の提供は、非居住者への提供と同じように扱い、許可の要否を判断します。
1. なぜみなし輸出管理が必要なのか
技術の規制は、長らく居住者か非居住者かという線で引かれてきました。しかし、居住性は住まいの実態で決まる形式的な区分です。外国政府の指揮下にある研究者が本邦に長く住めば、居住者として線の内側に入ります。技術がその人に渡れば、線の内側から外国政府へ流れる道が開きます。
みなし輸出管理は、この形式と実質のずれを埋めます。受け手の居住性だけでなく、受け手が外国の影響下にあるかを確かめ、影響下にあるなら非居住者への提供とみなして規制します。大学や企業の研究の現場で、共同研究者や従業員への技術共有を管理する場面に直結するしくみです。
2. 3つの類型の見分け方
3つの類型は、外国の影響の受け方で区別します。
| 類型 | 影響の形 | 典型の場面 |
|---|---|---|
| 特定類型1 | 契約による指揮命令や忠実義務 | 外国法人と雇用契約や役員の任用関係がある |
| 特定類型2 | 経済的な利益への依存 | 外国政府等から重大な利益を得ている |
| 特定類型3 | 行動への指示や依頼 | 本邦での行動について外国政府等の指示を受ける |
各類型の正確な要件、特定類型1だけにある除外の定め、判定が難しい場面の考え方は、この章の Advanced の節で扱います。この節では、3つの類型があることと、それぞれの影響の形を押さえます。
3. 注意すべきこと
試験で気をつける点
- 「居住者への技術提供はすべて許可不要」という記述は、みなし輸出管理の導入後は誤りです。特定類型該当者への機微技術の提供は許可の要否の判断が必要です。
- 特定類型に該当するのは自然人(個人)です。法人が特定類型に該当するという記述は誤りです。
実務で気をつける点
- 従業員や共同研究者の採用・受け入れの場面で、特定類型への該当性を確かめる手順を組み込みます。提供の直前ではなく、受け入れの入口で確かめるのが実務の型です。
4. 根拠法令
- 外為法第25条第1項。役務取引の許可の根拠条文です。
- 役務通達1(3)サ。特定類型の3つの場合を定めます(2022年5月1日施行の改正)。各類型の要件の文言は下書き段階のため要確認としています(当たり先は経済産業省の通達原文)。
5. 理解度の確認
次の記述が正しいか、誤りかを判断してみましょう。
問1 みなし輸出管理の導入後も、居住者から居住者への技術提供が役務取引の許可の対象になることはない。
答え: 誤りです。受け手の居住者が特定類型に該当する場合、非居住者への提供とみなして許可の要否を判断します。
問2 外国法人との契約に基づきその指揮命令に服する居住者は、特定類型に該当しうる。
答え: 正しいです。契約による指揮命令や忠実義務は特定類型1の影響の形です。
問3 本邦の株式会社が外国政府から補助金を受けている場合、その株式会社自体が特定類型に該当する。
答え: 誤りです。特定類型への該当を判定する対象は自然人(個人)であり、法人は対象ではありません。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 技術の該非判定は、外為令別表・貨物等省令・役務通達の3層を順にたどる。解く
- 技術の該非判定の3層は、貨物の3点チェックと同じ型であり、参照する政令と通達が異なる。解く
- X社の担当者は、提供しようとする技術が規制対象かを調べるため、輸出令別表第1を参照した。解く
- X社が輸出する装置は該非判定の結果、非該当だった。担当者は、この装置の設計技術についても改めて技術の該非判定を行った。解く
- 外為法第25条第1項は、特定技術の提供を目的とする取引に経済産業大臣の許可を義務づけている。解く