特定類型1の要件と2つの除外
契約に基づく指揮命令や善管注意義務という特定類型1の要件と、優先する合意およびグループ外国法人による2つの除外を、兼務や出向の場面で判定できるようになります。
ここからは Advanced の範囲です。特定類型の全体像は初学者向けの節で扱いました。この節は、最も判定の機会が多い特定類型1の要件と除外を、兼務や出向の場面まで下りて扱います。
この節で学ぶこと
- 特定類型1の要件(契約に基づく指揮命令への服従や善良な管理者の注意をもって従う義務)を説明できるようになります。
- 2つの除外(優先する合意・グループ外国法人)の考え方を、具体的な場面で判定できるようになります。
覚えること
- 特定類型1は、外国政府等または外国法人等との契約に基づき、その指揮命令に服するか、善良な管理者の注意をもってそれらの利益のために行動する義務を負う居住者です。雇用契約や役員の任用関係が典型です。
- 除外が2つあります。どちらも「外国の影響より本邦側の関係が優先する」と評価できる場合です。
- 優先する合意による除外。本邦の所属先との間で、外国側との契約に優先して機微技術の管理に従う旨の合意があるなど、本邦側の義務が優先する場合です。
- グループ外国法人による除外。契約の相手方の外国法人が、本邦法人の子会社など一定の資本関係にあるグループ法人で、要件を満たす場合です。
- 除外は要件のすべてを満たして初めて成立します。合意の当事者の組み合わせや資本関係の割合が要件から外れれば、除外は使えません。
1. なぜ契約関係で線を引くのか
特定類型1が捉えようとするのは、技術の受け手が誰の利益のために行動する義務を負っているかです。契約による指揮命令や忠実義務は、その人の行動を法的に拘束します。外国法人の役員を兼務する研究者は、本邦の所属先で得た機微技術について、外国法人への忠実義務との間で引き裂かれる立場に置かれます。
除外の2つは、この拘束の優先順位を逆転させる事情です。本邦側との合意が優先するなら、外国側の指揮命令は機微技術に及びません。相手がグループ外国法人なら、実質は本邦法人の管理の内側です。どちらも、外形は特定類型1でも実質の影響が小さいと評価できる場合を、要件つきで除外しています。
2. 判定を誤りやすい場面
| 場面 | 判定の要点 |
|---|---|
| 外国大学の客員教授を兼務する本邦の研究者 | 兼務先との契約内容(指揮命令・義務の性質)を確かめる。無報酬でも契約による義務があれば該当しうる |
| 外国法人から本邦企業への出向者 | 出向元との契約関係が残る。優先する合意の要件を満たすかを確かめる |
| 外国法人の役員を退任した直後の人 | 契約関係が終了していれば特定類型1には該当しない。終了の時点と義務の残存を確かめる |
| 本邦法人の海外子会社と契約する社員 | グループ外国法人による除外の資本関係の要件を確かめる |
どの場面も、口頭の理解や慣行ではなく、契約と合意の文書で判定します。
3. 注意すべきこと
試験で気をつける点
- 除外の要件の一部だけを満たす場面(合意はあるが当事者の組み合わせが要件と違うなど)を、除外が成立するように見せる出題が典型です。要件の全部充足を確かめます。
- 特定類型1の判定対象は自然人です。契約の相手方が外国法人であることと、判定対象が個人であることを混同しません。
実務で気をつける点
- 兼務・出向・共同研究の受け入れ時に、契約関係の申告を求める手順を置きます。判定の根拠にした契約と合意は、提供の記録とあわせて保存します。
4. 根拠法令
- 役務通達1(3)サ。特定類型1の要件と、除外の定め(通達の原文ではイ・ロの枝で規定)を置きます。要件・除外の正確な文言と資本関係の割合の数値は、下書き段階のため要確認としています(当たり先は経済産業省の通達原文とパブリックコメント回答)。
5. 理解度の確認
次の記述が正しいか、誤りかを判断してみましょう。
問1 外国大学と客員教授の契約を結び、その大学の指揮命令に服する義務を負う本邦の研究者は、報酬を受け取っていなければ特定類型1に該当しない。
答え: 誤りです。特定類型1の要件は契約に基づく指揮命令や義務であり、報酬の有無では決まりません。
問2 特定類型1に外形上該当する場合でも、本邦の所属先との間で機微技術の管理に関する義務が優先する合意があり、除外の要件をすべて満たすときは、特定類型1に該当しないものとして扱える。
答え: 正しいです。優先する合意による除外は、要件の全部を満たす場合に成立します。
問3 外国法人の役員との契約関係がすでに終了している人は、その契約を理由として特定類型1に該当することはない。
答え: 正しいです。特定類型1は現に契約に基づく義務を負う場合の類型です。契約関係の終了と義務の残存の有無を文書で確かめたうえで判断します。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 技術の該非判定は、外為令別表・貨物等省令・役務通達の3層を順にたどる。解く
- 技術の該非判定の3層は、貨物の3点チェックと同じ型であり、参照する政令と通達が異なる。解く
- X社の担当者は、提供しようとする技術が規制対象かを調べるため、輸出令別表第1を参照した。解く
- X社が輸出する装置は該非判定の結果、非該当だった。担当者は、この装置の設計技術についても改めて技術の該非判定を行った。解く
- 外為法第25条第1項は、特定技術の提供を目的とする取引に経済産業大臣の許可を義務づけている。解く