貨物等省令の数値基準の照合(単位・閾値・複合条件)
貨物等省令の実例を使って、以上・以下・超える・未満の境界の読み、「及び」と「又は」による条件の組み合わせ、単位と測定方法の指定を確かめながら数値基準と照合できるようになります。
この節で学ぶこと
- 「以上」「以下」「超える」「未満」が境界の値を含むかどうかを正しく読み分けられるようになります。
- 「及び」(すべて満たす)と「いずれか」「又は」(どれか1つ満たす)による条件の組み合わせを、条文の実例で読めるようになります。
- 数値基準の照合で単位と測定方法の指定まで確かめる必要があることを説明できるようになります。
覚えること
- 以上・以下は境界の値を含み、超える・未満は含みません。基準値ちょうどの製品で結論が分かれます。
- 「次の(一)及び(二)に該当するもの」は両方を満たしたときに該当します。どちらか一方でも満たさなければ、その基準では該当しません。
- 「次のいずれかに該当するもの」は1つでも満たせば該当します。
- 条文は数値だけでなく単位と測定方法も指定します。カタログ値と照合するときは、単位と測定条件を条文にそろえます。
1. 境界の言葉(以上・以下・超える・未満)
数値基準の照合で最初に確かめるのは、境界の値を含むかどうかです。
| 言葉 | 意味 | 基準値ちょうどの場合 |
|---|---|---|
| 以上 | 基準値を含んでそれより大きい | 該当する側 |
| 以下 | 基準値を含んでそれより小さい | 該当する側 |
| 超える | 基準値を含まず、それより大きい | 該当しない側 |
| 未満 | 基準値を含まず、それより小さい | 該当しない側 |
実例で確かめましょう。貨物等省令第1条第4号(輸出令別表第1の2の項の原子力関連)は、人造黒鉛について次の基準を定めます。
- 1キログラム以上の人造黒鉛であること。
- ほう素当量が全重量の1,000,000分の5未満であること。
- 20度の温度における見掛け比重が1.50を超えること。
1キログラムちょうどは「以上」なので基準に入ります。見掛け比重1.50ちょうどは「超える」なので基準に入りません。1つの号の中に、以上、未満、超えるが混在しています。言葉を1つずつ確かめないと、境界付近の製品の判定を誤ります。
2. 「及び」はすべて、「いずれか」はどれか1つ
条件の組み合わせ方は、接続の言葉で決まります。
貨物等省令第4条第15号ロ(輸出令別表第1の5の項の先端材料)は、炭素繊維について次のとおり定めます。
炭素繊維であって、次の(一)及び(二)に該当するもの (一)比弾性率が14,650,000メートルを超えるもの (二)比強度が268,200メートルを超えるもの
「及び」の組み合わせなので、比弾性率と比強度の両方が基準を超えたときに該当します。比弾性率だけが基準を超えても、この号では該当しません。
一方、貨物等省令第5条第2号イ(輸出令別表第1の6の項の材料加工)は、旋削をすることができる工作機械(輪郭制御をすることができる軸数が2以上のもの)について、「次のいずれかに該当するもの」として定めます。
(一)移動量が1メートル未満の直線軸のうち、いずれか1軸以上の一方向位置決めの繰返し性が0.0009ミリメートル以下のもの (二)移動量が1メートル以上の直線軸のうち、いずれか1軸以上の一方向位置決めの繰返し性が0.0011ミリメートル以下のもの
「いずれか」の組み合わせなので、(一)と(二)のどちらか1つを満たせば該当します。直線軸の移動量によって当てはめる基準が変わる作りです。
さらにこのイには「((三)に該当するものを除く。)」という除外があり、(三)は棒材作業用の旋盤のうち「次の1及び2に該当するもの」(加工できる材料の最大直径が42ミリメートル以下、かつ、チャックを取り付けることができないもの)を定めます。除外の側は「及び」なので、両方を満たす機械だけが除外されます。該当の条件と除外の条件で、接続の言葉が別々に設定されている実例です。
動かして確かめる
境界ちょうどの値から動かして、以上/以下(含む)と超える/未満(含まない)、「及び」(正しい)と「又は」(誤り)で結論がどう変わるか確かめられます。
境界ちょうどの値で、条文の数値基準を確かめる。
値を動かして、以上/以下(含む)と超える/未満(含まない)、「及び」と「又は」で結論がどう変わるか確かめてください。
貨物等省令第1条第4号(人造黒鉛)の3つの基準です。
基準: 重量が1キログラム以上であること。
基準: ほう素当量が全重量の1,000,000分の5未満であること(単位: 100万分の1)。
基準: 20度の温度における見掛け比重が1.50を超えること。
3. 単位と測定方法まで条文にそろえる
数値基準の照合では、数値の大小の前に、単位と測定条件を条文にそろえます。
- 単位。炭素繊維の比弾性率と比強度は、条文上メートルという長さの単位で表します。カタログの値がギガパスカルなどの別の単位で書かれていれば、そのままでは比べられません。位取りにも注意が必要です。繰返し性の0.0009ミリメートルをマイクロメートル表記のカタログ値と比べるときは、換算してから照合します。
- 測定方法。条文が測定の規格や条件を指定することがあります。貨物等省令第1条第14号イ(一)は、工作機械の位置決め精度について「国際規格ISO230/2(1988)で定める測定方法により直線軸の全長について測定したときの位置決め精度が0.006ミリメートル未満のもの」と定めます。人造黒鉛の見掛け比重の「20度の温度における」も測定条件の指定です。
- 指定された方法と異なる条件で測った値は、そのまま条文の基準と比べられません。メーカーの試験成績書がどの規格で測った値かまで確かめるのが照合の作法です。
数値基準は出典の条項とセットで扱いましょう。「比弾性率14,650,000メートル超」という値だけを覚えるのではなく、貨物等省令第4条第15号ロという根拠と結び付けて記録します。改正で値が変わったときに、どこを見直せばよいかが分かるからです。
4. 注意すべきこと
試験で気をつける点
- 「以上」と「超える」の置き換えに注意しましょう。「1キログラムを超える人造黒鉛」という記述は、正しくは「1キログラム以上」であり、境界の扱いが違います。
- 「及び」と「又は」の置き換えに注意しましょう。「比弾性率又は比強度のいずれかが基準を超える炭素繊維」という記述は、正しくは両方を満たす「及び」の条件です。
実務で気をつける点
- 基準値ちょうど、または基準のわずかに内側の製品は、測定の誤差で結論が揺れます。判定に使った測定値の出所(試験成績書・カタログ・実測)を記録に残しましょう。
- 貨物等省令の数値基準は改正で変わります。本レッスンの実例の値も、frontmatter に記載した版の条文によるものです。実際の判定では必ず判定時点の版で確認しましょう。
5. 根拠法令
- 貨物等省令第1条第4号。人造黒鉛の基準(1キログラム以上、ほう素当量が全重量の1,000,000分の5未満、20度の温度における見掛け比重が1.50を超える)の原文で、以上・未満・超えるの混在を確認しています。
- 貨物等省令第4条第15号ロ。炭素繊維の基準(比弾性率が14,650,000メートルを超え、及び、比強度が268,200メートルを超える)の原文で、「及び」の組み合わせを確認しています。
- 貨物等省令第5条第2号イ。旋削をすることができる工作機械の基準((一)(二)のいずれか、(三)の除外は1及び2)の原文で、「いずれか」と除外の構造を確認しています。
- 貨物等省令第1条第14号イ(一)。国際規格ISO230/2(1988)による測定方法の指定の原文を確認しています。
- 条文は、e-Gov 法令検索の貨物等省令(frontmatter に記載の法令版ID・2026年2月14日施行時点)で確認しています。
6. 理解度の確認
次の記述が正しいか、誤りかを判断してみましょう。
問1 見掛け比重が1.50ちょうどの人造黒鉛は、貨物等省令第1条第4号の「見掛け比重が1.50を超えるもの」という基準に当てはまる。
答え: 誤りです。「超える」は境界の値を含みません。1.50ちょうどは基準に当てはまらない側です。
問2 比弾性率が基準を超えるが比強度が基準以下の炭素繊維は、貨物等省令第4条第15号ロには該当しない。
答え: 正しいです。この号は「(一)及び(二)に該当するもの」と定めており、比弾性率と比強度の両方を満たしたときに該当します。
問3 カタログに記載された性能値は、測定に使った規格や条件を確かめなくても、そのまま貨物等省令の数値基準と比べてよい。
答え: 誤りです。条文は単位や測定方法(国際規格の指定、測定温度など)まで指定しています。単位と測定条件を条文にそろえてから照合します。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- X社の貨物は、輸出令別表第1の5の項に品名として掲げられ、かつ貨物等省令が定める仕様にも合致していた。この貨物は該当である。解く
- X社の貨物を輸出令別表第1の全項番と照合したところ、どの項番の仕様にも合致しなかった。この貨物は非該当である。解く
- X社の貨物は該非判定の結果、リスト規制に非該当だった。担当者は、非該当であればキャッチオール規制の確認も不要だと判断した。解く
- X社は該非判定を始めるにあたり、まず自社製品の性能・仕様を設計部門から取り寄せて正確に把握した。該非の判断は、この作業から始まる。解く
- X社は該非判定にあたり、カタログ値ではなく設計値と実測値を用いて条文の基準値と照合した。解く