無償告示の全体像と出国側の特例
無償告示の全項目を入国側と出国側の対で整理し、保税展示場、ATAカルネ、携帯品、通い容器といった実務頻度の高い場面の適用可否を判断できるようになります。
ここからは Advanced の範囲です。無償告示の代表2場面(修理後の再輸出・展示会出品後の返送)は前の節で扱いました。この節は告示の全体を対で整理します。
この節で学ぶこと
- 無償告示の第一号(輸入が先)と第二号(輸出が先)の対の構造を説明できるようになります。
- 保税展示場、ATAカルネ、携帯品、通い容器という実務頻度の高い場面で、適用可否を判断できるようになります。
覚えること
- 無償告示は、第一号が「無償で輸入した貨物を無償で輸出する」場面、第二号が「無償で輸入すべきものとして無償で輸出する」場面を、それぞれ号の中で列挙します。
- 第一号の主な場面には、修理後の再輸出、博覧会等の返送のほかに、次があります。
- 保税展示場に入れた貨物の搬出。
- ATAカルネ(物品の一時輸入のための通関手帳)による一時輸入貨物の再輸出。
- 入国者が携帯して持ち込んだ貨物の持ち帰り。
- 通い容器(貨物の運送に反復して使う容器)の返送。
- 第二号の主な場面には、出国者が携帯して持ち出す貨物、修理のために無償で輸出して修理後に無償で輸入する貨物、通い容器の送り出しがあります。
- 携帯品の特例には対象貨物の範囲の限定があり、入国側と出国側で参照する別表が異なります。範囲の細目は号と別表の原文で確かめます。
1. 対で覚える構造
無償告示の全体は、貨物が本邦に一時的に入る動きと、本邦から一時的に出る動きの対でできています。
| 場面 | 入国側(第一号・輸入が先) | 出国側(第二号・輸出が先) |
|---|---|---|
| 修理 | 無償で輸入した貨物の修理後の再輸出 | 修理のための無償の輸出(無償で輸入する前提) |
| 携帯品 | 入国者が持ち込んだ貨物の持ち帰り | 出国者が携帯して持ち出す貨物 |
| 通い容器 | 容器の返送 | 容器の送り出し |
| 展示 | 博覧会等に出品した貨物の返送 | 博覧会等への出品のための輸出 |
どの場面でも、無償であることと、号に列挙された要件を満たすことの両方が必要です。対の片側の要件を、もう片側に流用しないよう注意します。
2. 実務頻度の高い場面の判断
保税展示場とATAカルネは、国際的な展示や商用サンプルの一時持ち込みを支える制度です。いずれも、持ち込んだ貨物がそのまま出ていくことが前提であり、本邦で販売した場合や、持ち込んだものと別の貨物を送る場合には特例を使えません。
出国者の携帯品は、海外出張でリスト規制該当貨物(例えば測定器やパソコン)を持ち出す場面で問題になります。携帯品の特例には対象貨物の範囲の限定があるため、持ち出す貨物が範囲に入るかを号と別表で確かめてから出張の準備をします。範囲外であれば、ハンドキャリーでも個別許可が必要です。
3. 注意すべきこと
試験で気をつける点
- 第一号と第二号の方向(輸入が先か、輸出が先か)を取り違えさせる出題に注意します。場面がどちらの号の列挙かを先に特定します。
- 携帯品なら何でも持ち出せるわけではありません。対象貨物の範囲の限定があることまで含めて判断します。
実務で気をつける点
- 通い容器やATAカルネの運用では、持ち込んだものと持ち出すものの同一性を記録で示せるようにします。同一性を示せない出入りは、特例の前提を欠きます。
4. 根拠法令
- 輸出令第4条第1項第二号ホ・ヘ。無償告示への委任の根拠です。
- 無償告示(平成12年通商産業省告示第746号・最終改正 令和7年告示第167号)第一号・第二号。場面の列挙を原文で確認済みです(2026-08-06)。携帯品の対象範囲は別表ではなく貨物等省令の号を参照する方式(9の項は第8条第九号から第十二号・12の項は第11条第十三号のうち本人の使用に供するもの)です。なお柱書の除外構造から、1の項(武器)でも防衛装備に係る展示会の返送(第一号3)・国際的なスポーツ競技大会(3の2)・自衛隊との訓練持込(10)は対象に含まれます。
5. 理解度の確認
次の記述が正しいか、誤りかを判断してみましょう。
問1 ATAカルネで一時輸入した測定器を、会期後に本邦の顧客へ販売した。この販売は無償告示の特例の対象になる。
答え: 誤りです。一時輸入した貨物の販売は、そのまま持ち帰るという特例の前提を欠きます。
問2 海外出張でリスト規制該当の測定器を携帯して持ち出す場合、携帯品であればどのような貨物でも無償告示の特例で許可なく持ち出せる。
答え: 誤りです。携帯品の特例には対象貨物の範囲の限定があります。範囲外の貨物は、ハンドキャリーでも個別許可が必要です。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 輸出令第4条第1項の柱書は、法第48条第1項の規定は次に掲げる場合には適用しない、と定めている。解く
- X社は、災害の被災地へ送る人道支援の物資として、リスト規制に該当する浄水装置を無償で輸出する。人道支援を目的とする輸出であるから、輸出許可は不要である。解く
- A大学は、共同研究のためリスト規制に該当する測定器をB国の研究機関へ輸出する。学術研究のための輸出であるから、輸出許可は不要である。解く
- X社は、政府開発援助として行う事業のためにリスト規制該当貨物を輸出する。この場合でも、輸出令第4条第1項に列挙されていない以上、輸出許可は必要である。解く
- X社は、リスト規制に該当する貨物をA国のY社へ輸出する。用途を確認したところ民生用途であることが明らかだった。民生用途であることが明らかであるから、輸出許可は不要である。解く