号別の特例の全体像
貿易外省令第9条第2項の号の並びを全体として読み、工業所有権の出願、貨物やプログラムの提供に付随する使用技術、暗号の国際会議提供といった号別の特例を判断できるようになります。
ここからは Advanced の範囲です。公知(第九号)と基礎科学(第十号)は初学者向けの節で扱いました。この節は、号の並びの全体と、実務で使う頻度の高い残りの号を扱います。
この節で学ぶこと
- 貿易外省令第9条第2項の号の並びを、性格ごとのまとまりとして読めるようになります。
- 工業所有権の出願、貨物・プログラムの提供に付随する使用技術の特例を判断できるようになります。
覚えること
- 号の並びは、おおまかに次のまとまりで読めます。
- 政府や国際約束に関わる取引(経済産業大臣が行う取引、政府間の経済協力、条約の実施など)。
- 外国で提供を受けた技術の扱いに関する号。
- 公知・基礎科学・工業所有権という学術と権利化の号(第九号から第十一号まで)。
- 貨物やプログラムの提供に付随する使用技術の号(第十二号から第十四号まで)。
- 個別の場面の号(原子力災害対応、暗号技術の国際会議提供など)。
- 工業所有権の出願・登録の特例(第十一号)は、「当該出願又は登録に必要な最小限の技術」の提供だけを許可不要にします。出願に不要な周辺技術まで渡せば特例の外です。
- 貨物の輸出に付随する使用技術(第十二号)とプログラムの提供に付随する使用技術(第十三号)は、輸出した製品を相手が使うために必要な技術(取扱説明など)を対象にします。設計や製造の技術は付随に含まれません。
- 適用には号ごとの除外や条件が付きます。号の本文だけでなく、括弧書きと告示指定(使用技術の範囲を定める告示)まで確かめます。
1. なぜ「付随」の特例があるのか
許可を受けて貨物を輸出しても、相手が使えなければ取引は完結しません。取扱説明書や操作の指導は、輸出許可の審査で認められた取引の一部です。これを別の許可にかければ、同じ取引を二度審査することになります。
そこで第十二号と第十三号は、許可された提供の裏付けがある使用技術に限って、重ねての許可を不要にします。この趣旨から、付随の範囲は「使うために必要な最小限」に絞られます。製品の設計思想や製造ノウハウは、使うための技術ではないため、付随の枠に入りません。
2. 判断を誤りやすい場面
| 場面 | 判断 |
|---|---|
| 輸出したポンプの操作手順書を同梱して送る | 使用に係る技術として第十二号の対象になりうる |
| 輸出したポンプの設計図面を「サービスで」送る | 設計技術は付随の枠外。役務取引として別に判断する |
| 特許出願のために外国の代理人へ明細書に必要な技術情報を送る | 出願に必要な最小限なら第十一号の対象 |
| 出願に使わない実験データまで代理人へまとめて送る | 最小限を超える部分は特例の外 |
3. 注意すべきこと
試験で気をつける点
- 「最小限」「付随」「使用に係る」という限定の語が、各号の範囲を絞る鍵です。限定を外した記述(設計技術まで付随に含める、出願と無関係の技術まで最小限に含める)は誤りです。
- 号の適用可能な時期(許可された輸出・提供が先にあるか)を入れ替える出題に注意します。
実務で気をつける点
- 製品出荷に同梱する技術資料の一覧を定め、付随の枠(使用に必要な範囲)を超える資料が紛れない手順にします。付随の判断も号と根拠を記録します。
4. 根拠法令
- 貿易外省令第9条第2項第十一号。「工業所有権の出願又は登録を行うために、当該出願又は登録に必要な最小限の技術を提供する取引」と定めます。
- 同項第十二号・第十三号。貨物の輸出・プログラムの提供に付随して提供される使用に係る技術の特例を定めます。対象の指定は使用技術告示(平成21年経済産業省告示第307号・最終改正 令和5年告示第145号)が受けています(原文確認済み2026-08-06。この告示の改正束は通達群の輸出注意事項と別系統です)。
- 同項第十四号・第十六号。プログラムの提供に関する特例と、暗号メカニズム等の国際会議での提供に関する特例を定めます。同じく細目は要確認です。
- 条文は e-Gov 法令検索(2025年11月15日施行時点)で確認しています。
5. 理解度の確認
次の記述が正しいか、誤りかを判断してみましょう。
問1 特許出願のためであれば、出願に直接必要でない周辺の技術データも含めて外国の代理人へ提供できる。
答え: 誤りです。第十一号の特例は出願または登録に必要な最小限の技術に限られます。
問2 輸出許可を受けて輸出した装置の取扱説明のための技術は、貨物の輸出に付随して提供される使用に係る技術として、役務取引許可を受けずに提供できる場合がある。
答え: 正しいです。第十二号は使用に係る技術の付随提供を特例としています。範囲は使うために必要な限りで、設計・製造の技術は含まれません。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- X社の技術者が、A国のY社へ図面を1枚だけ電子メールで送った。図面には特定技術にあたる内容が含まれていた。この行為は役務取引の規制の対象になる。解く
- X社の技術者が、A国のY社へ送る資料は1枚だけだった。1枚であれば規制の対象にならない。解く
- 電話や口頭の説明でも、技術支援として規制の対象になる。解く
- 記録に残らない口頭の説明は、後から確かめられないため規制の対象外である。解く
- X社の技術者が、自分が現地で作業に使うためだけに、特定技術にあたる技術資料をA国へ持ち出した。誰にも渡す予定はない。この場合でも、前段規制にあたるかどうかの判断は必要である。解く