輸出の定義と輸出の時点
本邦・外国・貨物の法令上の定義と、どの行為が輸出にあたるかの線引き、輸出の時点の考え方を、具体的な場面で判断できるようになります。
この節で学ぶこと
- 本邦・外国・貨物の法令上の定義を説明できるようになります。
- 具体的な場面について、輸出にあたるかどうかを判断できるようになります。
- 輸出の時点がいつかを説明できるようになります。
覚えること
- 輸出とは、貨物を本邦から外国へ向けて送付することです。送付する形態や理由は問いません。
- 本邦とは、外為法第6条第1項第一号により、本州、北海道、四国、九州とその附属の島をいいます。北方領土は、当分の間、本邦から除かれています。
- 外国とは、本邦以外の地域をいいます(外為法第6条第1項第二号)。
- 貨物とは、貴金属、支払手段、証券などを除く動産をいいます(外為法第6条第1項第十五号)。ウイルスのような微生物も貨物にあたります。
- 輸出の時点は、原則として、貨物を外国へ向けて送付するために船舶または航空機に積み込んだ時です(運用通達0-2)。
1. どの行為が輸出にあたるか
輸出にあたるかどうかは、貨物が本邦から外国へ向けて送付されるかで決まります。取引の名目や対価の有無は関係ありません。
輸出にあたる場面の例を挙げます。
- サンプルの炭素繊維を海外のメーカーに無償で送付する。
- 共同研究のために、光検出器を海外の大学へ郵送する。
- 圧力計をハンドキャリーで海外へ持ち出す。
- 留学中の家族に、分光計を国際宅配便で送る。
無償でも、私的な荷物でも、貨物が外国へ向かうなら輸出です。一時的に来日した外国人が、帰国のときにリスト規制該当貨物を持ち出す場合も輸出にあたり、許可が必要です。
2. 輸出にあたらない場面
貨物が本邦の外へ出ないなら、輸出にはあたりません。
- 都内の駐日外国大使館に、監視カメラを取り付ける。
- 本邦にある米軍基地に、バルブを納品する。
大使館や在日米軍基地は、地理的には本邦の中にあります。そのため貨物の納品は輸出にあたらず、外為法第48条第1項の輸出許可は不要です。
ただし、注意すべき点が2つあります。第一に、リスト規制該当技術を駐日外国大使館に提供する場合、大使館は非居住者にあたるため、役務取引許可の検討が必要です(第6章で扱う技術側の規制です)。第二に、懸念のある相手への納品は、許可が不要でも、取引として適切かというリスクマネジメントの判断が別に残ります。
3. 注意すべきこと
試験で気をつける点
- 「無償だから輸出ではない」「自己使用の持ち出しだから輸出ではない」という判断は誤りです。形態や理由を問わず、本邦から外国への送付は輸出です。
- 大使館・在日米軍基地への納品は、貨物については輸出にあたりません。技術の提供とは扱いが異なる点を区別します。
実務で気をつける点
- 輸出の時点は船舶または航空機への積み込み時です。許可は積み込みの前に取得しておく必要があります。通関から積み込みまでの日程を踏まえて、申請の時期を計画します。
4. 根拠法令
- 外為法第6条第1項第一号・第二号・第十五号(定義)。本邦、外国、貨物の定義を置きます。
- 外国為替及び外国貿易法における附属の島に関する命令。北方領土を当分の間、本邦から除いています。
- 輸出貿易管理令の運用について(運用通達)0-2。輸出の時点を、貨物を本邦から外国へ向けて送付するために船舶又は航空機に積み込んだ時と定めます。
- 条文は e-Gov 法令検索と経済産業省の公表資料で確認しています。
5. 理解度の確認
次の記述が正しいか、誤りかを判断してみましょう。
問1 リスト規制該当貨物を無償のサンプルとして海外メーカーへ送付する場合、対価を受け取らないため輸出にはあたらない。
答え: 誤りです。輸出は貨物を本邦から外国へ向けて送付することであり、対価の有無を問いません。
問2 本邦にある企業がリスト規制該当貨物を在日米軍基地に納品することは、輸出にあたらないため、外為法第48条第1項の輸出許可は不要である。
答え: 正しいです。在日米軍基地は地理的に本邦の中にあり、貨物は本邦の外へ出ないため輸出にあたりません。
問3 一時的に来日した外国人が、帰国の際にリスト規制該当貨物を自分の手荷物として持ち出す場合、輸出にはあたらない。
答え: 誤りです。ハンドキャリーでの持ち出しも本邦から外国への送付であり、輸出にあたります。経済産業大臣の輸出許可が必要です。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 輸出令第4条第1項の柱書は、法第48条第1項の規定は次に掲げる場合には適用しない、と定めている。解く
- X社は、災害の被災地へ送る人道支援の物資として、リスト規制に該当する浄水装置を無償で輸出する。人道支援を目的とする輸出であるから、輸出許可は不要である。解く
- A大学は、共同研究のためリスト規制に該当する測定器をB国の研究機関へ輸出する。学術研究のための輸出であるから、輸出許可は不要である。解く
- X社は、政府開発援助として行う事業のためにリスト規制該当貨物を輸出する。この場合でも、輸出令第4条第1項に列挙されていない以上、輸出許可は必要である。解く
- X社は、リスト規制に該当する貨物をA国のY社へ輸出する。用途を確認したところ民生用途であることが明らかだった。民生用途であることが明らかであるから、輸出許可は不要である。解く