特例の限定列挙
輸出許可が不要になるのは輸出令第4条に列挙された場合だけであり、人道支援や学術研究といった目的の善良さは許可を不要にしないことを、条文の構造から説明できるようになります。
この節で学ぶこと
- 特例が輸出令第4条の限定列挙であることを、条文の構造から説明できるようになります。
- 条文に列挙されていない理由を根拠に許可不要と判断する誤りを、見分けられるようになります。
覚えること
- 輸出令第4条第1項の柱書は「法第四十八条第一項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない」と定めます。許可が不要になるのは、ここに列挙された場合だけです。
- 列挙されていない理由は、どれほどもっともに見えても、許可を不要にしません。人道支援、学術研究、教育目的、政府開発援助、民生用途、地方公共団体の事業は、いずれも列挙されていない理由です。
- 柱書にはただし書きがあり、別表第1の1の項の中欄に掲げる貨物(武器)にはこの条の特例が原則として適用されません。ただし書き自身が第二号のホとヘ(無償告示の貨物)を除いているため、無償告示の特例だけは1の項にも使えます。
- 特例に該当するかは、列挙された各号の要件を1つずつ確かめて判断します。一部の要件を満たすだけでは足りません。
1. なぜ限定列挙なのか
外為法第48条第1項の輸出許可は、国際的な平和と安全の維持のための義務です。例外を広く認めれば、規制の穴になります。そのため政令は、許可が不要になる場合をあらかじめ数え上げ、それ以外を認めない形を取っています。この定め方を限定列挙といいます。
限定列挙のもとでは、目的の善良さと許可の要否は切り離して考えます。医療支援のための輸出でも、被災地への援助物資でも、リスト規制該当貨物であれば、列挙された特例に当てはまらない限り許可が必要です。善良な目的の取引が、迂回輸出の偽装に使われてきた歴史が、この厳格さの背景にあります。
2. 誤りやすい判断の型
次のような理由づけは、いずれも特例の根拠になりません。
- 人道支援や災害援助のためだから、許可は不要だ。
- 大学の学術研究に使うものだから、許可は不要だ。
- 政府開発援助の案件だから、許可は不要だ。
- 民生用途にしか使えない製品だから、許可は不要だ。
- 買い手が地方公共団体だから、許可は不要だ。
正しい判断の道筋は1つです。輸出令第4条第1項の各号を順に見て、要件をすべて満たす号があるかを確かめます。無ければ、許可を申請します。
3. 注意すべきこと
試験で気をつける点
- もっともらしい目的を挙げて「許可不要」と結論づける記述は、列挙された特例に当てはまるかを確かめるまで正誤を判断できません。目的の記述に引き寄せられず、条文の列挙に戻ります。
- 1の項(武器)には特例が原則として使えないこと、その例外が無償告示(第二号ホ・ヘ)であることを、ただし書きの構造とあわせて覚えます。
実務で気をつける点
- 取引先から「この用途なら許可は不要のはず」と言われた場合も、判断の根拠は輸出令第4条の該当号です。該当号を特定できない特例の主張は受け入れません。
4. 根拠法令
- 輸出令第4条第1項柱書。「法第四十八条第一項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。ただし、別表第一の一の項の中欄に掲げる貨物(第二号ホ及びへに掲げる貨物を除く。)については、この限りでない」と定めます(e-Gov 原文の表記のまま)。
- 条文は e-Gov 法令検索の輸出令で確認しています。
5. 理解度の確認
次の記述が正しいか、誤りかを判断してみましょう。
問1 リスト規制該当貨物であっても、被災地への人道支援のための輸出であれば、外為法第48条第1項の許可は不要である。
答え: 誤りです。人道支援は輸出令第4条に列挙された特例ではありません。列挙された号の要件を満たさない限り、許可が必要です。
問2 輸出令第4条の特例は、別表第1の1の項の中欄に掲げる貨物には原則として適用されない。
答え: 正しいです。第4条第1項のただし書きが、1の項の貨物を特例の対象から原則として除いています。
問3 特例の各号の要件のうち主要なものを満たしていれば、残りの要件を満たさなくても特例を適用できる。
答え: 誤りです。特例の適用は、該当する号の要件をすべて満たす場合に限られます。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 輸出令第4条第1項の柱書は、法第48条第1項の規定は次に掲げる場合には適用しない、と定めている。解く
- X社は、災害の被災地へ送る人道支援の物資として、リスト規制に該当する浄水装置を無償で輸出する。人道支援を目的とする輸出であるから、輸出許可は不要である。解く
- A大学は、共同研究のためリスト規制に該当する測定器をB国の研究機関へ輸出する。学術研究のための輸出であるから、輸出許可は不要である。解く
- X社は、政府開発援助として行う事業のためにリスト規制該当貨物を輸出する。この場合でも、輸出令第4条第1項に列挙されていない以上、輸出許可は必要である。解く
- X社は、リスト規制に該当する貨物をA国のY社へ輸出する。用途を確認したところ民生用途であることが明らかだった。民生用途であることが明らかであるから、輸出許可は不要である。解く