役務取引許可の全体像
技術の提供を規制する外為法第25条第1項が定める2つの取引類型と、外為令別表・貨物等省令による対象技術の特定のしくみを説明できるようになります。
この節で学ぶこと
- 外為法第25条第1項が定める2つの取引類型を、条文の構造から説明できるようになります。
- 貨物の輸出許可(第48条)との対応関係を整理できるようになります。
覚えること
- 外為法第25条第1項は、特定技術(政令で定める特定の種類の貨物の設計、製造もしくは使用に係る技術)の提供を目的とする取引に、経済産業大臣の許可を義務づけます。この許可を役務取引許可と呼びます。
- 条文は2つの取引類型を並べています。
- 特定技術を特定の外国において提供することを目的とする取引。行う者は居住者でも非居住者でも対象です。この前半部分を前段と呼びます。
- 特定技術を特定国の非居住者に提供することを目的とする取引。行う者は居住者です。この後半部分を後段と呼びます。
- 前段はどこで提供するか(提供地)に、後段は誰に提供するか(相手の居住性)に着目します。
- 対象の技術は外為令第17条第1項が「別表中欄に掲げる技術を同表下欄に掲げる外国において(または外国の非居住者に)提供する取引」と特定し、仕様の細目は貨物等省令が定めます。1から15までの項がリスト規制、16の項がキャッチオール規制です。
1. なぜ2つの類型があるのか
技術の流出には2つの道があります。1つは、技術を持つ人が外国へ出向いて提供する道。もう1つは、本邦にいながら外国の相手へ提供する道です。
前段は1つ目の道をふさぎます。提供の場所が外国であれば、提供する者の居住性を問わず規制します。海外出張先での技術指導、海外拠点での図面の開示がこの類型です。
後段は2つ目の道をふさぎます。本邦からの送信や、本邦での非居住者への開示のように、提供地が本邦でも、相手が特定国の非居住者であれば規制します。この2本立てで、場所と相手のどちらの穴も残さない構造になっています。
2. 貨物の規制との対応
| 観点 | 貨物(モノ) | 技術(情報) |
|---|---|---|
| 法律の根拠 | 外為法第48条第1項 | 外為法第25条第1項 |
| 政令 | 輸出令 | 外為令 |
| 対象のリスト | 輸出令別表第1 | 外為令別表 |
| 仕様の細目 | 貨物等省令 | 貨物等省令 |
| 許可の名前 | 輸出許可 | 役務取引許可 |
貨物と技術は対の構造ですが、政令とリストが別である点、そして技術には少額特例が存在しない点が重要な違いです。
3. 注意すべきこと
試験で気をつける点
- 前段(どこで)と後段(誰に)の取り違えを問う出題が定番です。提供地が外国なら前段、相手が非居住者なら後段、と着眼点を分けて判断します。
- 「技術にも少額特例がある」という記述は誤りです。少額特例は貨物(輸出令第4条第1項第五号)だけの制度です。
実務で気をつける点
- 役務取引許可の要否は、取引を行う前に判断します。海外出張や来日者への説明は、出発や面会の前が判断の時点です。
4. 根拠法令
- 外為法第25条第1項。「国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなると認められるものとして政令で定める特定の種類の貨物の設計、製造若しくは使用に係る技術(以下「特定技術」という。)を特定の外国(以下「特定国」という。)において提供することを目的とする取引を行おうとする居住者若しくは非居住者又は特定技術を特定国の非居住者に提供することを目的とする取引を行おうとする居住者は、政令で定めるところにより、当該取引について、経済産業大臣の許可を受けなければならない」と定めます。
- 外為令第17条第1項。対象の取引を、別表中欄に掲げる技術を同表下欄に掲げる外国において、または同表中欄に掲げる技術を同表下欄に掲げる外国の非居住者に提供することを目的とする取引と定めます。
- 条文は e-Gov 法令検索の各法令で確認しています。
5. 理解度の確認
次の記述が正しいか、誤りかを判断してみましょう。
問1 外為法第25条第1項の前段は、特定技術を特定の外国において提供する取引を対象とし、取引を行う者が非居住者の場合も含まれる。
答え: 正しいです。前段の主体は「居住者若しくは非居住者」であり、提供地が外国であれば居住性を問いません。
問2 本邦の企業が、本邦内で特定国の非居住者に特定技術を口頭で説明する行為は、提供地が本邦なので役務取引許可の対象にならない。
答え: 誤りです。相手が特定国の非居住者であれば後段の類型にあたり、提供地が本邦でも許可の要否の判断が必要です。
問3 技術の提供には、貨物の少額特例と同じように、総価額が小さければ許可が不要になる特例がある。
答え: 誤りです。少額特例は貨物の制度であり、技術の役務取引には存在しません。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 技術の該非判定は、外為令別表・貨物等省令・役務通達の3層を順にたどる。解く
- 技術の該非判定の3層は、貨物の3点チェックと同じ型であり、参照する政令と通達が異なる。解く
- X社の担当者は、提供しようとする技術が規制対象かを調べるため、輸出令別表第1を参照した。解く
- X社が輸出する装置は該非判定の結果、非該当だった。担当者は、この装置の設計技術についても改めて技術の該非判定を行った。解く
- 外為法第25条第1項は、特定技術の提供を目的とする取引に経済産業大臣の許可を義務づけている。解く