クラウドサービスと技術の提供
海外のストレージサービスへの技術データの保管やSaaSの利用が技術の提供にあたるかを、サービス提供者が内容を扱える状態かという実質の基準で判断できるようになります。
ここからは Advanced の範囲です。前段と後段の枠組みを、クラウドサービスという現代の場面に当てはめます。
この節で学ぶこと
- 海外のストレージサービスに技術データを保管する行為が、提供にあたるかを判断できるようになります。
- ストレージの利用とSaaSの提供という2つの場面を区別できるようになります。
覚えること
- 判断の軸は、サービス提供者が保管された技術データを閲覧、取得または利用できる状態にあるかという実質です。形式上データが国外のサーバーにあることだけでは、提供にはなりません。
- ストレージサービスの利用(自社の技術データを保管する場合)は、暗号化などにより提供者が内容を扱えない状態であれば、原則として提供にあたりません。提供者が内容を扱える状態であり、利用者がそれを知っているような場合には、提供と評価されえます。
- SaaSとして技術を提供する側に立つ場合は別です。ソフトウェアの機能として特定技術を利用者に使わせるサービスは、利用者への技術の提供の場面として、相手の居住性と所在で判断します。
- クラウドをめぐる判断の基準は経済産業省の公表Q&Aに整理されており、個別の場面の判断はその基準にあたります。
1. なぜ実質で判断するのか
技術の提供の規制は、技術が管理の外にいる相手に使える形で渡ることを捉えるものです。データの物理的な置き場所は、この観点では本質ではありません。暗号化されて誰にも読めないデータが外国のサーバーにあっても、技術は誰にも渡っていません。反対に、国内のサーバーでも、外国の事業者が平文で読める状態なら、渡ったのと同じです。
この実質基準は、これまでの節で学んだ枠組みの延長にあります。前段も後段も、技術が誰に使える形で届くかを問うてきました。クラウドはその適用場面が新しいだけで、判断の軸は変わりません。
2. 場面ごとの判断
| 場面 | 判断 |
|---|---|
| 海外事業者のストレージに、暗号化した技術データを保管(鍵は自社のみ) | 原則として提供にあたらない |
| 海外事業者のストレージに、事業者が内容を扱える状態で技術データを保管 | 提供と評価されうる。事業者の所在と居住性で判断 |
| 海外拠点の社員がアクセスできる社内クラウドに技術データを置く | 保管ではなくアクセス者への提供の場面。アクセスできる人の居住性と特定類型該当性で判断 |
| 特定技術を機能として使わせるSaaSを外国の利用者に提供 | 利用者への技術の提供として判断 |
3つ目の場面が実務では最も見落とされやすい形です。クラウドの共有設定は、そのままアクセス権者への提供の設定です。
3. 注意すべきこと
試験で気をつける点
- 「国外サーバーへの保存は常に技術の提供にあたる」という記述も、「クラウドなら提供にあたらない」という記述も、どちらも誤りです。提供者が内容を扱える状態かという実質で判断します。
実務で気をつける点
- クラウドの導入時に、暗号化の方式と鍵の管理者、事業者の約款上のアクセス権限を確かめて記録します。共有フォルダの権限設定の変更は、技術提供の判断が必要な操作として扱います。
4. 根拠法令
- 外為法第25条第1項。技術の提供を目的とする取引の許可の根拠です。
- 経済産業省の公表Q&A(クラウドサービスと役務取引の扱い)。ストレージ利用が提供にあたるかの実質の基準を示します。基準の正確な文言は下書き段階のため要確認としています(当たり先は経済産業省の公表資料)。
5. 理解度の確認
次の記述が正しいか、誤りかを判断してみましょう。
問1 特定技術のデータを、自社だけが復号の鍵を持つ暗号化を施して海外事業者のストレージに保管する行為は、それだけで技術の提供にあたる。
答え: 誤りです。サービス提供者が内容を閲覧、取得または利用できない状態であれば、原則として提供にあたりません。
問2 社内クラウドの共有フォルダに特定技術の資料を置き、海外拠点の非居住者の社員にアクセス権を与える行為は、技術の提供の判断が必要な場面である。
答え: 正しいです。アクセスできる状態に置くことは、アクセス権者への提供の場面として、相手の居住性と特定類型該当性で判断します。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 技術の該非判定は、外為令別表・貨物等省令・役務通達の3層を順にたどる。解く
- 技術の該非判定の3層は、貨物の3点チェックと同じ型であり、参照する政令と通達が異なる。解く
- X社の担当者は、提供しようとする技術が規制対象かを調べるため、輸出令別表第1を参照した。解く
- X社が輸出する装置は該非判定の結果、非該当だった。担当者は、この装置の設計技術についても改めて技術の該非判定を行った。解く
- 外為法第25条第1項は、特定技術の提供を目的とする取引に経済産業大臣の許可を義務づけている。解く