罰則の基本構造と未遂罪
外為法の罰則が違反の重さに応じた3つの水準でできていること、輸出の未遂も罰せられること、公訴時効と資料の保存期間の対応を説明できるようになります。
注意
試験のテキストは罰則の条文を第69条の6として引用しますが、現行の外為法では条が繰り下がり、第69条の7(リスト規制違反)と第69条の8(キャッチオール規制違反等)が罰則の条文です(現行の第69条の6は経過措置の定めです)。また、テキストの「懲役」は、刑法改正により現行条文では拘禁刑に改められています。この教材は現行条文の条数と用語を正として書きます。対応関係の一覧は版差分対照表(DOM-2604)を参照してください。
この節で学ぶこと
- 罰則が違反の重さに応じた3つの水準でできていることを説明できるようになります。
- 未遂罪と、公訴時効・資料の保存期間の対応を実務に結びつけられるようになります。
覚えること
- 罰則の中心は3つの水準です。どの水準でも、拘禁刑と罰金は併科(両方を科すこと)ができます。
- リスト規制違反(無許可の輸出・技術取引)。7年以下の拘禁刑もしくは2,000万円以下の罰金、またはその併科です(第69条の7第1項)。
- 核兵器等関連の重罰。対象が核兵器等やそのおそれが特に大きい貨物・技術(輸出令第14条・外為令第27条が指定)のときは、10年以下の拘禁刑もしくは3,000万円以下の罰金に上がります(第69条の7第2項)。
- キャッチオール規制違反等。5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金です(第69条の8)。
- どの水準にも5倍ルールが付きます。目的物の価格の5倍が罰金の上限額を超えるときは、罰金はその5倍以下になります(計算は次の Advanced の節で扱います)。
- 未遂罪があります。無許可輸出は、輸出が完了しなくても罰せられます(第69条の7第3項・第69条の8第2項)。
- 公訴時効は刑の重さで決まります(刑事訴訟法第250条第2項)。7年以下・10年以下の拘禁刑にあたる罪は7年、5年以下は5年です。違反の有無を後から立証できるよう、輸出関係の資料の保存期間は時効に対応させて設計します。
1. なぜ水準が3段階に分かれているのか
罰則の重さは、その違反が何を危険にさらすかに比例させてあります。キャッチオール規制の違反は「おそれ」の段階の管理義務違反、リスト規制の違反は国際レジームが合意した機微品目の流出、核兵器等関連はその中でも大量破壊兵器に直結する流出です。
段階を分けずに一律の重罰にすれば、軽い義務違反まで萎縮させます。一律に軽くすれば、核関連の流出への抑止が足りません。3つの水準は、規制の柱(リスト規制・キャッチオール規制)と守るべきものの重さを、そのまま刑の重さに写した構造です。条文の番号を覚えるより先に、この対応を掴むと全体が整理されます。
2. 未遂と時効が実務に求めるもの
- 未遂罪の帰結。船積みの前に発覚しても罪は成立します。「出港前に止めたから問題ない」は成り立ちません。出荷の直前ではなく、取引審査の段階で違反を止める体制が要ります。
- 時効の帰結。違反の疑いは最長7年後まで問われえます。該非判定書・許可証・出荷記録などの資料は、公訴時効の期間に対応した年数で保存します。保存期間の具体の定めは通達・社内規程の水準で確かめます。
3. 注意すべきこと
試験で気をつける点
- 3つの水準の数値の入れ替え(キャッチオール違反に7年、リスト規制違反に5年など)が誤答の定番です。5年・7年・10年と1,000万・2,000万・3,000万の対応で覚えます。
- 「未遂は罰せられない」という記述は誤りです。輸出の未遂罪は明文で罰せられます。
実務で気をつける点
- 試験のテキスト(第69条の6・懲役)と現行条文(第69条の7・第69条の8・拘禁刑)の表記の違いに注意します。実務の文書には現行の条数と用語を使います。
4. 根拠法令
- 外為法第69条の7・第69条の8。罰則の3つの水準と未遂罪を定めます。
- 輸出令第14条・外為令第27条。重罰(第69条の7第2項)の対象になる貨物・技術を指定します。
- 刑事訴訟法第250条第2項。公訴時効の期間を定めます。長期15年未満の拘禁刑にあたる罪は7年、長期10年未満は5年です。
- 条文はいずれも e-Gov 法令検索の現行版で確認しています。
5. 理解度の確認
次の記述が正しいか、誤りかを判断してみましょう。
問1 無許可輸出は、貨物の船積みが完了しなかった場合には処罰されない。
答え: 誤りです。未遂罪の定めがあり(第69条の7第3項)、輸出が完了しなくても罰せられます。
問2 核兵器等の開発等に用いられるおそれが特に大きいものとして政令で定める貨物の無許可輸出には、通常のリスト規制違反より重い水準の罰則が適用される。
答え: 正しいです。第69条の7第2項により、10年以下の拘禁刑もしくは3,000万円以下の罰金(またはその併科)に上がります。対象の貨物は輸出令第14条が指定します。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 罰金の上限は二段階で確定する。解く
- 価格の5倍が法定上限を超えるときは、罰金の上限は当該価格の5倍以下に置き換わる。解く
- X社は、リスト規制に該当する(核兵器等の関連には当たらない)貨物を、許可を受けずに輸出した。目的物の価格は600万円だった。この違反行為をした者に科されうる罰金の上限は、3,000万円以下である。解く
- X社が同じ違反をした場合で、輸出した貨物の価格が300万円だったときは、罰金の上限は2,000万円以下のままである。解く
- Y社は価格200万円の貨物を許可を受けずに輸出した。罰金の上限は、目的物の価格の5倍にあたる1,000万円以下となる。解く