罰金額の計算
罰金の上限を確定する二段階の判定、すなわち対象が核兵器等関連かで適用条項と法定上限を決め、目的物の価格の5倍と比較する計算の型を、事例で使えるようになります。
ここからは Advanced の範囲です。罰則の3つの水準(初学の節)を前提に、罰金の上限を実際に計算する型に下ります。過去問で計算をさせる問題が繰り返し出ている論点です。
この節で学ぶこと
- 罰金の上限を確定する二段階の判定を、順序どおりに実行できるようになります。
- 計算の誤りやすい点を、誤答の型として見分けられるようになります。
覚えること
- 罰金の上限は二段階で確定します。順序を守ることが計算の型です。
- 段階1: 適用条項と法定上限を確定します。違反した規制(リスト規制かキャッチオールか)と、対象が核兵器等関連(輸出令第14条・外為令第27条が指定する貨物・技術)かどうかで、第69条の7第1項(2,000万円)・第2項(3,000万円)・第69条の8(1,000万円)のどれかが決まります。
- 段階2: 目的物の価格の5倍と比較します。価格の5倍が法定上限を超えるときは、罰金の上限は当該価格の5倍以下に置き換わります(各条のただし書き)。
- 計算の例です。リスト規制該当(核兵器等関連ではない)貨物、価格600万円の無許可輸出の場合。段階1で第69条の7第1項、法定上限2,000万円。段階2で5倍は3,000万円。3,000万円は2,000万円を超えるので、罰金の上限は3,000万円以下です。
- 価格が小さい場合は法定上限のままです。同じ違反で価格が300万円なら、5倍は1,500万円で2,000万円を超えないため、上限は2,000万円以下のままです。
1. なぜ5倍ルールがあるのか
罰金の上限が固定額だけなら、高額の取引では罰金が「費用」になります。10億円の貨物を無許可で売って2,000万円の罰金で済むなら、罰金を払っても利益が残る計算が成り立ってしまいます。
5倍ルールは、この計算を成り立たなくするしくみです。罰金の上限を取引の規模に連動させることで、違反の利益を罰金が必ず上回るように設計されています。段階2の比較が「超えるときだけ置き換える」形なのは、小さな取引への罰金上限を不当に下げないためです。5倍ルールは上限を引き上げる方向にだけ働きます。
2. 計算の手順
- 違反した規制を特定します(リスト規制の無許可輸出・無許可技術取引か、キャッチオール規制の義務違反か)。
- 対象の貨物・技術が輸出令第14条・外為令第27条の指定に当たるかを確かめます。当たれば第69条の7第2項です。
- 確定した条項の法定上限(1,000万・2,000万・3,000万円)を置きます。
- 目的物の価格の5倍を計算し、法定上限と比較します。5倍が大きければ、上限は5倍以下に置き換わります。
- 拘禁刑と罰金は併科できることも忘れずに答えます。
3. 注意すべきこと
試験で気をつける点
- 誤答の定番は3つです。5倍計算の省略(法定上限をそのまま答えさせる)、条項の取り違え(貨物用と技術用、第1項と第2項)、個人と法人の上限の混同(法人の上限は次の節の両罰規定で別に定められています)。
- 計算問題では、段階1を飛ばして5倍計算から入ると条項を誤ります。必ず条項の確定が先です。
実務で気をつける点
- 罰金額の見積もりは、違反の影響を経営層に説明する場面で使います。取引額の5倍という規模感は、輸出管理への投資判断の説得材料になります。
4. 根拠法令
- 外為法第69条の7・第69条の8。各項の法定上限と、ただし書きの5倍ルールを定めます。
- 輸出令第14条・外為令第27条。重罰(第69条の7第2項)の対象を指定します。
- 条文はいずれも e-Gov 法令検索の現行版で確認しています。
5. 理解度の確認
次の記述が正しいか、誤りかを判断してみましょう。
問1 リスト規制該当(核兵器等関連ではない)の貨物、価格1,000万円分を無許可で輸出した個人に科される罰金の上限は、2,000万円である。
答え: 誤りです。価格の5倍は5,000万円で、法定上限2,000万円を超えます。このため罰金の上限は当該価格の5倍以下、つまり5,000万円以下になります。
問2 目的物の価格の5倍が法定上限を超えない場合、罰金の上限は法定上限のままである。
答え: 正しいです。5倍ルールは罰金の上限を引き上げる方向にだけ働きます。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 罰金の上限は二段階で確定する。解く
- 価格の5倍が法定上限を超えるときは、罰金の上限は当該価格の5倍以下に置き換わる。解く
- X社は、リスト規制に該当する(核兵器等の関連には当たらない)貨物を、許可を受けずに輸出した。目的物の価格は600万円だった。この違反行為をした者に科されうる罰金の上限は、3,000万円以下である。解く
- X社が同じ違反をした場合で、輸出した貨物の価格が300万円だったときは、罰金の上限は2,000万円以下のままである。解く
- Y社は価格200万円の貨物を許可を受けずに輸出した。罰金の上限は、目的物の価格の5倍にあたる1,000万円以下となる。解く