両罰規定と法人処罰
従業者の違反行為について行為者と法人の双方が処罰される両罰規定の構造と、法人に科される罰金の上限、情状が免責にならないことを事例で判断できるようになります。
ここからは Advanced の範囲です。罰則の水準と罰金計算(前の2つの節)を、法人への処罰に広げます。
この節で学ぶこと
- 両罰規定が誰と誰を処罰する構造かを説明できるようになります。
- 法人の罰金の上限と、情状が免責にならない型を事例で判断できるようになります。
覚えること
- 両罰規定(外為法第72条第1項)は、法人の代表者・代理人・使用人その他の従業者が、その法人の業務に関して違反行為をしたときに、行為者を罰するほか、その法人にも罰金刑を科す定めです。担当者が罰せられれば会社は無関係、とはなりません。
- 法人に科される罰金の上限は、違反の水準に対応して定められています。
- 第69条の7第2項の違反(核兵器等関連): 10億円以下。
- 第69条の7第1項の違反(リスト規制違反): 7億円以下。
- 第69条の8の違反(キャッチオール規制違反等): 5億円以下。
- いずれも、目的物の価格の5倍がこの額を超えるときは、5倍以下です。個人と同じ5倍ルールが法人側にもあります。
- 個人(行為者)に科されるのは各本条の刑(前の2つの節の水準)で、法人の上限とは別です。個人の上限と法人の上限を混同しないことが、この論点の要です。
1. なぜ法人まで処罰するのか
輸出は組織の活動です。担当者の違反の背後には、無理な納期、審査を省く空気、管理体制への投資不足といった組織の側の原因があることが多い。行為者だけを罰する制度では、組織はトカゲの尻尾切りで生き残り、原因は残ります。
両罰規定は、違反の利益が帰属する法人に、違反の責任も帰属させるしくみです。法人の罰金上限(最高10億円)が個人(最高3,000万円)よりはるかに高いのは、法人の資力と、違反で得る利益の規模に対応させたものです。この上限は法改正で大きく引き上げられてきました。企業にとって、輸出管理体制(第13章)は罰金額と比べて安い投資である、という説明がここから出てきます。
2. 事例で判断する型
- 違反行為をしたのが、法人の代表者・代理人・使用人その他の従業者かを確かめます。
- その行為が法人の業務に関して行われたかを確かめます。業務に関する行為なら、行為者と法人の双方が処罰の対象です。
- 法人の罰金の上限を、違反の水準(第69条の7第2項・第1項・第69条の8)から確定し、価格の5倍と比較します。
- 「上層部の厳命でやむを得なかった」「規制を知らなかった」という事情は、免責の理由になりません。情状として量刑で考慮されることと、罪が成立しないことは別です。
3. 注意すべきこと
試験で気をつける点
- 事例型では、情状(知らなかった・命令された・利益は会社に入った)を挙げて「処罰されない」と誤答させる型が定番です。業務に関する従業者の違反なら、行為者と法人の双方が処罰の対象です。
- 個人の罰金上限(1,000万から3,000万円)と法人の罰金上限(5億から10億円)の混同に注意します。
実務で気をつける点
- 両罰規定は「会社は知らなかった」を通しません。従業者の違反を防ぐ管理体制の整備そのものが、法人が自分を守る手段です。
4. 根拠法令
- 外為法第72条第1項。両罰規定と、法人に科す罰金の上限(10億・7億・5億円と5倍ルール)を定めます。
- 外為法第69条の7・第69条の8。行為者本人に科される各本条の刑です。
- 条文は e-Gov 法令検索の現行版(2026年7月23日施行版)で確認しています。
5. 理解度の確認
次の記述が正しいか、誤りかを判断してみましょう。
問1 従業者が会社の業務として無許可輸出を行った場合、処罰されるのは実際に手を動かした従業者だけであり、会社が処罰されることはない。
答え: 誤りです。両罰規定(外為法第72条第1項)により、行為者を罰するほか、法人にも罰金刑が科されます。
問2 核兵器等関連の違反(第69条の7第2項)について法人に科される罰金は、10億円以下であるが、目的物の価格の5倍が10億円を超えるときは当該価格の5倍以下となる。
答え: 正しいです。法人側の上限にも5倍ルールがあり、取引の規模に連動して引き上がります。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 罰金の上限は二段階で確定する。解く
- 価格の5倍が法定上限を超えるときは、罰金の上限は当該価格の5倍以下に置き換わる。解く
- X社は、リスト規制に該当する(核兵器等の関連には当たらない)貨物を、許可を受けずに輸出した。目的物の価格は600万円だった。この違反行為をした者に科されうる罰金の上限は、3,000万円以下である。解く
- X社が同じ違反をした場合で、輸出した貨物の価格が300万円だったときは、罰金の上限は2,000万円以下のままである。解く
- Y社は価格200万円の貨物を許可を受けずに輸出した。罰金の上限は、目的物の価格の5倍にあたる1,000万円以下となる。解く