試算表で記録を確かめる
総勘定元帳の各勘定を集めた試算表を作り、借方と貸方の合計が一致することで記録の正しさを確かめます。
ねらい
仕訳と転記を毎日続けていると、どんなに気をつけていても、記録のどこかに小さな誤りがまぎれ込むことがあります。 このレッスンでは、各勘定の金額を一覧に集めた表を作り、借方と貸方の合計が一致するかどうかで記録の正しさを確かめる方法を学びます。簿記では、この点検に使う表を試算表(しさんひょう)と呼びます。 試算表は、英語で Trial Balance(トライアル・バランス)と表記します。頭文字をとって T/B(ティービー)とも呼びます。
ストーリー
前のレッスンまでで、文房具店は1か月分の取引を仕訳し、総勘定元帳へ転記し終えました。 ここで店主が気になるのは、転記の途中で金額を書き間違えていないか、あるいは片側だけ書き写し忘れていないか、という点です。 たくさんの勘定をひとつずつ見直すのは骨が折れますが、ここで便利な仕組みがあります。すべての勘定の借方と貸方を一覧に集めて合計してみると、左右が釣り合っているかどうかをまとめて確かめられるのです。 この点検のための一覧表が、試算表です。
試算表の仕組み
なぜ試算表で誤りに気づけるのか、その理由を確かめておきましょう。 前のレッスンで学んだとおり、仕訳は借方の合計と貸方の合計が必ず一致するように作ります。これを貸借平均の原理と呼びました。 仕訳をそれぞれの勘定へ正しく転記できていれば、すべての勘定を集めて合計した借方と貸方も、やはり一致するはずです。 逆にいえば、もし左右が一致しなければ、転記のどこかに誤りがまぎれていると気づけます。試算表は、この性質を利用して記録を点検する表なのです。
試算表には、書き方が2つあります。
ひとつは、各勘定の借方合計と貸方合計をそのまま並べる「合計試算表(ごうけいしさんひょう)」です。
もうひとつは、各勘定の残高だけを並べる「残高試算表(ざんだかしさんひょう)」です。
ここでは、各勘定の残高を並べる残高試算表を使って考えていきましょう。
残高試算表の作り方
次の3つの取引を仕訳し、総勘定元帳へ転記したとしましょう。
- 現金100,000円を元手に開業した。
- 商品30,000円を仕入れ、代金を現金で払った。
- 商品50,000円を売り上げ、代金を現金で受け取った。
まず、それぞれの勘定の残高を求めてみます。 現金の勘定には、借方に100,000円と50,000円、貸方に30,000円が記入されています。借方の合計150,000円から貸方の30,000円を引くと、残高は借方に120,000円となります。 ほかの勘定も見ていくと、資本金は貸方に100,000円、仕入は借方に30,000円、売上は貸方に50,000円です。 ここで思い出してほしいのは、資産と費用は借方に残高が出て、負債・純資産・収益は貸方に残高が出る、というルールです。これは各要素の定位置どおりなので、迷ったら前のレッスンの借方・貸方のルールに立ち返れば大丈夫です。
求めた残高を残高試算表の形に並べてみましょう。
| 借方残高 | 勘定科目 | 貸方残高 |
|---|---|---|
| 120,000 | 現金 | |
| 資本金 | 100,000 | |
| 30,000 | 仕入 | |
| 売上 | 50,000 | |
| 150,000 | 合計 | 150,000 |
表のいちばん下を見てみましょう。 借方残高の合計150,000円と、貸方残高の合計150,000円が、ぴたりと一致しました。
ポイント
この一致は、仕訳と転記に金額のずれがないことの心強い目安になります。
動かして確かめる
上の3つの取引を1つずつ加えると、仕訳・T勘定・試算表がその都度どう変わるか確かめられます。
スタディード / 動く解説
1つの取引が、仕訳・T勘定・試算表の姿を変えていく。
取引を1つずつ加えると、仕訳・T勘定・試算表がその都度どう変わるか確かめられます。
「次の取引を追加」を押すと、最初の取引が仕訳されます。
この試算表に並ぶ仕入30,000円と売上50,000円は、損益計算書を学んだときにも登場した数字です。 売上から仕入を差し引いた差額20,000円は、そのとき学んだ当期純利益と同じ金額です。
ただし、試算表の段階では、当期純利益という科目はまだ登場しません。 決算では、この売上と仕入をはじめとする収益と費用が当期純利益へ姿を変えます。 その当期純利益が、貸借対照表の純資産へ引き継がれていきます。
用語の確認
3級で学ぶ簿記用語を、カードで確かめましょう。用語を見て意味を思い出し、カードを押して答え合わせをします。
表 借方
例題
ここからは、先ほどの3つの取引とは別の勘定科目で練習してみましょう。 それでは、残高をどちら側に書くかを自分で判断してみましょう。 次の各勘定の残高は、残高試算表の借方と貸方のどちらに書くでしょうか。
- 買掛金(貸方残高40,000円)
- 給料(借方残高20,000円)
解答は次のとおりです。
- 買掛金は、購入した商品の代金をあとで支払う義務なので負債にあたります。負債の残高は貸方に出るので、貸方残高に書きます。
- 給料は、もうけを得るために支払う費用にあたります。費用の残高は借方に出るので、借方残高に書きます。
応用
最後に、試算表を使うときに知っておきたい注意点に触れておきます。
注意
試算表は、左右の合計が一致したからといって、すべての誤りを見つけられるわけではありません。
便利な試算表にも、見つけられない誤りがあります。 たとえば、ある取引の仕訳そのものを丸ごと書き忘れてしまった場合を考えてみましょう。このとき借方と貸方は両方とも同じだけ少なくなるので、合計はやはり一致してしまい、誤りに気づけません。 また、借方と貸方の科目を取り違えてしまっても、金額さえ同じなら左右の合計は一致したままです。 試算表の一致が教えてくれるのは、あくまで金額の片側だけのずれや計算間違いがないか、という点です。仕訳でどの科目を選んだかという中身の正しさまでは保証してくれません。 ですから、試算表で左右の一致を確かめたうえで、仕訳の内容そのものも別に見直しておくと安心です。
分からなかった点・気になった点
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