取引の8要素と仕訳のルール
取引の8要素という考え方をもとに、取引を借方と貸方へ分けて記録する仕訳の手順を理解します。
ねらい
簿記の記録は、日々の取引を帳簿の左側と右側に分けて書くことから始まります。簿記ではこの記録の作業を「仕訳(しわけ)」と呼びます。 このレッスンでは、「取引の8要素」という考え方を手がかりにして、身近な取引を仕訳の形に直せるようになりましょう。前のレッスンで覚えた5つの要素と借方・貸方のルールが、ここでそのまま活きてきます。
ストーリー
前のレッスンに登場した文房具店が、商品を仕入れて、その代金を現金で支払った場面を思い浮かべてみてください。 何気ない取引のように見えますが、このとき店の中では2つのことが同時に起きています。
1つは、販売する商品を買い付けたことで「仕入」という費用が発生したこと。
もう1つは、支払いに使ったことで「現金」という財産が手元から減ったことです。
簿記では、こうした2つの動きを借方と貸方に分けて、1つの仕訳として記録していきます。 ひとつの取引には必ず2つの面があるという見方が、仕訳を組み立てるときの出発点になります。
取引の8要素
前のレッスンで学んだ「5つの要素」は、資産・負債・純資産・収益・費用という、5つの部屋の名前でした。ここから学ぶ「取引の8要素」は、それとは別の数え方です。5つの部屋の中で実際に起こる動き(増えた・減った・発生した)を数えると、8種類になります。
なぜ8種類になるのでしょうか。資産・負債・純資産の3つは、増えることも減ることもあります。3つ×2通りで6種類です。費用と収益はすこし性質が違い、このレベルで扱うのは「発生する」動きだけなので、2種類です。6種類と2種類を足すと、8種類になります。
なお、費用や収益の金額は、返品などによって減ることもあります。 この減る動きは、返品を学ぶレッスンであらためて扱います。
前のレッスンで、それぞれに収まるべき定位置(ホームポジション)があり、増えた(発生した)ときはそこへ、減ったときは反対側へ入ることを学びました。8つの動きを一覧にすると、次のようになります。
| 借方(左側)に来る動き | 貸方(右側)に来る動き |
|---|---|
| 資産の増加 | 資産の減少 |
| 負債の減少 | 負債の増加 |
| 純資産の減少 | 純資産の増加 |
| 費用の発生 | 収益の発生 |
表を縦に見てみましょう。 借方(左側)には、定位置どおりの「資産の増加」「費用の発生」に、定位置と反対になる「負債の減少」「純資産の減少」が加わります。 貸方(右側)には、定位置どおりの「負債の増加」「純資産の増加」「収益の発生」に、定位置と反対になる「資産の減少」が加わります。 「定位置どおりなら増加・発生、定位置と反対なら減少」という前のレッスンのルールが、8つすべてにそのまま当てはまっています。一から覚え直す必要はありません。
仕訳の手順
ひとつの取引が起きると、借方の動きと貸方の動きが必ずセットで現れます。 この借方と貸方の結びつきを結合関係(けつごうかんけい)と呼びます。
仕訳は、次の3つの手順で組み立てます。
1つ目は、取引でどれが動いたかを見極めることです。
2つ目は、それが増えたのか減ったのか、あるいは発生したのかを判断することです。
3つ目は、定位置に従って、勘定科目と金額を左右に書き分けることです。
それでは、ストーリーに出てきた取引をこの手順で仕訳にしてみましょう。 「商品10,000円を仕入れ、代金を現金で払った」という取引です。
まず、この取引で動いた要素を借方と貸方に振り分けます。
借方(左)
- 仕入費用の増加 10,000
貸方(右)
- 現金資産の減少 10,000
仕入は費用にあたり、費用が発生したときは借方へ記入するルールでした。そこで、仕入を借方に書きます。 現金は資産にあたり、資産が減ったときは増えたときと反対の貸方へ記入するルールでした。そこで、現金を貸方に書きます。
この振り分けを簿記で実際に使う仕訳の表に整えてみます。すると次のようになります。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入 | 10,000 | 現金 | 10,000 |
ここでひとつ、大切な決まりに気づいてほしいことがあります。 借方の金額の合計と貸方の金額の合計は、いつでも必ず一致します。
ポイント
左右が必ず釣り合うこの決まりを「貸借平均の原理(たいしゃくへいきんのげんり)」と呼びます。 仕訳を作ったら、左右の合計がそろっているかを確かめる習慣をつけておくと安心です。
例題
それでは、今度は自分で仕訳を組み立ててみましょう。 「商品20,000円を売り上げ、代金を現金で受け取った」という取引です。同じ文房具店が、お客さんに商品を売った場面だと考えてください。
解答は次のとおりです。 現金は資産にあたり、資産が増えたときは借方へ記入するので、現金を借方に書きます。 売上は収益にあたり、収益が発生したときは貸方へ記入するので、売上を貸方に書きます。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 20,000 | 売上 | 20,000 |
応用
もう一問、少し場面を変えて取り組んでみましょう。 「銀行から現金100,000円を借り入れた」という取引です。お店を続けるために、銀行からお金を借りた場面です。
解答は次のとおりです。 現金は資産にあたり、資産が増えたときは借方へ記入するので、現金を借方に書きます。 借入金は、あとで返さなければならない義務なので負債にあたります。負債が増えたときは貸方へ記入するので、借入金を貸方に書きます。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 100,000 | 借入金 | 100,000 |
もう一問、種類のちがう取引にも挑戦してみましょう。 「事務用のパソコン1台を現金100,000円で買った」という取引です。 店の仕事に長く使うパソコンや棚などの道具は、簿記では備品(びひん)という勘定科目で記録します。
解答は次のとおりです。 備品は資産にあたり、資産が増えたときは借方へ記入するので、備品を借方に書きます。 現金も資産ですが、支払いで手元から減ったので、貸方へ記入します。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 備品 | 100,000 | 現金 | 100,000 |
この取引は、資産の増加と資産の減少という組み合わせでできています。 借方と貸方がどちらも100,000円でそろっているので、正しく釣り合っています。
分からなかった点・気になった点
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