簿記の土台となる5つの要素
簿記の土台となる5つの要素を区別し、それぞれが増えたときに借方・貸方のどちらへ入るかを理解します。
ねらい
簿記の世界では、会社やお店のあらゆる取引を「5つの要素」に分けて整理します。 このレッスンでは、まず5つの要素がそれぞれどのような意味を持つのかを区別できるようになりましょう。 そのうえで、それぞれの要素が増えたときに、帳簿の左側と右側のどちらへ記録するのかを学びます。 この左右のルールは、簿記でいちばん大切な土台になります。
ストーリー
あなたが新しく、小さな文房具店を開いた場面を想像してみてください。
まず、自分自身が用意した元手(純資産:資本金)となる現金と、銀行から頭を下げて借りてきたお金(負債:借入金)を合わせ、お店の金庫に100万円を用意しました。この手元にある現金や、商品を並べるために買ったピカピカの棚は、すべてお店のビジネスに役立つ大切な財産(資産:現金、備品)です。
さあ、いよいよ開店準備です。文房具店ですから、売るための消しゴムやノートを問屋から買い付けなければなりません。この、商品を仕入れるために支払った代金や、お店の毎月の家賃、チラシの印刷代などは、すべてビジネスを成り立たせるための必要な支出(費用:仕入、支払家賃など)となります。
そして待ちに待ったオープン初日。可愛い文房具を目当てにお客さんがやってきて、ノートが次々と売れていきました。レジにお金がチャリンと入ってきます。この、商品を売ることで得られたお店の成果(収益:売上)が、あなたのお店に新しい価値をもたらしてくれます。
このように、文房具店の日々は「財産を集め」「演出し」「演じた結果として稼ぐ」というサイクルで回っています。簿記の世界では、これらすべてのアクションを5つの引き出しに分けて整理していきます。ちなみに、このとき登場した「現金」や「売上」といった具体的な名前のことを、簿記の専門用語で勘定科目(かんじょうかもく)と呼びます。
5つの要素
お店のさまざまな項目は、次のように5つのグループに分かれます。
| 要素 | 意味 | 代表的な勘定科目 |
|---|---|---|
| 資産 | お店が持っている、プラスの価値がある財産 | 現金、売掛金、建物 |
| 負債 | あとで返さなければならない、マイナスの財産(義務) | 買掛金、借入金 |
| 純資産 | 資産から負債を差し引いた、お店の本当の持ち分 | 資本金、繰越利益剰余金 |
| 収益 | 営業活動によって、もうけの源となるお金を増やす原因 | 売上、受取利息 |
| 費用 | もうけを得るために、支払わなければならない支出 | 仕入、給料 |
ここで大切なのは、資産と負債と純資産のバランスです。 持っている財産である資産から、返すべき義務である負債を差し引きます。 その残りが、お店の正味の持ち分である純資産です。
ポイント
この関係を式で表すと、資産=負債+純資産となります。
また、これらの要素は、いずれ決算の書類につながっていきます。 資産・負債・純資産の3つは、財産の状態を表す貸借対照表に並びます。 収益・費用の2つは、経営成績を表す損益計算書に並びます。
各要素が増えたときの記入側
簿記の帳簿を記録するとき、左側のスペースを「借方(かりかた)」、右側のスペースを「貸方(かしかた)」と呼びます。これは単に左右の位置を指す言葉ですので、言葉そのものに深い意味はありません。
しかし、先ほどの5つの要素には、それぞれ「増えたときに、左と右のどちらに書き込むか」という絶対的なルールが決まっています。これは、それぞれの要素が本来収まるべき「ホームポジション(定位置)」がどこか、というルールでもあります。
借方(左)
増えたら、こちらへ書く
- 資産
- 費用
貸方(右)
増えたら、こちらへ書く
- 負債
- 純資産
- 収益
ルールを整理してみましょう。 資産と費用は、増えたときに「借方(左側)」へ記入します。 負債、純資産、収益の3つは、増えたときに「貸方(右側)」へ記入します。
では、これらの要素が「減ったとき」はどうすればよいでしょうか。答えはとてもシンプルで、増えたときとは「反対側」に記入します。 たとえば、資産が減ったときは貸方(右側)に書き、負債が減ったときは借方(左側)に書く、という具合です。
この左右のルールをしっかり身につけることが、次のレッスンから始まる「仕訳(しわけ)」をスムーズに理解するためのいちばんの近道になります。
動かして確かめる
科目と増減を選ぶと、借方(左)と貸方(右)のどちらに記入するか確かめられます。減ったときが反対側になることも試してみましょう。
スタディード / 動く解説
増えたらホームポジション、減ったら反対側。
科目と増減を選ぶと、借方(左)と貸方(右)のどちらに記入するか確かめられます。
借方(左)
(ここには入りません)
貸方(右)
現金
例題
次の勘定科目が、5つの要素のどれに分類されるか考えてみましょう。
- 売掛金(うりかけきん)
- 借入金(かりいれきん)
- 売上(うりあげ)
答え合わせ
- 売掛金は、売った商品の代金を後から受け取れる権利なので資産です。
- 借入金は、銀行などから借りたお金を後で返す義務なので負債です。
- 売上は、商品を売ることで得られたお店のもうけの源なので収益です。
応用
次の項目を5つの要素に分類したうえで、それらが増えたときに「借方」「貸方」のどちらへ記入するか答えてください。
- 資本金(しほんきん)
- 仕入(しいれ)
- 買掛金(かいかけきん)
答え合わせ
- 資本金は、ビジネスを始める元手となる資金なので純資産です。純資産が増えるときは「貸方(右側)」へ記入します。
- 仕入は、販売する商品を買い付けるための支出なので費用です。費用が増えるときは「借方(左側)」へ記入します。
- 買掛金は、購入した商品の代金を後から支払う義務なので負債です。負債が増えるときは「貸方(右側)」へ記入します。
分からなかった点・気になった点
読み込み中です。