個別原価計算(製造指図書と完成品)
注文ごとに原価を集計する個別原価計算で、完成品を製品へ振り替え、販売時の売上原価を計上し、仕損費の計算と処理ができるようになります。
ねらい
注文ごとに製品を作る会社の原価計算を学びます。このレッスンを終えると、製造指図書ごとに集計した原価を完成品として製品へ振り替え、販売したときの売上原価を計上できるようになります。あわせて、仕損が出たときの仕損費の計算と処理もできるようになります。
ストーリー
あなたの会社は、注文を受けてから製品を作る受注生産の工場です。お客さまごとに仕様の違う機械を1台ずつ作るような会社を思い浮かべてください。
このような会社では、注文ごとに「この注文にいくらかかったか」を計算します。注文を受けると「製造指図書(せいぞうさしずしょ)」という作業の指示書を発行し、その番号ごとに原価を集計していきます。集計する表を「原価計算表」といいます。注文ごとに原価を計算するこの方法を個別原価計算といいます。
原価の集計と完成
製造指図書ごとに、直接材料費・直接労務費・直接経費を賦課し、製造間接費を配賦して、その注文の原価を集計します。これらはすべて、いったん仕掛品の勘定に集まります。
製造指図書の製品が完成すると、集計した原価を仕掛品から製品へ振り替えます。たとえば、製造指図書のある番号の集計原価が、直接材料費 ¥200,000、直接労務費 ¥150,000、製造間接費の配賦額 ¥100,000 の合計 ¥450,000 だったとします。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 製品 | 450,000 | 仕掛品 | 450,000 |
完成した製品は、資産の勘定である製品の借方に記入します。完成した分だけ仕掛品を貸方に記入して減らします。まだ完成していない注文の原価は、仕掛品の勘定に残ります。
ポイント
完成した注文の原価は仕掛品から製品へ振り替え、まだ完成していない注文の原価は仕掛品の勘定に残ります。製造指図書ごとに完成したかどうかで行き先が分かれます。
仕損費の計算と処理
注文を受けて作る個別原価計算では、加工の途中で検査に通らない不合格品が出ることがあります。これを仕損(しそんじ)といいます。総合原価計算(第22章)では仕損の原価を良品へ自動的に振り分ける度外視法を使いますが、個別原価計算では、仕損にかかった原価を仕損費として直接つかまえ、指図書ごとに処理します。
2級で学ぶのは、仕損品を補修して合格品にできるときのパターンです。補修のための指図書(補修指図書)を新たに発行し、そこに集計した原価が、そのまま仕損費になります。
注意
補修できずに代わりの品物を作り直す代品の製造指図書を発行する場合や、仕損の程度が軽く指図書を新たに発行しない場合の仕損費の見積もりは1級の範囲なので、2級では扱いません。
例で確認します。
製造指図書No.201の一部が検査で不合格となり、補修可能だったので補修指図書No.201-1を発行して補修しました。No.201-1に集計された原価は、直接材料費 ¥15,000、直接労務費 ¥20,000、製造間接費配賦額 ¥10,000でした。
補修指図書に集計された原価の合計は、15,000円+20,000円+10,000円=¥45,000です。補修指図書No.201-1に集計されていた原価は、仕掛品の勘定の一部として扱われています。これを仕損費として区別して取り出すために、仕掛品の貸方に記入して減らし、仕損費の借方に記入します。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 仕損費 | 45,000 | 仕掛品 | 45,000 |
仕損費の処理
仕損費を計上したら、次はこれをどう負担させるかを決めます。2級で学ぶのは、その注文(製造指図書)の仕様が難しいなど、特定の指図書に原因がある仕損について、仕損費を元の製造指図書(No.201)へ賦課する方法です。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 仕掛品 | 45,000 | 仕損費 | 45,000 |
注意
仕損の原因が特定の指図書にあるのではなく、その部門でふだんから一定程度起きる仕損については、仕損費を製造間接費として処理する方法があります。これは1級の範囲なので、2級では扱いません。
ポイント
仕損費の計算は、補修指図書に集計した原価を仕掛品から仕損費へ振り替えるところから始まります。処理は、原因となった製造指図書(当該指図書)へ賦課します。
販売と売上原価
完成した製品を販売すると、2つの記録をします。1つは売上の計上、もう1つは売った製品の原価を売上原価へ振り替える記録です。
先ほどの製品(原価 ¥450,000)を ¥700,000 で掛けで販売したとします。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 700,000 | 売上 | 700,000 |
| 売上原価 | 450,000 | 製品 | 450,000 |
売価 ¥700,000 を収益の勘定である売上に、代金の権利を売掛金に記入します。同時に、売った製品の原価 ¥450,000 を製品から売上原価へ振り替えます。商業簿記の商品売買と違い、製造業では自分で作った製品の原価を計算しているので、その原価がそのまま売上原価になります。
注意
製品を販売したときは、売上の計上と、原価を製品から売上原価へ振り替える記録の2つをセットで書きます。売上だけを書いて原価の振り替えを忘れないようにしましょう。
例題
次の取引を仕訳してみましょう。
製造指図書の製品が完成した。集計した原価は、直接材料費 ¥180,000、直接労務費 ¥120,000、製造間接費の配賦額 ¥90,000 であった。
答え合わせ
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 製品 | 390,000 | 仕掛品 | 390,000 |
集計原価は ¥180,000 と ¥120,000 と ¥90,000 を合わせた ¥390,000 です。完成した製品を製品の借方に記入し、仕掛品を貸方に記入して減らします。
応用
次の取引を仕訳してみましょう。
原価 ¥390,000 の製品を ¥560,000 で販売し、代金は掛けとした。
答え合わせ
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 560,000 | 売上 | 560,000 |
| 売上原価 | 390,000 | 製品 | 390,000 |
売価 ¥560,000 を売上と売掛金に記入します。あわせて、売った製品の原価 ¥390,000 を製品から売上原価へ振り替えます。売上と売上原価を同時に記録する点が、製品を販売したときの型です。
仕損費の例題
次の取引を仕訳してみましょう。
製造指図書No.305の一部が検査で不合格となり、補修指図書No.305-1を発行して補修した。No.305-1に集計された原価は、直接材料費 ¥6,000、直接労務費 ¥9,000、製造間接費配賦額 ¥3,000であった。この仕損はNo.305の仕様が難しかったことが原因であるため、仕損費を計上したうえで、当該指図書(No.305)へ賦課する。
答え合わせ
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 仕損費 | 18,000 | 仕掛品 | 18,000 |
| 仕掛品 | 18,000 | 仕損費 | 18,000 |
補修指図書に集計された原価は、直接材料費6,000円と直接労務費9,000円と製造間接費配賦額3,000円を合わせた18,000円です。まず仕掛品から仕損費へ振り替えます。この仕損はNo.305の仕様が原因のものなので、当該指図書(No.305)へ賦課し、仕損費の貸方に記入して仕掛品の借方に戻します。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 製造指図書の製品が完成したときの仕訳解く
- 完成した製品を販売したときの仕訳解く
- 補修指図書に集計した原価を仕損費に振り替える仕訳解く
- 用語の確認: 個別原価計算(意味から用語)解く
- 用語の確認: 個別原価計算(用語から意味)解く