部門別計算(直接配賦法・相互配賦法)
製造間接費を部門ごとに集計し、補助部門費を製造部門へ配賦してから、製造部門費を製品へ配賦できるようになります。
ねらい
製造間接費をより正確に製品へ割り当てる方法を学びます。このレッスンを終えると、製造間接費を部門ごとに集計し、補助部門費を製造部門へ配賦し、製造部門費を製品へ配賦する流れをたどれるようになります。
ストーリー
前の章では、製造間接費を工場全体でひとまとめにして製品へ配賦しました。しかし、工場には性質の違う作業場がいくつもあります。機械をたくさん使う切削の現場もあれば、手作業が中心の組立の現場もあります。これらをひとまとめにして同じものさしで配賦すると、製品の原価が実態からずれてしまうことがあります。
そこで、製造間接費をいったん部門ごとに集計してから配賦します。これを部門別計算といいます。部門を分けることで、それぞれの現場の実態に合ったものさしで配賦でき、製品の原価がより正確になります。
部門の種類と部門費の集計
工場の部門は、大きく2つに分かれます。製品を直接加工する「製造部門」(切削部門・組立部門など)と、製造部門を支える「補助部門」(動力部門・修繕部門・工場事務部門など)です。
製造間接費は、まず各部門に集計します。特定の部門だけでかかった費用(部門個別費)はその部門へ、複数の部門に共通してかかった費用(部門共通費)は適切な割合で各部門へ分けます。
補助部門費の製造部門への配賦
補助部門は、製品を直接作るわけではありません。しかし、製造部門を支えることで製品づくりに貢献しています。そこで、補助部門に集めた費用を製造部門へ配賦します。
配賦のしかたには2つの方法があります。
- 直接配賦法: 補助部門どうしのやり取りを無視して、補助部門費をすべて製造部門だけへ配賦します。計算がかんたんです。
- 相互配賦法: 補助部門どうしのやり取りも考えに入れて配賦します。より正確ですが、計算の手間がかかります。
たとえば、動力部門費 ¥120,000 を直接配賦法により第1製造部門と第2製造部門へ、提供割合 60%と40% で配賦するとします。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 第1製造部門費 | 72,000 | 動力部門費 | 120,000 |
| 第2製造部門費 | 48,000 |
第1製造部門へは 120,000円 かける 60% で ¥72,000、第2製造部門へは 120,000円 かける 40% で ¥48,000 を配賦します。それぞれの製造部門費の借方に記入し、配賦した動力部門費を貸方に記入します。
注意
補助部門費は、製品へ直接は配賦しません。いったん製造部門へ配賦し、製造部門に集まった費用をあらためて製品へ配賦します。この順番を守りましょう。
相互配賦法の計算
相互配賦法は、補助部門どうしのやり取りも配賦の対象に含める方法です。第1次配賦と第2次配賦の2段階で計算します。
例で確認します。動力部門費 ¥100,000、修繕部門費 ¥80,000 を、次の提供割合で相互配賦法により配賦します。
| 提供部門 \ 提供先 | 第1製造部門 | 第2製造部門 | 動力部門 | 修繕部門 |
|---|---|---|---|---|
| 動力部門 | 50% | 30% | ― | 20% |
| 修繕部門 | 40% | 40% | 20% | ― |
第1次配賦では、それぞれの補助部門費を、製造部門だけでなく、もう一方の補助部門にも提供割合どおりに配賦します。動力部門費 ¥100,000 は、第1製造部門へ50%の ¥50,000、第2製造部門へ30%の ¥30,000、修繕部門へ20%の ¥20,000 を配賦します。修繕部門費 ¥80,000 は、第1製造部門へ40%の ¥32,000、第2製造部門へ40%の ¥32,000、動力部門へ20%の ¥16,000 を配賦します。
第1次配賦のあと、動力部門には修繕部門から受け入れた ¥16,000 が、修繕部門には動力部門から受け入れた ¥20,000 が残ります。この残りを補助部門にとどめておくわけにはいきません。もう一度、製造部門だけへ配賦します。これが第2次配賦です。
第2次配賦では、補助部門どうしのやり取りはもう考えません。製造部門への提供割合の比だけで配分します。動力部門が受け入れた ¥16,000 は、動力部門の製造部門への提供割合の比(第1製造50%:第2製造30%=5:3)で配分します。第1製造部門へ 16,000円 かける 5/8 で ¥10,000、第2製造部門へ 16,000円 かける 3/8 で ¥6,000 です。修繕部門が受け入れた ¥20,000 は、修繕部門の製造部門への提供割合の比(第1製造40%:第2製造40%=1:1)で配分します。第1製造部門へ ¥10,000、第2製造部門へ ¥10,000 です。
第1次配賦と第2次配賦を合計すると、第1製造部門費は 50,000円+32,000円+10,000円+10,000円=¥102,000、第2製造部門費は 30,000円+32,000円+6,000円+10,000円=¥78,000 です。合計 ¥180,000 は、動力部門費と修繕部門費を合わせた金額と一致します。補助部門費はすべて製造部門へ配賦されるので、仕訳は次のようにまとめて記入します。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 第1製造部門費 | 102,000 | 動力部門費 | 100,000 |
| 第2製造部門費 | 78,000 | 修繕部門費 | 80,000 |
注意
相互配賦法では、第1次配賦で補助部門どうしのやり取りをいったん認め、第2次配賦で残りを製造部門だけへ配分します。第2次配賦を忘れると、補助部門に金額が残ったままになってしまいます。なお、2級で学ぶ相互配賦法はこの簡便な2段階の方法です。補助部門どうしのやり取りが完全になくなるまで計算を繰り返す純粋の相互配賦法は1級の範囲なので、2級では扱いません。
製造部門費の製品への配賦
補助部門費の配賦が終わると、製造間接費はすべて製造部門に集まります。最後に、この製造部門費を製品(仕掛品)へ配賦します。前の章で学んだ予定配賦を部門ごとの配賦率で行います。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 仕掛品 | 120,000 | 第1製造部門費 | 120,000 |
これで、製造間接費が部門を経由して製品の原価に組み込まれます。工場全体でひとまとめにするより、部門ごとの実態に合った配賦ができるのが部門別計算の利点です。
ポイント
部門別計算は、部門費の集計、補助部門費の製造部門への配賦、製造部門費の製品への配賦、という順で進みます。製造間接費が部門を経由して製品の原価に組み込まれます。
例題
次の取引を仕訳してみましょう。
直接配賦法により、修繕部門費 ¥90,000 を第1製造部門と第2製造部門へ配賦する。提供割合は、第1製造部門70%、第2製造部門30%である。
答え合わせ
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 第1製造部門費 | 63,000 | 修繕部門費 | 90,000 |
| 第2製造部門費 | 27,000 |
第1製造部門へは 90,000円 かける 70% で ¥63,000、第2製造部門へは 90,000円 かける 30% で ¥27,000 を配賦します。
応用
次の取引を仕訳してみましょう。
第2製造部門費を製品へ予定配賦する。第2製造部門の予定配賦率は機械運転時間1時間あたり ¥350、当月の機械運転時間は400時間であった。
答え合わせ
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 仕掛品 | 140,000 | 第2製造部門費 | 140,000 |
予定配賦額は、機械運転時間400時間に予定配賦率 ¥350 を掛けた ¥140,000 です。製品へ配賦するので仕掛品の借方に記入し、配賦した第2製造部門費を貸方に記入します。
相互配賦法の例題
次の資料から、相互配賦法(第1次配賦・第2次配賦の2段階)により、材料倉庫部門費と工場事務部門費を製造部門へ配賦したときの仕訳をしてみましょう。
材料倉庫部門費 ¥120,000、工場事務部門費 ¥40,000。提供割合は次のとおりです。材料倉庫部門は第1製造部門50%・第2製造部門30%・工場事務部門20%。工場事務部門は第1製造部門40%・第2製造部門40%・材料倉庫部門20%。
答え合わせ
第1次配賦です。材料倉庫部門費 ¥120,000 は、第1製造部門へ ¥60,000(50%)、第2製造部門へ ¥36,000(30%)、工場事務部門へ ¥24,000(20%)を配賦します。工場事務部門費 ¥40,000 は、第1製造部門へ ¥16,000(40%)、第2製造部門へ ¥16,000(40%)、材料倉庫部門へ ¥8,000(20%)を配賦します。
第2次配賦です。材料倉庫部門が受け入れた ¥8,000 は、材料倉庫部門の製造部門への提供割合の比(5:3)で、第1製造部門へ ¥5,000、第2製造部門へ ¥3,000 を配分します。工場事務部門が受け入れた ¥24,000 は、工場事務部門の製造部門への提供割合の比(1:1)で、第1製造部門へ ¥12,000、第2製造部門へ ¥12,000 を配分します。
第1製造部門費は 60,000円+16,000円+5,000円+12,000円=¥93,000、第2製造部門費は 36,000円+16,000円+3,000円+12,000円=¥67,000 です。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 第1製造部門費 | 93,000 | 材料倉庫部門費 | 120,000 |
| 第2製造部門費 | 67,000 | 工場事務部門費 | 40,000 |
合計 ¥160,000 は、材料倉庫部門費と工場事務部門費を合わせた金額と一致します。第1次配賦だけで止めてしまうと直接配賦法と変わらなくなるので、第2次配賦を忘れずに行いましょう。
分からなかった点・気になった点
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