G検定(ジェネラリスト検定)
いどうへいきん
移動平均
Moving Average
移動平均は、時系列データのある時点を中心に、前後の一定期間の観測値を平均して、その時点のトレンドサイクル(データの大きな流れを表す成分)を推定する手法です。時系列データをいくつかの成分に分ける古典的な時系列分解では最初の段階で使われ、細かな揺れを取り除いた滑らかな動きを取り出すために用いられます。
詳しい説明
移動平均とは
移動平均(Moving Average)は、時間の順に並んだデータ、つまり時系列データを扱うための基本的な手法です。ある時点について、その時点を中心として前後の一定期間に含まれる観測値を集め、それらを平均します。こうして得た平均値を、その時点におけるトレンドサイクルの推定値とみなします。
平均を取る範囲(窓)を1時点ずつずらしながら同じ計算を繰り返していくので、平均の位置が時間とともに移動していきます。これが移動平均という名前の由来です。
ハインドマン(Hyndman)とアサナソプロス(Athanasopoulos)による時系列予測の教科書 Forecasting: Principles and Practice(第3版)では、移動平均を時系列分解の出発点として説明しています。
トレンドサイクルとは
時系列データには、長い期間にわたる大きな流れと、その上に乗る細かな上下の揺れが混ざっています。トレンドサイクルとは、このうちデータの大きな流れを表す成分のことです。長期的に上がっていく、下がっていくといった傾向や、ゆるやかな波のような動きがここに含まれます。
移動平均は、観測されたデータからこのトレンドサイクルを取り出すための道具です。
なぜ平均を取ると滑らかになるのか
時間的に近い時点の観測値は、値も近い傾向があります。そのため、ある時点の前後の観測値をまとめて平均すると、大きな流れはほぼそのまま残る一方で、個々の観測値に含まれるランダムな変動の一部は打ち消し合って取り除かれます。
その結果として、元のデータよりも滑らかなトレンドサイクルの成分が残ります。移動平均が滑らかな線になるのは、この仕組みによるものです。
次数とm-MAという呼び方
移動平均では、何個の観測値を平均するかを次数と呼びます。次数がmの移動平均を、m-MA(moving average of order m、次数mの移動平均)と書きます。
ここで扱う移動平均は、中心の時点の前と後ろにそれぞれ同じ数ずつの期間をとり、それに中心の時点そのものを加えた範囲を平均します。たとえば前後に2期間ずつとれば、中心の1時点と合わせて5個の観測値を平均することになり、これが5-MA(次数5の移動平均)です。前後に同じ数ずつとるので、この形の次数は奇数になります。
具体例 オーストラリアの輸出データで5-MAを計算する
教科書では、1960年から2017年までのオーストラリアの輸出データ(GDPに対する割合をパーセントで表したもの)を例に、5-MAを計算しています。手順は次のとおりです。
- 5-MAの最初の値は、1960年から1964年までの最初の5つの観測値の平均です
- 5-MAの2番目の値は、1961年から1965年までの5つの観測値の平均です
- 以下同じように、窓を1年ずつ後ろへずらしながら平均を計算していきます
つまり、5-MAの各値は、対応する年を中心とした5年間の窓に含まれる観測値の平均です。最初の値は1960年から1964年の平均なので、窓の中心にあたる1962年の値として扱われます。
両端では値が求まらない
5-MAでは、各年の前に2年分、後ろに2年分の観測値が必要です。ところが、データの最初の2年(1960年と1961年)には前側に2年分の観測値がなく、最後の2年(2016年と2017年)には後ろ側に2年分の観測値がありません。
そのため、最初の2年と最後の2年については5-MAの値が存在しません。中心の前後に同じ数ずつ観測値をとる移動平均では、データの両端で推定値が欠けるという制約があることを押さえておきましょう。
得られる結果の性質
このデータで計算した5-MAをグラフに重ねると、トレンドサイクルは元のデータより滑らかな線になります。細かな上下の揺れはならされ、それらに引きずられずに時系列の主な動きを捉えた形になります。
元のデータをそのまま眺めるだけでは細かな変動に目を奪われがちですが、移動平均を取ることで、データ全体がどちらへ向かっているかという大きな流れを読み取りやすくなります。
時系列分解の中での位置づけ
時系列データをいくつかの成分に分けて理解する方法を時系列分解と呼びます。そのうち古典的な分解の方法は1920年代に生まれ、1950年代まで広く使われました。この方法は現在も多くの時系列分解の手法の土台になっています。
古典的な分解では、最初の段階として移動平均を使ってトレンドサイクルを推定します。移動平均は単独でデータを滑らかにする手法であると同時に、時系列分解という大きな枠組みの入り口となる手法でもあります。
なお、G検定シラバスでは、移動平均は中項目の記述統計とばらつきの対象キーワードとして挙げられています。
試験で問われること
G検定
- 移動平均が、時系列データのある時点を中心とした前後の一定期間の観測値を平均し、その時点のトレンドサイクル(データの大きな流れの成分)を推定する手法であることを説明できますか。
- 時間的に近い観測値は値も近い傾向があるため、平均を取るとランダムな変動の一部が取り除かれ、滑らかな成分が残るという理由を説明できますか。
- 5-MAでは、最初の値が1960年から1964年の5つの観測値の平均、2番目の値が1961年から1965年の平均というように、各年を中心とした5年間の窓で平均を取っていく手順を確認しておきましょう。
- 5-MAではデータの最初の2年と最後の2年の値が求まらない理由を、中心の前後に必要な観測値の数から説明できますか。
最終更新日: 2026/09/23