不動産の賃貸
不動産所得の計算(敷金の扱い・ローン元本は経費にならない)、事業的規模の5棟10室基準、住宅家賃の消費税非課税を説明できるようになります。
ねらい
不動産を貸して得る収入の税金を学びます。このレッスンを終えると、不動産所得の収入と必要経費の線引き、事業的規模(5棟10室基準)の意味、貸付けと消費税の関係を説明できるようになります。
ストーリー
藤田さんの叔父は、相続した土地にアパートを建てて賃貸経営を始めました。「家賃収入から何を引けるのか。ローンの返済は経費になるのか。敷金はどう扱うのか」。確定申告を前に、疑問が次々わいてきます。
不動産所得の範囲
土地や建物などの貸付けによる所得は、不動産所得に分類されます(第4章で学んだ10種類の所得のひとつです)。アパート経営をどれだけ大規模に行っていても、貸付けによる所得は事業所得ではなく不動産所得です。
収入金額の計算
家賃・地代・礼金・更新料などが収入金額になります。注意したいのが敷金・保証金の扱いです。
- 退去時に返還する部分は預り金であり、収入にはなりません。
- 返還を要しない部分(敷引きなど)は、返還しないことが確定した時点で収入金額に算入します。
必要経費の線引き
不動産所得の計算では、貸付けのための支出を必要経費にできます。
| 経費になるもの | 経費にならないもの |
|---|---|
| 固定資産税・都市計画税、損害保険料、修繕費、減価償却費、管理費、借入金の利子 | 借入金の元本返済額、所得税・住民税、生計を一にする親族に支払う家賃 |
注意
最頻出は借入金の扱いです。アパートローンの返済額のうち、利子の部分は必要経費になりますが、元本の返済部分は経費になりません。元本の返済は借金が減るだけで、費用の支出ではないからです。
事業的規模(5棟10室基準)
貸付けが事業的規模かどうかは、社会通念で判断されますが、実務上はおおむね独立した家屋なら5棟以上、アパートなどの部屋なら10室以上の貸付けが事業的規模の目安とされます(5棟10室基準)。
事業的規模になっても所得の分類は不動産所得のままですが、青色申告特別控除の最高額(65万円・55万円)の適用や青色事業専従者給与の必要経費算入など、税務上の取扱いが有利になります。事業的規模でない場合の青色申告特別控除は10万円です。
不動産の貸付けと消費税
貸付けの内容によって、消費税の課税・非課税が分かれます。
| 取引 | 消費税 |
|---|---|
| 住宅の貸付け(貸付期間1か月以上) | 非課税 |
| 事務所・店舗など事業用建物の貸付け | 課税 |
| 土地の譲渡・貸付け(1か月以上) | 非課税 |
ポイント
「住まいの家賃に消費税はかからない・オフィスの家賃にはかかる」という対比で覚えます。
借地権の税務
土地を貸して建物を建てさせる借地権の設定では、地代のほかに一時金として権利金を受け取ることがあります。受け取った権利金は原則として不動産所得ですが、土地の価額に比べて高額な権利金(更地価額の2分の1を超えるようなもの)は、土地の一部を譲渡したものとして譲渡所得の扱いになります。3級では、「借地権の一時金には所得区分の論点がある」という概略を押さえれば十分です。
例題
次の記述が適切か、不適切かを考えてみましょう。
賃貸アパートの取得のために借り入れたローンの返済額は、利子・元本のいずれの部分も、不動産所得の計算上、必要経費に算入できる。
答え合わせ
不適切です。必要経費に算入できるのは利子の部分だけで、元本の返済部分は経費になりません。「ローン返済額がまるごと経費になる」という誤解を突く、最頻出のひっかけです。
応用
消費税の課否を判定してみましょう。
叔父さんのアパート(居住用・賃貸期間2年)の家賃と、1階に併設したテナント店舗の家賃では、消費税の扱いはどう違うか。
答え合わせ
居住用アパートの家賃(貸付期間1か月以上の住宅の貸付け)は非課税で、テナント店舗の家賃(事業用建物の貸付け)は課税されます。同じ建物でも、住まいとして貸すか事業用として貸すかで消費税の扱いが変わります。土地の貸付けが非課税である点もあわせて覚えましょう。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 賃貸不動産のローン元本返済と必要経費に関する正誤判定解く
- 消費税が課される不動産の貸付けの選択解く
- 相続税路線価の公示価格に対する水準の選択解く
- 不動産登記の公信力に関する正誤判定解く
- 長期譲渡所得となる所有期間の選択解く