贈与と法律
贈与契約の成立と解除のルール、定期贈与・負担付贈与・死因贈与という贈与の種類、親族の範囲と扶養義務を判断できるようになります。
ねらい
相続・事業承継の章の入口として、財産をただで渡す約束である贈与の法律関係を学びます。このレッスンを終えると、贈与契約がいつ成立していつ解除できるかが分かり、定期贈与・負担付贈与・死因贈与という3つの変化形を区別でき、民法の親族の範囲を判断できるようになります。
ストーリー
祖父の代からの土地を持つ野口さんは、長男に「この土地はいずれお前にやる」と口約束をしました。「口約束でも贈与は成立するのか。気が変わったら取り消せるのか。自分が死んだら渡すという約束なら、何が違うのか」。贈与は身近な行為ですが、約束の仕方と渡し方で、法律上の扱いも税金も変わります。
贈与契約の成立と解除
贈与は、当事者の一方(贈与者)が財産を無償で与える意思を示し、相手方(受贈者)が受諾することで成立する契約です。両者の合意だけで成立する諾成(だくせい)契約であり、書面がなくても口頭の約束で成立します。
ただし、書面によらない贈与には特別なルールがあります。
ポイント
書面によらない贈与は、各当事者がいつでも解除できます。ただし、すでに履行の終わった部分は解除できません。口約束の贈与は「渡すまでは撤回できるが、渡してしまったら戻せない」と整理します。書面による贈与は、履行前でも原則として一方的には解除できません。
贈与の種類
基本形の単純贈与のほかに、3つの変化形があります。
| 種類 | 内容 | 押さえるべき点 |
|---|---|---|
| 定期贈与 | 「毎年100万円ずつ10年間」のように定期の給付を目的とする贈与 | 特約がない限り、贈与者または受贈者の死亡により効力を失う |
| 負担付贈与 | 受贈者に一定の義務(ローンの引継ぎなど)を負わせる贈与 | 双務契約の規定が準用され、贈与者は負担の限度で売主と同様の担保責任を負う。受贈者が負担を履行しないときは解除できる |
| 死因贈与 | 「私が死んだらこの土地を与える」という、贈与者の死亡によって効力が生じる贈与 | 遺贈(遺言による財産処分)の規定が準用される。課税上は贈与税ではなく相続税の対象になる |
死因贈与と遺贈は、死亡を機に財産が移る点で似ていますが、死因贈与は受贈者との契約(合意が必要)、遺贈は遺言による単独行為という違いがあります。
注意
死因贈与は名前に「贈与」と付きますが、課税されるのは贈与税ではなく相続税です。死亡を機に財産が移る点で遺贈と同じ扱いになるためで、生前に財産が移る通常の贈与(贈与税)と混同しないようにします。
親族の範囲と扶養
民法上の親族は、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族です。血族は血のつながりのある親族(養子縁組による法定血族を含む)、姻族は配偶者の血族などをいいます。親等は世代の数で数え、父母・子は1親等、祖父母・孫・兄弟姉妹は2親等、おじ・おば・甥・姪は3親等です。
婚姻により配偶者の血族との間に姻族関係が生じ、離婚により終了します。離婚の際の財産分与は、婚姻中に築いた財産の清算などの性格を持ち、原則として贈与にはあたりません(贈与と税金のレッスンであらためて扱います)。
互いに扶養する義務を負うのは、直系血族と兄弟姉妹です。家庭裁判所は、特別の事情があるときは、3親等内の親族にも扶養義務を負わせることができます。扶養義務者からの生活費・教育費の贈与が非課税とされることに、この扶養の考え方がつながっています。
例題
次の記述が適切か、不適切かを考えてみましょう。
書面によらない贈与契約は、各当事者が解除することができるが、すでに履行が終わった部分については解除することができない。
答え合わせ
適切です。書面によらない(口頭の)贈与は、贈与者・受贈者のどちらからでも解除できますが、すでに履行の終わった部分は解除できません。たとえば「300万円あげる」という口約束のうち100万円をすでに渡していれば、渡した100万円を取り戻すことはできず、残りの200万円の約束は解除できます。書面による贈与であれば、履行前でも一方的な解除は原則としてできません。「口約束は渡すまで、書面は約束の時から」という拘束力の違いが、この論点の核心です。
応用
もう一問、贈与の種類と課税の対応を考えてみましょう。
Aさんは、長男との間で「Aさんが死亡したときに、Aさん所有の土地を長男に与える」という契約を結んだ。この契約は何と呼ばれ、Aさんの死亡により長男が土地を取得した場合、長男にはどの税金が課されるか。
答え合わせ
死因贈与と呼ばれ、長男には贈与税ではなく相続税が課されます。死因贈与は、贈与者の死亡によって効力が生じる贈与契約で、法律上は遺贈の規定が準用され、課税上も遺贈と同じく相続税の対象とされます。「贈与」という名前から贈与税と考えるのが典型的な誤りです。生前に財産が移る通常の贈与は贈与税、死亡を機に移る死因贈与・遺贈は相続税、という「財産がいつ移るか」に着目した課税の切り分けを押さえましょう。なお、死因贈与は契約なので受贈者の合意が必要であり、一方的に書ける遺言(遺贈)との違いも問われます。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 借地権を設定して貸している土地の評価解く
- 貸付事業用宅地等の限度面積と減額割合解く
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