不動産の証券化
不動産証券化の仕組みとJ-REITの特徴を理解し、DCF法・NPV法・IRR法による投資判断と、借入金併用によるレバレッジ効果を計算できるようになります。
ねらい
不動産を小口の証券に変えて投資する仕組みを学びます。このレッスンを終えると、証券化の意義とJ-REITの特徴が分かり、DCF法・NPV法・IRR法という投資判断の手法を使い分けられるようになり、借入金を併用したときのレバレッジ効果を計算で確かめられるようになります。
ストーリー
不動産投資に興味のある内海さんは、実物のアパート経営には資金も手間も足りないと感じていました。証券会社の画面には、数万円から買えるJ-REITが並んでいます。「不動産に投資しているのに、株のように売買できるのはなぜか」。その答えが証券化です。大きくて動かせない不動産が、小さくて流通する証券に変わる仕組みを見ていきましょう。
不動産の証券化
証券化は、不動産の生む収益を裏付けとして証券を発行し、多くの投資家から資金を集める仕組みです。不動産を保有する企業にとっては資産を切り離して資金を調達する手段(流動化)になり、投資家にとっては少額から不動産の収益に投資する道が開けます。
制度の枠組みとして、資産の流動化に関する法律にもとづく特定目的会社(SPC・TMK)を使う方法と、投資信託及び投資法人に関する法律にもとづく投資法人を使う方法があります。後者の代表が、証券取引所に上場された不動産投資法人、いわゆるJ-REITです。
J-REITの特徴は次のとおりです。
- 投資家から集めた資金でオフィスビル・商業施設・住宅などに投資し、賃料収入等を分配します。
- 上場されているため、株式と同じように取引時間中の市場価格で売買でき、少額から投資できます。
- 分配金は配当所得になりますが、配当控除は適用されません。投資法人は利益の大部分を分配することで法人税が実質的に課されない仕組みであり、二重課税の調整が不要なためです。
不動産特定共同事業法にもとづき、複数の投資家が不動産事業に小口で出資する商品もあります。
ポイント
J-REITの分配金は配当所得に区分されますが、配当控除は適用されません。投資法人が利益の大部分を分配して法人段階で実質的に課税されないため、二重課税を調整する配当控除の対象外となる点が試験で問われます。
投資判断の手法
証券化された不動産も実物の不動産も、投資判断の道具は共通です。お金の価値が時間で変わる(現在価値)という考え方が土台になります。
- DCF法: 保有期間中の各年の純収益と、期間末の売却価格(復帰価格)を期待収益率で現在価値に割り引いて合計し、投資価値を求めます。収益予測の前提を確かめる調査(デューデリジェンス)が精度を左右します。
- NPV法(正味現在価値法): DCF法で求めた収益の現在価値の合計から、投資額を差し引いた正味現在価値(NPV)で判断します。NPVがプラスなら投資は有利、マイナスなら不利と判定します。
- IRR法(内部収益率法): 収益の現在価値の合計と投資額がちょうど等しくなる割引率(内部収益率・IRR)を求め、IRRが投資家の期待収益率を上回れば投資は有利と判定します。
3つの手法を並べると、判断の指標と有利と判定する基準が整理できます。
| 手法 | 判断の指標 | 有利と判定する基準 |
|---|---|---|
| DCF法 | 収益の現在価値の合計 | 将来の純収益と復帰価格を割り引いて投資価値を金額で求める |
| NPV法 | 正味現在価値(NPV) | NPVがプラスなら有利 |
| IRR法 | 内部収益率(IRR) | IRRが期待収益率を上回るなら有利 |
ポイント
NPV法は「金額」で、IRR法は「率」で答えを出しますが、どちらもDCF法で求めた現在価値を土台にしています。NPVがプラスかどうか、IRRが期待収益率を上回るかどうか、という判定基準の違いが試験で問われます。
計算例で確かめます。投資額1,000万円の物件について、将来の純収益と売却価格の現在価値の合計が1,100万円と見積もられた場合、NPVは1,100万円−1,000万円でプラス100万円となり、この投資は有利と判断できます。
借入金併用型投資(レバレッジ効果)
借入金を併用すると、自己資金に対する利回りを高められることがあります。この働きをレバレッジ効果といいます。
計算例で確かめます。総投資額1億円(自己資金5,000万円・借入金5,000万円、借入金利は年2%)の物件が、年間600万円の純収益(NOI利回り6%)を生むとします。借入金の利息は5,000万円×2%で年100万円なので、自己資金に帰属する収益は600万円−100万円で500万円です。自己資金5,000万円に対する利回りは500万円÷5,000万円で**10%**となり、全体の利回り6%を上回ります。
注意
レバレッジ効果が働くのは、投資全体の利回りが借入金利を上回っているときだけです。空室の増加などで利回りが借入金利を下回ると、レバレッジは逆に働き、自己資金の利回りは全体の利回りより悪化します。借入れは利益もリスクも拡大する道具だという両面は、必ずセットで説明します。
例題
次の記述が適切か、不適切かを考えてみましょう。
NPV法(正味現在価値法)による不動産の投資判断では、投資から得られる収益の現在価値の合計が投資額を上回る場合、すなわちNPVがプラスとなる場合に、その投資は有利と判定される。
答え合わせ
適切です。NPV法は、将来の純収益と売却価格を期待収益率で現在価値に割り引いた合計から投資額を差し引き、その正味現在価値(NPV)がプラスであれば、期待した収益率を上回る価値を生む投資として有利と判定します。マイナスなら不利です。同じ判断をIRR法で行う場合は、内部収益率(IRR)が期待収益率を上回るかどうかで判定します。NPVは金額で、IRRは率で答えを出す、という違いはありますが、どちらも「時間の価値を織り込んで投資を評価する」という同じ土台に立っています。
応用
もう一問、レバレッジ効果を計算で確かめましょう。
Aさんは、総投資額1億円(自己資金5,000万円・借入金5,000万円)で賃貸物件に投資する。物件の年間純収益は600万円(NOI利回り6%)、借入金利は年2%である。自己資金に対する利回りはいくらになるか。また、この利回りが全体の利回り6%を上回るのはなぜか。
答え合わせ
自己資金に対する利回りは10%です。借入金の利息は5,000万円×2%で年100万円、自己資金に帰属する収益は600万円−100万円で500万円となり、500万円÷5,000万円で10%です。全体の利回り6%を上回るのは、借入金部分が生む6%の収益に対して2%の利息しか払っておらず、その差の4%分が自己資金の取り分に上乗せされるためです。これがレバレッジ効果です。ただし、利回りが借入金利の2%を下回る事態になれば、同じ仕組みが逆に働いて自己資金の利回りは全体より悪化します。借入れの併用は、利回りと金利の差がプラスであることが前提条件です。
用語の確認
不動産で学んだ用語を、カードで確かめましょう。用語を見て意味を思い出し、カードを押して答え合わせをします。
表 不動産投資信託
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 返還を要する敷金の収入計上の判定解く
- 消費税が非課税となる貸付けの選択解く
- 譲渡した年の1月1日による所有期間の判定解く
- 居住用財産の特例を併用した税額の計算解く
- 土地と建設資金を出し合う有効活用手法の選択解く