不動産の有効活用
表面利回りとNOI利回りによる採算性の測り方と、等価交換方式・建設協力金方式・定期借地権方式などの有効活用の手法を資金負担と所有権の軸で比較できるようになります。
ねらい
土地を収益源に変える有効活用を学びます。このレッスンを終えると、表面利回りとNOI利回りで投資の採算性を測れるようになり、自己建設・事業受託・土地信託・等価交換・建設協力金・定期借地権という手法について、資金の負担と土地建物の所有権という軸で比較して提案できるようになります。
ストーリー
駅の近くに遊休地を持つ内山さんは、複数の不動産会社から活用の提案を受けました。「自分で建てる案、デベロッパーと組む案、土地を貸すだけの案。どれも良さそうに聞こえるが、何が違うのか」。有効活用の手法は、誰がお金を出し、誰が何を所有することになるかで整理すると、違いがはっきり見えてきます。
不動産投資の採算性
投資の採算は、利回りで測ります。2つの利回りの違いが重要です。
- 表面利回り(グロス利回り): 年間収入の合計 ÷ 投資総額 × 100。経費を無視した粗い指標です。
- NOI利回り(純利回り・ネット利回り): (年間収入の合計 − 年間の諸経費)÷ 投資総額 × 100。NOI(Net Operating Income・純収益)にもとづく実質的な指標です。
計算例で確かめます。投資総額1億円の賃貸物件で、年間の賃料収入が800万円、固定資産税や管理費などの年間経費が200万円の場合、表面利回りは800万円÷1億円で8%、NOI利回りは(800万円−200万円)÷1億円で**6%**です。広告に大きく書かれるのは表面利回りですが、投資判断に使うべきは経費を織り込んだNOI利回りです。空室の発生も収入を減らすため、満室を前提とした利回りをそのまま信じないことが実務の注意点です。
事業化の前には、市場調査や収支の見通しを検討するフィージビリティ・スタディ(事業化可能性の調査)を行い、建築計画・資金計画・テナント募集・管理の体制まで含めた事業収支計画を作ります。
有効活用の手法
代表的な手法について、資金負担と所有権の観点で比較します。まず、誰が建設資金を出すかで大きく整理すると、手法の違いが見えてきます。
| 手法 | 建設資金の負担 | 土地・建物の所有 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 自己建設方式 | 土地所有者 | 土地・建物とも土地所有者 | 収益を全部取れるが、資金と事業リスクをすべて負う |
| 事業受託方式 | 土地所有者 | 土地・建物とも土地所有者 | 事業の企画・建設・管理をデベロッパーに任せる。手間は減るが受託報酬がかかる |
| 土地信託方式 | 信託銀行が調達 | 形式上は信託銀行に移転(受益権は土地所有者) | 配当は運用実績次第で保証されない |
| 等価交換方式 | デベロッパー | 土地の一部を渡し、建物の一部(区分所有権)を取得 | 自己資金なしで建物を取得できる。土地の一部を手放す |
| 建設協力金方式 | テナントが差し入れる建設協力金 | 土地・建物とも土地所有者 | テナント(事業会社)の建てたい建物を建てる。協力金は保証金として家賃と相殺しながら返済 |
| 定期借地権方式 | 建てない(土地を貸すだけ) | 土地は所有者のまま・建物は借地人 | 資金負担なく安定した地代。収入は建物経営より小さく、長期間土地が戻らない |
ポイント
「お金を出さずに建物まで手に入る」のが等価交換方式(対価は土地の一部)、「お金を出さずに地代だけ得る」のが定期借地権方式、「テナントのお金で建てる」のが建設協力金方式です。資金負担の軽い手法ほど、得られる収益や自由度も小さくなるという対応で整理します。
注意
建設協力金方式で受け取る建設協力金は、テナントが差し入れる保証金であって収入ではありません。家賃と相殺しながら返していくお金なので、テナントが早期に退去すると返済や建物の使い道で困ることがあります。同じ「お金を出さない」手法でも、対価として土地の一部を手放す等価交換方式とは性質が異なる点に注意しましょう。
等価交換方式では、土地の譲渡について課税を繰り延べる特例(立体買換えの特例)を使える場合があります。定期借地権方式は、不動産の取引のレッスンで学んだ3類型(一般・事業用・建物譲渡特約付)を前提に設計します。
例題
次の空欄にあてはまる語句を選んでみましょう。
土地所有者が土地の全部または一部を提供し、デベロッパーが建設資金を負担してその土地に建物を建て、それぞれの出資の割合に応じて土地と建物を取得する有効活用の手法を( )という。
答え合わせ
等価交換方式です。土地所有者は土地を出し、デベロッパーは建設資金を出し、完成した建物を出資割合に応じて分け合います。土地所有者は自己資金や借入れなしで建物(の一部)を取得できる代わりに、土地の一部の所有権を手放します。事業受託方式は、資金負担が土地所有者のままで事業の実務をデベロッパーに任せる手法、建設協力金方式は、入居予定のテナントが差し入れる建設協力金で建物を建てる手法であり、誰が資金を負担するかがそれぞれ異なります。
応用
もう一問、利回りの計算で採算を確かめましょう。
Aさんは、投資総額1億円の賃貸マンション経営を検討している。年間の賃料収入は800万円、固定資産税・管理費・修繕費などの年間経費は200万円の見込みである。この投資の表面利回りとNOI利回り(純利回り)はそれぞれいくらか。
答え合わせ
表面利回りは8%、NOI利回りは6%です。表面利回りは年間収入800万円を投資総額1億円で割って8%、NOI利回りは経費を差し引いた純収益600万円(800万円−200万円)を投資総額で割って6%です。物件広告の利回りは表面利回りで示されることが多く、経費や空室を織り込むと実質の利回りはそれより低くなります。投資判断や借入返済の余力の検討にはNOI利回りを使うこと、そして満室・経費見込みという前提の数字を鵜呑みにせず自分で確かめることが、有効活用の助言の基本です。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 返還を要する敷金の収入計上の判定解く
- 消費税が非課税となる貸付けの選択解く
- 譲渡した年の1月1日による所有期間の判定解く
- 居住用財産の特例を併用した税額の計算解く
- 土地と建設資金を出し合う有効活用手法の選択解く