税額控除
所得控除との効き方の違いを理解し、配当控除と住宅借入金等特別控除の要件を判断できるようになり、給与所得者の所得税を通しで計算できるようになります。
ねらい
算出した税額から直接差し引く税額控除を学びます。このレッスンを終えると、所得控除と税額控除の効き方の違いが説明でき、配当控除と住宅借入金等特別控除の要件を判断できるようになります。仕上げに、これまでのレッスンの知識をつないで、給与所得者の所得税を通しで計算します。
ストーリー
住宅を購入した石川さんは、「住宅ローン控除で税金が戻る」と聞いて確定申告の準備を始めました。「生命保険料控除と同じようなものだろう」と思っていましたが、調べると効き方がまるで違います。生命保険料控除は税率を掛ける前の所得から引くのに対し、住宅ローン控除は計算し終えた税額そのものから引くのです。この違いが、節税の効果の大きさを分けます。
所得控除と税額控除の違い
2つの控除は、差し引く場所が異なります。
- 所得控除: 税率を掛ける前の所得から差し引きます。節税効果は「控除額×その人の税率」です。同じ38万円の控除でも、税率5%の人は1万9,000円、税率33%の人は12万5,400円の税額減となり、効果は税率で変わります。
- 税額控除: 税率を掛けた後の税額からそのまま差し引きます。控除額10万円なら、誰でも税額が10万円減ります。
差し引く場所と効き方を並べると、違いがはっきりします。
| 区分 | 差し引く場所 | 節税効果 |
|---|---|---|
| 所得控除 | 税率を掛ける前の所得 | 控除額×その人の税率 |
| 税額控除 | 税率を掛けた後の税額 | 控除額がそのまま税額減 |
ポイント
所得控除の節税効果は税率次第、税額控除は控除額がそのまま税額減。同じ金額なら税額控除のほうが効果は大きくなります。この効き方の違いは、2級で繰り返し問われる考え方です。
配当控除
国内株式の配当は、法人税を課された後の利益から支払われるため、受け取った個人に所得税を課すと二重課税になります。この調整のための税額控除が配当控除です。
- 適用を受けるには、配当所得を総合課税で確定申告する必要があります。申告分離課税や申告不要を選んだ配当には適用されません。
- 控除額は、課税総所得金額等が1,000万円以下の部分については配当所得の金額の10%(証券投資信託の収益分配金に係る部分は5%)、1,000万円を超える部分については5%(同2.5%)です。
注意
配当控除が使えるのは、配当所得を総合課税で申告したときだけです。申告分離課税や申告不要を選んだ配当には適用されません。課税方式の選択と配当控除の可否はセットで問われるので、どの方式を選んだかを先に確かめましょう。
住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)
住宅ローンを利用して住宅を取得した場合の税額控除で、年末のローン残高に控除率を掛けた額について、一定期間にわたり毎年の所得税額から控除します。主な適用要件は次のとおりです。
- 取得の日から6か月以内に居住を開始し、控除を受ける年の年末まで住み続けていること。
- 控除を受ける年分の合計所得金額が2,000万円以下であること。
- 住宅の床面積が50平方メートル以上で、2分の1以上が自己の居住用であること。一定の新築住宅は、合計所得金額1,000万円以下の年に限り40平方メートル以上50平方メートル未満でも対象になります。
- 返済期間10年以上の住宅ローンであること。
- 入居した年とその前2年・後3年の計6年間に、居住用財産の3,000万円特別控除など一定の譲渡の特例を受けていないこと。
控除額の枠組みは、年末残高に控除率を掛け、住宅の環境性能などに応じた借入限度額を上限とする形です。入居した年により限度額や控除期間が異なるため、実際の適用では入居年の制度を確かめます。給与所得者は、最初の年に確定申告をすれば、2年目以降は年末調整で控除を受けられます。所得税から引き切れない額は、一定の範囲で翌年度の住民税から控除されます。
外国税額控除
外国で生じた所得に外国の税金と日本の所得税が二重に課された場合に、その調整のため外国で納めた税額を一定の限度で控除する仕組みです。
給与所得者の所得税の通し計算
この章で学んだ流れについて、ひとつの事例でつなぎます。実技試験の定番の形式です。
会社員のAさん(45歳)の今年のデータは次のとおりです。給与収入600万円。社会保険料90万円を給与から控除。新契約の生命保険に年間10万円の保険料を支払っています(一般の生命保険料控除で上限の4万円を控除)。生計を一にする妻(合計所得金額40万円)がいます。
- 給与所得の計算: 給与所得控除額は600万円×20%+44万円で164万円。給与所得は600万円−164万円で436万円です。
- 所得控除の合計: 社会保険料控除90万円、生命保険料控除4万円、配偶者控除38万円(妻の所得58万円以下・本人の所得900万円以下)、基礎控除68万円(Aさんの合計所得金額436万円は336万円超489万円以下の区分)。合計200万円です。
- 課税総所得金額: 436万円−200万円で236万円です。
- 税額の計算: 速算表の195万円以上330万円未満の区分を使い、236万円×10%−9万7,500円で13万8,500円です。
- これに復興特別所得税(2.1%)が加わり、源泉徴収された税額との差額を年末調整または確定申告で精算します。
例題
次の記述が適切か、不適切かを考えてみましょう。
所得控除と税額控除を比べた場合、同じ金額であれば、適用される税率の高低にかかわらず、税額控除のほうが所得税の負担を減らす効果が大きいか、または等しい。
答え合わせ
適切です。税額控除は算出された税額からそのまま差し引かれるため、控除額がそのまま税負担の減少になります。所得控除は税率を掛ける前の所得から差し引くため、負担の減少は控除額にその人の税率を掛けた額にとどまります。税率は最高でも45%なので、同じ金額なら税額控除の効果が所得控除を下回ることはありません。「どこから引くか」で効果が変わるという整理が、2つの控除を区別する軸です。
応用
もう一問、配当控除の適用を考えてみましょう。
Aさん(課税総所得金額等600万円)は、国内上場株式の配当20万円を受け取った。配当控除の適用を受ける場合に選ぶべき課税方式と、そのときの配当控除の額はいくらか。
答え合わせ
総合課税を選び、配当控除の額は2万円です。配当控除は、配当所得を総合課税で確定申告した場合にだけ適用されます。課税総所得金額等が1,000万円以下なので、控除率は配当所得の10%であり、20万円×10%で2万円が所得税額から直接差し引かれます。申告分離課税を選ぶと譲渡損失との損益通算はできますが配当控除は使えず、申告不要では源泉徴収で課税が完結してどちらも使えません。配当控除を取りにいくなら総合課税、という金融商品と税金のレッスンで学んだ整理が、税額控除の側から裏づけられます。
分からなかった点・気になった点
読み込み中です。
この章の問題を解く
章のまとめへ- 法人税の損金に算入される税金の選択解く
- 赤字法人の均等割の納付義務の判定解く
- 損金の額に算入される役員給与の選択解く
- 中小法人の年800万円以下の部分の税率の選択解く
- 届出をしなかった場合の法定償却方法の選択解く