所得税の申告と納付
源泉徴収と年末調整の仕組み、確定申告が必要になる場合、青色申告の要件と特典を判断できるようになります。
ねらい
計算した所得税について、実際に申告して納める手続きを学びます。このレッスンを終えると、源泉徴収と年末調整で課税が完結する仕組みが分かり、給与所得者でも確定申告が必要になる場合を判定でき、青色申告の要件と3つの特典を使いこなせるようになります。
ストーリー
会社員の三宅さんは、これまで税金の手続きを意識したことがありませんでした。ところが今年は、副業の収入が増え、住宅も購入しました。「会社が全部やってくれるはずでは」。給与所得者の多くは年末調整で課税が完結しますが、一定の場合には自分で確定申告をする必要があります。その線引きを知らないと、受けられる控除を逃したり、申告漏れになったりします。
源泉徴収と年末調整
給与や利子・配当・報酬などの支払者は、支払いの際に所得税を天引きして国に納めます。この仕組みを源泉徴収といい、天引きする義務を負う支払者を源泉徴収義務者といいます。
給与については、毎月の源泉徴収はあくまで概算です。勤務先は、その年最後の給与の支払い時に、扶養控除等申告書や保険料控除申告書にもとづいて1年分の正しい税額を計算し直し、過不足を精算します。これが年末調整です。年末調整により、多くの給与所得者は確定申告をせずに課税が完結します。勤務先が交付する源泉徴収票には、支払金額・給与所得控除後の金額・所得控除の額の合計額・源泉徴収税額が記載され、この4つの数字で所得税計算の流れを読み取れます。
ただし、医療費控除・寄附金控除・雑損控除の3つは年末調整では処理されず、適用を受けるには確定申告が必要です。住宅ローン控除は、最初の年だけ確定申告が必要で、2年目以降は年末調整で受けられます。
年末調整で受けられる控除と、確定申告をしないと受けられない控除は、線引きが試験でよく問われます。
| 手続き | 対象となる控除の例 |
|---|---|
| 年末調整で受けられる | 社会保険料控除・生命保険料控除・配偶者控除・扶養控除、住宅ローン控除の2年目以降 |
| 確定申告が必要 | 医療費控除・寄附金控除・雑損控除、住宅ローン控除の初年度 |
ポイント
年末調整で完結しない控除は「医療費控除・寄附金控除・雑損控除」の3つと、住宅ローン控除の初年度です。この場合は給与所得者でも自分で確定申告をする必要があります。
確定申告
確定申告は、1年間の所得と税額を計算して申告する手続きで、原則として翌年の2月16日から3月15日までに行い、納付の期限も3月15日です。
給与所得者でも、次の場合には確定申告が必要です。
- 給与の収入金額が2,000万円を超える場合(年末調整の対象になりません)。
- 給与以外の所得(副業の雑所得など)の合計が20万円を超える場合。
- 2か所以上から給与を受けている場合(一定の場合を除きます)。
注意
「給与以外の所得20万円以下なら申告不要」のルールは、所得税の確定申告についての特例です。住民税にはこの特例がないため、20万円以下でも住民税の申告は必要になります。また、医療費控除などを受けるために確定申告をする場合は、20万円以下の所得もあわせて申告しなければなりません。
申告後に誤りに気づいた場合、税額を少なく申告していたときは修正申告を行い、多く申告していたときは更正の請求(原則として法定申告期限から5年以内)を行います。納税が遅れると延滞税などが課されます。
青色申告
不動産所得・事業所得・山林所得のある人は、税務署長の承認を受けて青色申告ができます。日々の取引を帳簿に記録し、保存することが条件で、その見返りとして税制上の特典が与えられます。
適用を受けるには、青色申告をしようとする年の3月15日まで(1月16日以後に開業した場合は開業から2か月以内)に、承認申請書を税務署長に提出します。
青色申告の主な特典は3つです。
| 特典 | 内容 |
|---|---|
| 青色申告特別控除 | 事業的規模の不動産所得または事業所得について、正規の簿記(複式簿記)で記帳し、貸借対照表と損益計算書を添付して期限内に申告すると最高55万円。さらにe-Taxによる申告または優良な電子帳簿保存を行うと最高65万円。それ以外は最高10万円 |
| 青色事業専従者給与 | 生計を一にする配偶者などの親族への給与について、届出の範囲内で必要経費にできる |
| 純損失の繰越控除・繰戻し還付 | 損益通算で引き切れない純損失を翌年以後3年間繰り越し、または前年に繰り戻して還付を受けられる |
青色事業専従者給与を受け取る配偶者は、配偶者控除の対象にはなれません。給与を経費にする方法と配偶者控除のどちらが有利かは、金額次第で判断が分かれます。
例題
次の記述が適切か、不適切かを考えてみましょう。
年末調整を受けた給与所得者は、医療費控除の適用を受ける場合であっても、確定申告をする必要はない。
答え合わせ
不適切です。医療費控除・寄附金控除・雑損控除の3つの所得控除は、年末調整では処理できません。適用を受けるには、給与所得者であっても確定申告が必要です。年末調整で完結するのは、社会保険料控除や生命保険料控除、配偶者控除・扶養控除など勤務先に申告書を提出して処理できる控除です。「年末調整でできる控除とできない控除」の線引きは、給与所得者の実務に直結する頻出論点です。
応用
もう一問、青色申告特別控除の金額を考えてみましょう。
事業所得のある青色申告者のAさんは、複式簿記により記帳し、貸借対照表と損益計算書を添付した確定申告書を期限内に提出している。Aさんがさらにe-Taxで申告を行った場合、青色申告特別控除の最高額はいくらになるか。
答え合わせ
65万円です。複式簿記による記帳と貸借対照表・損益計算書の添付、期限内申告という要件を満たすと最高55万円の控除が受けられ、それに加えてe-Taxによる電子申告または優良な電子帳簿保存を行うと、最高65万円に引き上げられます。これらの要件を満たさない青色申告者(簡易な記帳の場合など)の控除は最高10万円です。55万円と65万円の差がe-Tax等の有無で生まれるという構造は、要件の積み上げとして整理すると覚えやすくなります。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 法人税の損金に算入される税金の選択解く
- 赤字法人の均等割の納付義務の判定解く
- 損金の額に算入される役員給与の選択解く
- 中小法人の年800万円以下の部分の税率の選択解く
- 届出をしなかった場合の法定償却方法の選択解く