個人住民税
個人住民税の前年所得課税と1月1日基準という2つの原則、均等割と所得割の構成、普通徴収と特別徴収の違いを判断できるようになります。
ねらい
所得税と並ぶ身近な税金である個人住民税を学びます。このレッスンを終えると、住民税に固有の「前年所得課税」と「1月1日基準」という2つの原則が分かり、均等割と所得割の構成、普通徴収と特別徴収という2つの納め方を判断できるようになります。
ストーリー
今年の春に会社を退職した永井さんのもとに、6月、市役所から住民税の納付書が届きました。「もう働いていないのに、なぜこんなに高い税金が来るのか」。答えは、住民税が前年の所得に課される税金だからです。所得税との時間のずれを知らないと、退職や転職の年の資金計画を誤ります。
個人住民税の基本
個人住民税は、道府県民税(都民税)と市町村民税(特別区民税)を合わせた呼び名で、地域の行政サービスの費用を住民が分担する地方税です。所得税との対比で、次の2つの原則を押さえます。
- 前年所得課税: その年度の住民税は、前年の1月から12月までの所得にもとづいて計算されます。所得税がその年の所得に課される(現年課税)のと対照的です。
- 1月1日基準: 住民税は、その年の1月1日現在の住所地の都道府県・市区町村が課税します。1月2日以降に引っ越しても、その年度分は1月1日時点の住所地に納めます。
税額の確定は、市区町村が計算して納税者に通知する賦課課税方式です。所得税のような確定申告は原則不要で、確定申告や給与支払報告書の情報をもとに市区町村が計算します。
所得税との違いを、課税の考え方の面で整理すると次のようになります。
| 観点 | 所得税(国税) | 個人住民税(地方税) |
|---|---|---|
| いつの所得に課すか | その年の所得(現年課税) | 前年の所得(前年所得課税) |
| 税率の考え方 | 超過累進税率 | 所得割は一律10%の比例 |
| 税額の確定方式 | 申告納税方式 | 賦課課税方式 |
ポイント
住民税に固有の原則は「前年所得課税」と「1月1日基準」の2つです。課税の対象になる所得は前年分、課税する場所は1月1日現在の住所地、と分けて押さえると、正しい部分と誤りの部分を混ぜた記述にも対応できます。
均等割と所得割
個人住民税は、2つの部分で構成されます。
- 均等割: 所得の多少にかかわらず、定額で負担する部分です。
- 所得割: 前年の所得に応じて負担する部分で、税率は一律10%(道府県民税4%と市町村民税6%の合計)が標準税率です。所得税の超過累進税率と違い、所得の大小にかかわらず比例的に課されます。
計算例で確かめましょう。所得控除を差し引いた後の課税所得が200万円の人の所得割は、200万円×10%で20万円です。内訳は道府県民税が200万円×4%で8万円、市町村民税が200万円×6%で12万円となり、合わせて20万円になります(税額控除を考えない場合)。所得税のように所得が増えても税率が上がることはなく、課税所得に比例して増える点が住民税の所得割の特徴です。
均等割は、所得にかかわらず定額で負担する部分です。標準税率は道府県民税1,000円・市町村民税3,000円の合計4,000円で、これに加えて令和6年度から、国税である森林環境税が年1,000円、個人住民税の均等割とあわせて市町村に賦課徴収されています。したがって、均等割と森林環境税をあわせた負担は年5,000円が標準です。
所得割の計算の流れは所得税と似ており、前年の所得から所得控除を差し引き、税率を掛けて税額控除を差し引きます。ただし、所得控除の額は所得税と異なるものが多い点に注意が必要です。たとえば基礎控除や配偶者控除・扶養控除は、住民税では所得税より小さい額が定められています。ふるさと納税の寄附金税額控除のように、住民税の側で控除される仕組みもあります。
具体的には、住民税の基礎控除は最高43万円(合計所得金額2,400万円以下の場合)で、所得税の基礎控除より小さく設定されています。一般の控除対象扶養親族の扶養控除も、所得税の38万円に対して住民税は33万円です。なお、令和7年度税制改正による給与所得控除の最低保障額の引上げ(65万円)は、住民税では令和8年度分から反映されます。
納付の方法(普通徴収と特別徴収)
住民税の納め方は2つあります。
| 方法 | 対象 | 納め方 |
|---|---|---|
| 普通徴収 | 自営業者・退職者など | 市区町村から届く納税通知書により、原則として年4回に分けて自分で納める |
| 特別徴収 | 給与所得者 | 勤務先が6月から翌年5月までの12回に分けて給与から天引きし、市区町村に納める |
給与所得者は原則として特別徴収です。退職すると特別徴収ができなくなるため、残りの税額は一括徴収されるか、普通徴収に切り替わります。冒頭の永井さんに納付書が届いたのは、この切替えによるものです。
注意
住民税は前年の所得に課されるため、退職して収入がなくなった年にも、前年の所得にもとづく住民税の負担が続きます。退職や独立の資金計画では、翌年に来る住民税を織り込んでおくことが実務の要点です。
例題
次の記述が適切か、不適切かを考えてみましょう。
個人住民税は、その年の1月1日現在の住所地の市区町村(都道府県を含む)において、その年の所得にもとづいて課税される。
答え合わせ
不適切です。課税する場所についての記述(その年の1月1日現在の住所地)は正しいのですが、課税の対象になる所得は「その年の所得」ではなく前年の所得です。個人住民税は前年所得課税であり、その年の所得に課されるのは所得税です。この問題のように、正しい部分と誤りの部分を組み合わせた記述で問われることが多いため、「いつの所得に」「どこが」課税するのかを分けて確かめる習慣をつけましょう。
応用
もう一問、納め方の違いを考えてみましょう。
会社員のAさんの個人住民税は、勤務先での特別徴収により納付されている。特別徴収では、住民税はいつからいつまでの給与で、何回に分けて徴収されるか。
答え合わせ
6月から翌年5月までの給与で、12回に分けて徴収されます。市区町村が前年の所得をもとに税額を計算し、勤務先に通知するのが5月ごろで、天引きは6月分の給与から始まります。1月からではない点が特徴です。一方、自営業者などの普通徴収は、納税通知書により原則として年4回に分けて自分で納めます。6月開始・12回の特別徴収と、年4回の普通徴収という組合せは、数字を入れ替えて問われやすいので、対で覚えましょう。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 法人税の損金に算入される税金の選択解く
- 赤字法人の均等割の納付義務の判定解く
- 損金の額に算入される役員給与の選択解く
- 中小法人の年800万円以下の部分の税率の選択解く
- 届出をしなかった場合の法定償却方法の選択解く