個人事業税
個人事業税の課税対象と事業主控除の仕組み、税額の計算、申告と納付のルールを理解し、所得税・住民税との違いを判断できるようになります。
ねらい
個人で事業を営む人に課される個人事業税を学びます。このレッスンを終えると、どのような事業が課税の対象になるかが分かり、事業主控除を使った税額の計算ができるようになり、所得税や住民税と手続きがどう違うかを判断できるようになります。
ストーリー
デザイン事務所を開業して3年目の川村さんのもとに、8月、都税事務所から個人事業税の納税通知書が届きました。「所得税も住民税も納めているのに、まだあるのか」。個人事業税は、事業を営む個人だけに課される都道府県の税金です。会社員にはない税金なので、独立や副業の本格化を考える顧客への助言では欠かせない知識になります。
個人事業税の基本
個人事業税は、個人が営む事業に対して都道府県が課税する地方税です。事業を通じて都道府県の行政サービス(道路など)を利用していることへの応分の負担、という考え方にもとづきます。
課税の対象は、地方税法に定められた法定業種の事業です。法定業種は、物品販売業・製造業・飲食店業・不動産貸付業などの第1種事業、畜産業・水産業などの第2種事業、医業・弁護士業・デザイン業などの第3種事業に区分され、区分に応じて税率が定められています。税率はおおむね**3%から5%**の範囲で、多くの業種は5%です。
不動産の貸付けは、一定の規模(都道府県が定める認定基準による事業的規模)以上で行われている場合に、不動産貸付業として課税の対象になります。
法定業種は次の3区分に分かれ、区分ごとに税率が定められています。
| 区分 | 税率 | 主な業種 |
|---|---|---|
| 第1種事業(37業種) | 5% | 物品販売業・製造業・飲食店業・不動産貸付業・運送業など |
| 第2種事業(3業種) | 4% | 畜産業・水産業・薪炭製造業 |
| 第3種事業(30業種) | 5% | 医業・弁護士業・税理士業・デザイン業など |
| 第3種事業(一部) | 3% | あんま・マッサージ・はり・きゅう・柔道整復等の医業に類する事業、装蹄師業 |
税額の計算と事業主控除
個人事業税の税額は、次の式で計算します。
個人事業税 =(事業の所得 − 事業主控除290万円)× 税率
事業の所得は、原則として所得税の事業所得(および事業的規模の不動産所得)の計算にならいますが、2つの重要な違いがあります。
- 事業主控除290万円が差し引けます。年の途中で開業・廃業した場合は月割りになります。事業の所得が290万円以下であれば、個人事業税はかかりません。
- 青色申告特別控除は適用されません。所得税で最高65万円の青色申告特別控除を受けていても、個人事業税の計算ではその控除を差し引く前の所得を使います。一方、青色申告者の純損失の繰越控除は、個人事業税でも認められます。
同じ事業の所得を出発点にしても、所得税と個人事業税では扱いが分かれます。
| 項目 | 所得税 | 個人事業税 |
|---|---|---|
| 青色申告特別控除(最高65万円) | 適用される | 適用されない |
| 事業主控除290万円 | なし | 差し引ける |
| 純損失の繰越控除 | 認められる | 認められる |
ポイント
個人事業税では「事業主控除290万円は引ける、青色申告特別控除は引けない」。所得税との違いがそのまま出題の急所になります。
計算例で確かめます。事業の所得(青色申告特別控除を差し引く前)が690万円の第1種事業(税率5%)の場合、個人事業税は(690万円−290万円)×5%で20万円です。
申告と納付
個人事業税の申告は、原則として翌年の3月15日までに都道府県に行いますが、所得税の確定申告または住民税の申告をした人は、個人事業税の申告は不要です。確定申告の情報が都道府県に共有されるためです。
税額の確定は賦課課税方式で、都道府県から送られる納税通知書により、原則として8月と11月の年2回に分けて納めます。なお、納めた個人事業税は、所得税の計算上、事業の必要経費に算入できます。
注意
個人事業税の申告が不要になるのは、所得税の確定申告か住民税の申告をしている場合です。どちらの申告もしていない人は、個人事業税の申告が必要になります。「常に申告不要」ではない点に気をつけましょう。
例題
次の記述が適切か、不適切かを考えてみましょう。
個人事業税の計算では、事業の所得から事業主控除として最高290万円を差し引くことができ、また、所得税の青色申告特別控除の適用を受けている場合には、その控除額も差し引くことができる。
答え合わせ
不適切です。前半の事業主控除290万円は正しいのですが、青色申告特別控除は個人事業税の計算では適用されません。個人事業税の事業の所得は、青色申告特別控除を差し引く前の金額で計算します。所得税で使える控除がそのまま使えるとは限らない、という税目ごとの違いがこの論点の核心です。なお、青色申告の特典のうち純損失の繰越控除は、個人事業税でも認められるという対比も、あわせて押さえておきましょう。
応用
もう一問、税額を計算してみましょう。
物品販売業(第1種事業・税率5%)を営むAさんの今年の事業の所得は、青色申告特別控除65万円を差し引く前の金額で490万円である。Aさんの個人事業税はいくらか。
答え合わせ
10万円です。個人事業税は、青色申告特別控除を差し引く前の事業の所得490万円から事業主控除290万円を差し引いた200万円に、税率5%を掛けて計算します。200万円×5%で10万円です。青色申告特別控除65万円を差し引いた425万円から計算を始めると、(425万円−290万円)×5%で6万7,500円となり誤りです。「事業主控除は引く、青色申告特別控除は引かない」という2つのルールは、計算の順序として身につけましょう。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 法人税の損金に算入される税金の選択解く
- 赤字法人の均等割の納付義務の判定解く
- 損金の額に算入される役員給与の選択解く
- 中小法人の年800万円以下の部分の税率の選択解く
- 届出をしなかった場合の法定償却方法の選択解く