法人税
法人税の所得計算の骨組みである益金と損金を理解し、役員給与の3類型・交際費の中小特例・減価償却など損金の頻出論点と、中小法人の税額計算ができるようになります。
ねらい
会社の利益に課される法人税を学びます。2級で新たに加わる分野です。このレッスンを終えると、会計の利益と税務の所得の関係が分かり、役員給与・交際費・減価償却・貸倒引当金といった損金の頻出論点を判定できるようになり、中小法人の税額を計算できるようになります。
ストーリー
部品加工会社を営む石田社長は、決算書を前に税理士に尋ねました。「利益は1,000万円なのに、税金の計算では所得が1,100万円になっている。どういうことか」。答えは、会計の「利益」と法人税の「所得」は似て非なるものだから、です。役員への賞与や接待の費用など、会計では費用でも税務では損金にならないものがあります。この差を生むルールこそ、法人税の学習の中心です。
法人税の仕組み
法人税は、法人の各事業年度の所得に課される国税です。納税義務者は株式会社などの内国法人で、公益法人等は収益事業から生じた所得にだけ課税されます。事業年度は定款などで定めた1年以内の会計期間で、納税地は原則として本店の所在地です。
申告は、事業年度終了の日の翌日から2か月以内に、確定した決算にもとづいて行います(確定決算主義)。申告納税方式であり、事業年度が6か月を超える法人には中間申告の制度があります。
税率は、普通法人で**23.2%**です。資本金1億円以下の中小法人には軽減税率があり、**所得のうち年800万円以下の部分は15%**が適用されます。
所得の金額(益金と損金)
法人税の所得は、次の式で計算します。
所得の金額 = 益金の額 − 損金の額
実務では、会計の当期純利益を出発点に、会計と税務で扱いが異なる項目を申告書(別表四)で加算・減算して所得を求めます。この調整を申告調整といいます。会計の収益・費用と税務の益金・損金は多くが一致しますが、「別段の定め」により異なる部分があり、そこが試験の論点になります。
注意
会計の「利益」と税務の「所得」は同じではありません。冒頭の石田社長の例のように、役員賞与や交際費など会計では費用でも損金にならないものを加算するため、所得が利益より大きくなることがあります。どちらの数字の話かを確かめてから加算・減算を判断しましょう。
益金の主な論点
- 受取配当等の益金不算入: 法人が受け取る配当の一定部分は、益金に算入しません。配当は支払った法人の側ですでに法人税が課された後の利益だからで、二重課税を防ぐ趣旨です。
- 法人税の還付金: 益金に算入しません。納めたときに損金にならないことと対応しています。
- 受贈益・債務免除益: 資産をただでもらった利益や借金を免除された利益は、益金に算入します。
損金の主な論点
役員給与は、次の3類型のいずれかに該当するものだけが損金に算入されます。
| 類型 | 内容 |
|---|---|
| 定期同額給与 | 1か月以下の一定期間ごとに同額を支給する給与 |
| 事前確定届出給与 | 所定の時期に確定額を支給する旨を事前に税務署へ届け出た給与 |
| 業績連動給与 | 利益などの指標に連動する一定の要件を満たす給与 |
3類型のいずれにも該当しない給与(事前の届出のない臨時の賞与など)は損金不算入です。3類型に該当しても、不相当に高額な部分は損金に算入されません。
交際費等は、原則として全額が損金不算入です。ただし、期末資本金1億円以下などの中小法人は、年800万円までの定額控除か、接待飲食費の50%のいずれか有利なほうを損金にできます。また、1人あたり1万円以下の一定の飲食費は、そもそも交際費等から除かれます。
減価償却費は、法人税では償却限度額の範囲内で損金経理した金額が損金になります(任意償却)。取得価額10万円未満の資産は全額をその期の損金にでき、20万円未満は3年間で均等に償却できます。青色申告の中小企業者等には、取得価額30万円未満の資産を年合計300万円まで即時に損金算入できる特例があります。
貸倒引当金の繰入れは、資本金1億円以下の中小法人等に限って損金算入が認められます。租税公課は、法人事業税・固定資産税・印紙税などは損金になりますが、法人税・法人住民税、罰金や延滞税は損金になりません。
ポイント
損金の判定は「会社がお金を使えば何でも損金」ではありません。役員給与は3類型、交際費は中小の800万円、貸倒引当金は中小のみ、法人税・住民税は損金不算入。この4点が学科の頻出です。
中小法人の税額の計算例
資本金3,000万円(中小法人)のA社の所得金額が1,000万円の場合の法人税額を計算します。年800万円以下の部分には15%、800万円を超える部分には23.2%を適用します。
800万円×15%+(1,000万円−800万円)×23.2%=120万円+46万4,000円=166万4,000円
所得全体に23.2%を掛けるのではなく、800万円を境に2段階で計算することが、個人の超過累進税率と同じ発想です。
例題
次の空欄にあてはまる語句を選んでみましょう。
法人が役員に支給する給与のうち、損金の額に算入されるものは( )である。
答え合わせ
定期同額給与です。損金に算入される役員給与は、定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与の3類型に限られます。事前の届出のない臨時の賞与は3類型のいずれにも該当せず損金不算入であり、3類型に該当する給与でも不相当に高額な部分は損金になりません。役員給与のルールは、役員が自分の給与を操作して法人の所得を圧縮することを防ぐ趣旨であり、「型どおりの支給だけを損金と認める」という発想で整理すると覚えやすくなります。
応用
もう一問、中小法人の法人税額を計算してみましょう。
資本金5,000万円のB社(中小法人・適用除外事業者に該当しない)の当期の所得金額は1,200万円である。年800万円以下の部分の税率を15%、800万円を超える部分の税率を23.2%とすると、B社の法人税額はいくらか。
答え合わせ
212万8,000円です。所得1,200万円を800万円で区切って2段階で計算します。800万円×15%で120万円、残りの400万円×23.2%で92万8,000円、合計212万8,000円です。1,200万円全体に23.2%を掛けた278万4,000円や、全体に15%を掛けた180万円は、どちらも段階計算を忘れた誤りです。中小法人の軽減税率は年800万円以下の部分にだけ働く、という「部分に掛かる」構造は、個人の超過累進税率と重ねて理解しておきましょう。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 法人税の損金に算入される税金の選択解く
- 赤字法人の均等割の納付義務の判定解く
- 損金の額に算入される役員給与の選択解く
- 中小法人の年800万円以下の部分の税率の選択解く
- 届出をしなかった場合の法定償却方法の選択解く