相続と税金
基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)から相続税の総額までの通し計算ができ、法定相続人の数の特別ルール、2割加算や配偶者の税額軽減を判断できるようになります。
ねらい
相続財産にかかる相続税を学びます。このレッスンを終えると、課税価格の集計から基礎控除、相続税の総額までを通しで計算できるようになり、放棄者や養子を含む法定相続人の数の特別ルール、2割加算・配偶者の税額軽減などの加算と控除を判断できるようになります。
ストーリー
母を亡くした村井さんの一家は、遺産の総額を集計して「相続税はいくらになるのか」を知りたいと考えています。「基礎控除というものがあり、それ以下なら申告も要らないと聞いた。うちは超えていそうだが、計算の手順が複雑らしい」。相続税の計算は独特の3段階方式です。順序どおりに進めば必ず答えに着きます。
課税される財産と差し引くもの
相続税の課税対象は、現金・不動産などの本来の相続財産に、みなし相続財産(死亡保険金・死亡退職金)を加え、生前贈与加算の対象財産(贈与と税金のレッスンで学んだ加算対象期間内の暦年贈与と、相続時精算課税の基礎控除後の贈与財産)を合算したものです。
そこから、次のものを差し引けます。
- 非課税財産: 相続人が受け取った死亡保険金・死亡退職金のそれぞれについて500万円×法定相続人の数まで。墓地・仏壇などの祭祀財産。業務上の死亡の弔慰金は賞与以外の給与の3年分、業務外は半年分まで。
- 債務控除: 借入金・未払いの税金などの債務と、葬式費用。ただし、香典返しの費用や墓地の購入費用(未払金)、遺言執行費用は控除できません。
債務控除で「差し引けるもの」と「差し引けないもの」の線引きは試験で頻出です。
| 区分 | 控除できる | 控除できない |
|---|---|---|
| 債務 | 借入金・未払いの税金など | 墓地の購入費用(未払金) |
| 葬式に関する費用 | 葬式費用(通夜・本葬の費用など) | 香典返しの費用・遺言執行費用 |
基礎控除と法定相続人の数
課税価格の合計額から、次の基礎控除を差し引きます。
ポイント
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数。課税価格の合計がこの範囲に収まれば、相続税はかからず、原則として申告も不要です。
ここでいう「法定相続人の数」には、税負担の操作を防ぐための特別ルールがあります。
- 相続の放棄をした人も数に含めます(放棄がなかったものとして数えます)。
- 養子は、被相続人に実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までしか数に含めません。
この「法定相続人の数」は、基礎控除だけでなく、死亡保険金・死亡退職金の非課税限度額(500万円×法定相続人の数)と相続税の総額の計算にも使われます。
動かして確かめる
配偶者・実子・放棄した人・養子の内訳を動かすと、法定相続人の数と基礎控除額がどう変わるか確かめられます。放棄者を除いてしまう典型的な誤りとの比較も表示されます。
放棄した人も、法定相続人の数には含める。
配偶者・実子・放棄した人・養子の内訳を動かすと、法定相続人の数と基礎控除額がどう変わるか確かめられます。
相続税の総額の計算(3段階方式)
相続税は、実際に誰がいくら取得したかにかかわらず、いったん法定相続分で分けたと仮定して総額を求める独特の方式で計算します。
- 課税遺産総額: 課税価格の合計額から基礎控除額を差し引きます。
- 相続税の総額: 課税遺産総額を各法定相続人が法定相続分どおりに取得したと仮定し、それぞれに相続税の速算表(10%から55%の8段階)を適用して税額を計算し、合計します。
- 各人の納付税額: 相続税の総額を、実際の取得割合に応じて各人に割り振り、各人ごとの加算・控除を反映します。
通し計算の例で確かめます。相続人は妻と子2人、課税価格の合計額は2億円とします。
- 基礎控除は3,000万円+600万円×3人で4,800万円。課税遺産総額は2億円−4,800万円で1億5,200万円です。
- 法定相続分で分けたと仮定すると、妻は2分の1の7,600万円、子は各4分の1の3,800万円です。速算表を適用して、妻分は7,600万円×30%−700万円で1,580万円、子分は各3,800万円×20%−200万円で560万円。相続税の総額は1,580万円+560万円×2で2,700万円です。
- この総額を、実際の取得割合で各人に配分します。
各人の税額の加算と控除
- 2割加算: 配偶者および1親等の血族以外の人(1親等の血族は子・父母で、子の代襲相続人を含む。以外の例は兄弟姉妹・甥姪・代襲相続人でない孫養子など)の税額は、2割増しになります。
- 配偶者の税額軽減: 配偶者が実際に取得した正味の遺産額が、1億6,000万円か配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い金額までは、配偶者に相続税がかかりません。申告期限までに分割されていない財産は対象外です(分割見込書を提出して3年以内に分割すれば適用できます)。適用により税額がゼロでも、申告は必要です。
- そのほか、贈与税額控除、未成年者控除、障害者控除、10年以内に相続が続いた場合の相次相続控除があります。未成年者控除は「満18歳になるまでの年数×10万円」、障害者控除は「満85歳になるまでの年数×10万円(特別障害者は20万円)」で計算します(いずれも年数の1年未満は切り上げ)。
注意
2割加算は「配偶者と1親等の血族以外」が対象です。同じ孫でも、子の代襲相続人となった孫は1親等の血族(子)として扱われ2割加算されませんが、代襲相続人でない孫を養子にした場合は2割加算の対象になります。孫という言葉だけで判断せず、代襲相続人かどうかを確かめましょう。
申告と納付
相続税の申告と納付の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内で、申告先は被相続人の住所地の税務署です。金銭で一時に納められない場合は延納(担保・利子税)を、延納でも困難な場合は物納を申請できます。物納は相続税だけに認められた納付方法です。
例題
次の空欄にあてはまる金額を計算してみましょう。
被相続人Aの法定相続人は、妻B・長男C・長女Dの3人であり、このうち長女Dは相続の放棄をした。Aの相続に係る相続税の基礎控除額は( )である。
答え合わせ
4,800万円です。基礎控除額は3,000万円+600万円×法定相続人の数で計算し、この「法定相続人の数」は相続の放棄がなかったものとした場合の人数を使います。放棄をした長女Dも数に含めるため、法定相続人の数は3人となり、3,000万円+600万円×3人で4,800万円です。放棄者を除いた2人で計算して4,200万円とするのが典型的な誤りです。放棄によって基礎控除が減る(税負担が増える)ことのないよう、放棄がなかったものとして数えるというルールの趣旨まで理解しておきましょう。
応用
もう一問、相続税の総額まで通しで計算してみましょう。
被相続人Aの相続人は妻Bと子C・Dの3人で、課税価格の合計額は2億円である。相続税の総額はいくらか。速算表では、3,000万円超5,000万円以下の税率は20%(控除額200万円)、5,000万円超1億円以下の税率は30%(控除額700万円)である。
答え合わせ
2,700万円です。手順どおりに計算します。基礎控除は3,000万円+600万円×3人で4,800万円、課税遺産総額は2億円−4,800万円で1億5,200万円です。次に法定相続分で分けたと仮定します。妻Bは2分の1の7,600万円、子C・Dは各4分の1の3,800万円です。速算表を適用すると、妻分は7,600万円×30%−700万円で1,580万円、子分は各3,800万円×20%−200万円で560万円となり、総額は1,580万円+560万円+560万円で2,700万円です。実際の分け方に関係なく、いったん法定相続分で仮定して総額を出すという3段階方式の第2段階までを、正確に踏めるようにしましょう。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 借地権を設定して貸している土地の評価解く
- 貸付事業用宅地等の限度面積と減額割合解く
- 路線価方式で宅地の自用地評価額を求める解く
- 自分の土地に貸家を建てた敷地の評価解く
- 限度面積を超える自宅敷地の小規模宅地等の特例解く