相続財産の評価(不動産以外)
上場株式の4つの価額による評価と、取引相場のない株式の3方式(類似業種比準・純資産価額・配当還元)をどの場面で使うかの場合分けで判断できるようになります。
ねらい
相続税・贈与税を計算する前提となる財産の評価のうち、不動産以外の財産を学びます。このレッスンを終えると、上場株式の4つの価額による評価ができ、取引相場のない株式について、誰が取得するか・どんな会社かで評価方式を場合分けできるようになります。
ストーリー
亡くなった父の遺産には、上場株式と、父が経営していた会社の株式(非上場)がありました。相続人の岸さんは戸惑います。「上場株式は株価があるから分かるが、非上場の株には値段がついていない。どう評価するのか」。財産評価は相続税計算の土台であり、とりわけ取引相場のない株式の評価は、事業承継にも直結する2級の山場です。
金融資産の評価
- 預貯金: 預入残高に、課税時期までの既経過利子(源泉徴収後)を加えた金額で評価します。普通預金など利子が少額のものは残高そのままで差し支えありません。
- 生命保険契約に関する権利: まだ保険事故が起きていない契約を承継した場合、解約返戻金相当額で評価します(リスク管理の章で学んだ論点の評価面です)。
- 公社債・投資信託: 種類に応じ、市場価格や解約請求できる金額をもとに評価します。
- ゴルフ会員権: 取引相場のあるものは、原則として**通常の取引価格の70%**で評価します。
計算例で確かめましょう。課税時期の通常の取引価格が500万円のゴルフ会員権(取引相場あり)は、500万円×70%で350万円と評価します。取引価格そのままではなく、7割に評価する点が問われます。
上場株式の評価
上場株式は、次の4つの価額のうち最も低い金額で評価します。株価の一時的な変動の影響を和らげるためです。
- 課税時期(相続開始日・贈与日)の終値
- 課税時期の属する月の毎日の終値の平均額
- その前月の毎日の終値の平均額
- その前々月の毎日の終値の平均額
取引相場のない株式の評価
非上場会社の株式は、誰が取得するかでまず評価の入口が分かれ、原則的評価では会社の規模で方式が分かれます。場合分けの全体像は次のとおりです。
| 取得する人 | 会社の状況 | 評価方式 |
|---|---|---|
| 同族株主等(経営支配力のある株主) | 大会社 | ==類似業種比準方式==(原則) |
| 同族株主等 | 中会社 | 類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式 |
| 同族株主等 | 小会社 | ==純資産価額方式==(原則) |
| 同族株主等 | 特定の評価会社(株式等保有特定会社・土地保有特定会社・開業後3年未満の会社など) | 原則として純資産価額方式 |
| 同族株主等以外(経営に関与しない少数株主) | 会社の規模を問わず | 配当還元方式 |
3つの方式の考え方を言葉で押さえます。
- 類似業種比準方式: 事業内容が似た上場会社の株価をもとに、配当・利益・純資産の3つの要素を比べて評価します。上場会社との比準なので、会社の業績が良いほど評価が上がります。
- 純資産価額方式: 会社を解散させたと仮定し、相続税評価額ベースの純資産(含み益に対する法人税等相当額を控除)を株式数で割って評価します。資産の蓄積が大きい会社ほど評価が上がります。
- 配当還元方式: 受け取る配当だけに着目して評価する簡便な方式です。経営を支配できない少数株主にとって、株式の価値は配当を受け取ることにしかないためで、原則的評価より低い評価になるのが通常です。
ポイント
「誰が取得するか」が第一の分かれ目です。同族株主等なら原則的評価(会社規模で類似業種比準・併用・純資産)、同族株主等以外なら配当還元方式。この場合分けの型は、事業承継対策のレッスンでの評価引下げの議論の土台になります。
注意
類似業種比準方式で似た上場会社と比べる要素は、配当・利益・純資産の3つです。売上高は含まれません。3要素を問う出題で売上高を選ぶのが典型的な誤りなので、配当還元方式が着目する「配当」だけとあわせて区別しておきましょう。
例題
次の記述が適切か、不適切かを考えてみましょう。
相続により取得した上場株式は、課税時期の終値と、課税時期の属する月以前3か月間の毎日の終値の各月平均額とのうち、最も低い価額で評価することができる。
答え合わせ
適切です。上場株式は、課税時期の終値、課税時期の属する月・前月・前々月の毎日の終値の月平均額という4つの価額のうち、最も低い金額で評価します。相続の開始はいつ起こるか分からず、たまたま株価が高い日に当たった場合の不利益を和らげるために、3か月さかのぼった平均額まで選択肢に含める仕組みです。課税時期の終値だけで評価すると考えるのが典型的な誤りで、「4つのうち最低」という選び方まで正確に覚えましょう。
応用
もう一問、取引相場のない株式の場合分けを確かめましょう。
非上場のX社(同族会社)の株式を、次の2人が相続により取得した。1人はX社を経営する同族株主の長男A、もう1人はX社の経営にまったく関与しない少数株主の遠縁Bである。それぞれの株式は、原則としてどの方式で評価されるか(X社は大会社で、特定の評価会社には該当しない)。
答え合わせ
長男Aの株式は類似業種比準方式(原則的評価方式)で、遠縁Bの株式は配当還元方式で評価されます。まず「誰が取得するか」で入口が分かれます。経営支配力のある同族株主等が取得する株式は原則的評価となり、X社は大会社なので類似業種比準方式が原則です。一方、経営に関与しない同族株主等以外の株主にとって、株式の価値は配当を受け取ることにあるため、簡便で低めの配当還元方式で評価されます。同じ会社の同じ株式でも、取得する人の立場で評価額が変わる、という点がこの論点の最大の特徴です。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 借地権を設定して貸している土地の評価解く
- 貸付事業用宅地等の限度面積と減額割合解く
- 路線価方式で宅地の自用地評価額を求める解く
- 自分の土地に貸家を建てた敷地の評価解く
- 限度面積を超える自宅敷地の小規模宅地等の特例解く