消費税
非課税と不課税の区別、基準期間1,000万円による納税義務の判定、原則課税と簡易課税の計算、インボイス制度の骨格を判断できるようになります。
ねらい
事業者が納める消費税の仕組みを学びます。このレッスンを終えると、課税・非課税・不課税の区別ができ、基準期間の課税売上高1,000万円による納税義務の判定と、原則課税・簡易課税それぞれの納付税額の計算ができるようになり、インボイス制度が判定と計算に与える影響を判断できるようになります。
ストーリー
フリーランス3年目の村田さんの昨年の売上は、はじめて1,000万円を超えました。「来年から消費税を納めることになると聞いた。計算はどうやるのか。取引先から求められているインボイスの登録とは何の関係があるのか」。消費税は、事業を営むすべての人に関わる税金であり、FPにとっても事業主の顧客への助言に欠かせない知識です。
消費税の仕組み
消費税は、国内で事業者が行う資産の譲渡・貸付け・役務の提供に課される間接税です。負担するのは最終的な消費者ですが、納めるのは各段階の事業者です。各事業者は、売上げで預かった消費税から仕入れで支払った消費税を差し引いて納付します。この控除を仕入税額控除といい、税が累積しない多段階課税の要になっています。税率は10%(飲食料品などの軽減税率は8%)です。
非課税と不課税
消費税がかからない取引には、2つの種類があります。
- 非課税取引: 国内の取引だが、消費になじまない、または政策的な配慮から課税しない取引です。土地の譲渡・貸付け、住宅の貸付け、預貯金の利子・保険料、社会保険医療、学校の授業料などが代表です。
- 不課税取引: そもそも課税の対象の外にある取引です。国外取引、給与、寄附金・配当金などが該当します。
土地は非課税で建物は課税、という対比は不動産分野でも重要になります。
ポイント
非課税と不課税は、どちらも消費税がかからない点は同じですが、非課税は「課税対象だが課税しない」取引、不課税は「そもそも課税対象の外」の取引という違いがあります。土地の譲渡・貸付けは非課税、給与や国外取引は不課税、という代表例で区別を押さえます。
納税義務の判定
事業者は、基準期間(個人事業者は前々年、法人は原則として前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下であれば、原則として納税義務が免除されます(免税事業者)。ただし、次の場合は基準期間の売上が1,000万円以下でも納税義務は免除されません。
- 特定期間(個人は前年の1月から6月、法人は前事業年度開始から6か月)の課税売上高が1,000万円を超える場合。この判定は、課税売上高に代えて給与等支払額で行うこともできます。
- 適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)の登録を受けている場合。
- 課税事業者選択届出書を提出している場合や、資本金1,000万円以上の新設法人の設立当初の事業年度など。
原則課税と簡易課税
納付税額の計算には、2つの方法があります。
原則課税
納付税額 = 売上げに係る消費税額 − 仕入れに係る消費税額
仕入税額控除を受けるには、原則として適格請求書(インボイス)などの保存が必要です。
簡易課税
基準期間の課税売上高が5,000万円以下の課税事業者が、事前に届出書を提出した場合に選べる方法で、仕入れの実額を集計する代わりに、売上げに係る消費税額に事業区分ごとのみなし仕入率を掛けて仕入税額とみなします。
| 事業区分 | 事業の例 | みなし仕入率 |
|---|---|---|
| 第1種事業 | 卸売業 | 90% |
| 第2種事業 | 小売業 | 80% |
| 第3種事業 | 製造業・建設業など | 70% |
| 第4種事業 | 飲食店業などその他の事業 | 60% |
| 第5種事業 | 運輸通信業・金融保険業・サービス業 | 50% |
| 第6種事業 | 不動産業 | 40% |
計算例で確かめます。小売業(第2種・みなし仕入率80%)を営む事業者の課税売上高が税抜2,000万円(売上げに係る消費税額200万円)の場合、仕入れに係る消費税額とみなされるのは200万円×80%で160万円、納付税額は200万円−160万円で40万円です。
注意
消費税には2つの1,000万円と1つの5,000万円が出てきます。納税義務を判定する基準期間の課税売上高の境目は1,000万円、簡易課税を選べる基準期間の課税売上高の上限は5,000万円です。どちらの判定を問われているかを確かめてから金額の基準を当てはめましょう。
インボイス制度
適格請求書等保存方式(インボイス制度)のもとでは、買い手が仕入税額控除を受けるために、登録を受けた適格請求書発行事業者が交付するインボイスの保存が原則として必要です。売り手がインボイスを発行するには税務署への登録が必要で、登録すると基準期間の売上が1,000万円以下でも課税事業者になります。
免税事業者からの仕入れは原則として仕入税額控除ができないため、取引先との関係で免税事業者が登録を選ぶ場面が生まれています。負担を和らげる経過措置として、免税事業者からの仕入れについて一定割合を控除できる措置や、免税事業者からインボイス発行事業者になった小規模事業者が売上税額の2割を納付税額とできる特例(2割特例)が設けられています。
仕入税額控除の経過措置は、免税事業者等からの課税仕入れについて、令和5年10月1日から令和8年9月30日までは仕入税額相当額の80%、令和8年10月1日から令和11年9月30日までは50%を控除できるものです。2割特例は、免税事業者からインボイス発行事業者になった小規模事業者が、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間について、納付税額を売上税額の2割にできる特例です。
申告と納付
課税事業者は、法人は課税期間(原則として事業年度)終了の日の翌日から2か月以内に、個人事業者は翌年3月31日までに、消費税の確定申告と納付を行います。所得税の確定申告(3月15日)と期限が異なる点に注意が必要です。
例題
次の空欄にあてはまる語句を選んでみましょう。
消費税において、非課税取引とされているものは( )である。
答え合わせ
土地の譲渡です。土地の譲渡・貸付けは、土地が消費されるものではないという考え方から、非課税取引とされています。住宅の貸付け、預貯金の利子、保険料なども非課税です。一方、建物の譲渡は課税取引であり、同じ不動産でも土地と建物で扱いが分かれます。給与や国外取引のように、そもそも課税の対象の外にある不課税取引との区別も意識しておきましょう。非課税は「対象だが課税しない」、不課税は「対象ですらない」という整理です。
応用
もう一問、簡易課税で納付税額を計算してみましょう。
小売業(第2種事業・みなし仕入率80%)を営む課税事業者のAさんの当課税期間の課税売上高は税抜2,000万円で、売上げに係る消費税額は200万円である。簡易課税制度を適用した場合の納付税額はいくらか。
答え合わせ
40万円です。簡易課税では、仕入れの実額を使わず、売上げに係る消費税額200万円にみなし仕入率80%を掛けた160万円を仕入れに係る消費税額とみなします。納付税額は200万円−160万円で40万円です。みなし仕入率は卸売業の90%から不動産業の40%まで事業区分で異なり、区分を取り違えると税額が大きく変わります。簡易課税は基準期間の課税売上高5,000万円以下で事前の届出が要件であること、実額の仕入れが多い年でも実額控除に戻れない(継続適用の縛りがある)ことも、選択の判断ではあわせて考えます。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 法人税の損金に算入される税金の選択解く
- 赤字法人の均等割の納付義務の判定解く
- 損金の額に算入される役員給与の選択解く
- 中小法人の年800万円以下の部分の税率の選択解く
- 届出をしなかった場合の法定償却方法の選択解く