ライフプラン策定上の資金計画
住宅取得・教育・リタイアメントの三大資金について、住宅ローンの返済方法と繰上げ返済、教育ローンと奨学金の違いなどを判断できるようになります。
ねらい
人生の三大資金と呼ばれる住宅資金・教育資金・老後資金の準備と借入れの方法を学びます。このレッスンを終えると、住宅ローンの金利タイプ・返済方法・繰上げ返済の仕組みが説明でき、教育ローンと奨学金の違いや、リタイアメント期の資金の備えを判断できるようになります。
ストーリー
会社員の藤井さん(32歳)は、3年後の住宅購入と、生まれたばかりの子どもの教育費、そして自分たちの老後という3つのお金の心配を抱えています。「全部いっぺんには貯められない。借りられるものは何で、どう返すのが得なのか」。大きな支出は、貯めるだけでなく、借り方と返し方の設計が計画の質を左右します。
住宅取得プランニング
住宅取得の考え方と諸費用
住宅の購入では、物件価格のほかに、税金・登記費用・ローンの事務手数料・保証料・引越し費用などの諸費用がかかります。頭金と諸費用は自己資金で準備するのが基本で、自己資金の形成には財形住宅貯蓄などが使えます。住宅取得にかかる税金や住宅借入金等特別控除は、タックスプランニングの章の税額控除を学ぶレッスンで扱います。
住宅ローンの金利タイプと返済方法
住宅ローンの金利には、完済まで金利が変わらない全期間固定金利型、一定期間だけ固定する固定金利期間選択型、市場金利に応じて見直される変動金利型があります。将来の金利上昇のリスクを誰が負うかが違いの本質で、固定型は貸し手が、変動型は借り手がリスクを負う分、当初の金利は一般に変動型のほうが低くなります。
返済方法には、次の2つがあります。
| 返済方法 | 仕組み | 特徴 |
|---|---|---|
| 元利均等返済 | 毎回の返済額(元金と利息の合計)が一定 | 返済計画を立てやすい。当初は利息の割合が大きく、元金の減りが遅い |
| 元金均等返済 | 毎回の元金部分が一定 | 当初の返済額は大きいが、返済が進むほど軽くなる |
借入額・金利・期間が同じなら、総返済額は元利均等返済のほうが多くなります。元金の減り方が遅い分、利息が多くかかるためです。
フラット35と財形住宅融資
代表的な公的な性格を持つローンとして、次の2つを押さえます。
- フラット35: 住宅金融支援機構と民間金融機関が提携する全期間固定金利のローンです。金利は金融機関ごとに異なり、融資実行時点の金利が適用されます。保証人・保証料は不要で、繰上げ返済の手数料もかかりません。
- 財形住宅融資: 財形貯蓄を続けている勤労者が使える公的融資で、5年ごとに金利を見直す5年固定金利型です。
フラット35の融資額は100万円以上(1万円単位)で、住宅の建設費・購入価額の10割まで利用できますが、融資率が9割を超える場合は9割以下の場合より借入金利が高くなります。融資額の上限は、令和7年度補正予算に伴う制度改正により、従来の8,000万円から1億2,000万円に引き上げられました。
財形住宅融資は、財形貯蓄を1年以上続けていて残高が50万円以上あることなどが条件で、融資額は財形貯蓄残高の10倍以内・最高4,000万円、かつ住宅の建設・購入価額などの90%以内です。
繰上げ返済と借換え
繰上げ返済は、毎回の返済とは別にまとまった額を返し、その全額を元金の返済に充てる方法です。充てた元金にかかるはずだった将来の利息がなくなるため、利息の軽減効果があります。方法は2つあります。
- 期間短縮型: 毎回の返済額を変えずに、返済期間を短くします。
- 返済額軽減型: 返済期間を変えずに、毎回の返済額を減らします。
ポイント
同じ金額を同じ時期に繰り上げるなら、利息の軽減効果は期間短縮型のほうが大きくなります。また、どちらの型でも、繰上げの時期が早いほど効果は大きくなります。理由は、返済の初期ほど元金の残高が大きく、利息が多く発生しているためです。
借換えは、金利の高いローンを金利の低い新しいローンで返済し直す方法です。登記費用や事務手数料などの諸費用がかかるため、金利差・残りの期間・残高によっては効果が出ないことがあります。効果は諸費用込みの総返済額で比較します。
このほか、住宅の買換えでは売却と購入の資金繰りの調整が、リフォームやバリアフリー化ではリフォームローンや高齢者向け返済特例の活用が論点になります。
教育資金プランニング
教育資金は、必要になる時期と金額がおおむね予測できることが特徴です。準備の手段には、こども保険(学資保険)による積立てや、一般の積立貯蓄があります。不足するときの借入れには、次の2つの柱があります。
| 制度 | 借りる人 | 特徴 |
|---|---|---|
| 教育一般貸付(国の教育ローン) | 保護者 | 日本政策金融公庫が扱う固定金利のローン。入学金・授業料のほか受験費用や下宿費用にも使える。世帯の年収に上限の要件がある |
| 日本学生支援機構の奨学金 | 学生本人 | 給付型(返済不要)と貸与型がある。貸与型には無利子の第一種と有利子の第二種があり、第二種も在学中は無利子 |
注意
教育一般貸付は保護者が借りて保護者が返し、奨学金は学生本人が借りて本人が返します。誰の債務になるかという違いは、返済計画の設計に直結します。なお、両者は併用できます。
教育一般貸付の融資限度額は、子ども1人につき350万円で、自宅外通学・修業年限5年以上の大学・大学院・海外留学など一定の要件に該当する場合は450万円です。返済期間は最長18年で、固定金利です。
リタイアメントプランニング
老後資金の形成と運用
老後生活の資金は、公的年金を土台に、退職金・企業年金・iDeCo・個人年金保険・貯蓄で上積みします。形成期は積立と分散でこつこつ増やし、受取期に入ったら、取り崩しの順序と運用リスクの縮小を設計します。老後は収入が限られるため、大きな損失を取り返す時間がないことが、現役期との最大の違いです。
自宅を持つ人の選択肢に、リバースモーゲージがあります。自宅を担保に生活資金などの融資を受け、自宅に住み続けながら、死亡時に自宅を処分するなどして元本をまとめて返済する仕組みです。長生きするほど利息がふくらむこと、担保の評価が下がると融資枠が減ることがあることに注意が必要です。
老後生活のリスクへの手当て
老後の主なリスクは、病気・介護・住まいです。公的医療保険と公的介護保険を土台に、不足に備えて民間の医療保険・介護保険を検討します。住まいでは、バリアフリー化のリフォームや高齢者向け住宅への住み替えが論点になります。
高年齢者雇用安定法
働く期間を延ばすことも、老後資金の大きな手当てになります。高年齢者雇用安定法は、65歳までの雇用確保を事業主の義務としています。方法は、定年の引上げ、継続雇用制度の導入、定年の廃止の3つから選びます。さらに、70歳までの就業機会の確保が事業主の努力義務とされています。
例題
次の記述が適切か、不適切かを考えてみましょう。
住宅ローンの一部繰上げ返済において、返済期間を変えずに毎回の返済額を減らす返済額軽減型は、毎回の返済額を変えずに返済期間を短くする期間短縮型よりも、利息の軽減効果が大きい。
答え合わせ
不適切です。同じ金額を同じ時期に繰り上げた場合、利息の軽減効果が大きいのは期間短縮型のほうです。期間短縮型は、利息が多く発生する返済期間そのものを削るため、なくなる利息が大きくなります。返済額軽減型は毎月の負担を軽くする効果はありますが、期間が変わらない分、利息の軽減効果では期間短縮型に及びません。目的が「総返済額を減らすこと」なのか「毎月の家計を楽にすること」なのかで、選ぶ型が変わります。
応用
もう一問、教育資金の借入れを考えてみましょう。
Aさんは、子どもの大学進学の資金として、日本政策金融公庫の教育一般貸付と日本学生支援機構の貸与型奨学金の利用を検討している。この2つの制度について、借入れの債務を負う人はそれぞれ誰か。
答え合わせ
教育一般貸付は保護者であるAさん本人が、貸与型奨学金は学生である子ども本人が債務を負います。教育一般貸付は保護者が申し込む固定金利のローンで、返済もAさんが行います。一方、日本学生支援機構の貸与型奨学金は学生本人に貸与され、卒業後に本人が返還します。子どもが社会人になったときに返還の負担を負うのは奨学金のほうだという違いを踏まえて、家計の状況に合わせて併用を設計します。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 直接金融に該当する資金調達手段の選択解く
- 手形割引で差し引かれる費用の選択解く
- 税理士資格を持たないFPが行える行為の選択解く
- 弁護士資格を持たないFPが行える行為の選択解く
- 企業型確定拠出年金のマッチング拠出の要件の判定解く