中小法人の資金計画
中小法人の資金調達について、間接金融と直接金融の違いを軸に、証書貸付・手形割引・私募債などの手段と費用、資金繰りの管理を判断できるようになります。
ねらい
中小法人の資金調達と資金管理を学びます。2級で新たに加わる項目です。このレッスンを終えると、間接金融と直接金融の違いを軸に各調達手段の仕組みと費用が整理でき、運転資金と設備資金に応じた調達の考え方と資金繰りの管理を判断できるようになります。
ストーリー
従業員12人の部品加工会社を営む石田社長は、2つの資金の悩みを抱えています。1つは、売上代金の入金が2か月先なのに、材料費と給与の支払いが毎月来ることです。もう1つは、受注増に応えるための新しい機械の購入資金です。「どちらも銀行から借りるしかないのか。借り方に種類はあるのか」。会社の資金調達には、目的に応じた多くの選択肢があります。個人の家計と違う、法人ならではの考え方を見ていきましょう。
財務状況の把握
資金調達の出発点は、自社の財務状況の把握です。貸借対照表からは資産・負債・純資産の構成が、損益計算書からは収益力が読み取れます。金融機関も、融資の審査でこれらの決算書を見ます。決算書の具体的な分析の手法(収益性・安全性などの指標)は、タックスプランニングの章の決算書と法人税申告書を学ぶレッスンで扱います。
資金には、日々の営業活動に必要な「運転資金」と、機械や建物などへの投資に使う「設備資金」があります。短期で回収と支払いを繰り返す運転資金は短期の調達で、長く使う設備の資金は長期の調達でまかなうことが、資金計画の基本になります。
間接金融と直接金融
資金調達の方法は、大きく2つに分かれます。金融機関を間にはさんで資金を借りる「間接金融」と、株式や社債を発行して投資家から直接資金を集める「直接金融」です。
注意
間接金融と直接金融は、名前を取り違えやすい論点です。金融機関を「間」にはさんで借りるのが間接金融、投資家から「直接」集めるのが直接金融と、「間」と「直接」の語で区別します。
ポイント
借入れと社債は、返済義務のある負債の調達です。株式の発行は、返済義務のない自己資本の調達です。同じ直接金融でも、社債と株式では貸借対照表への効き方が違います。自己資本が増えれば自己資本比率が高まり、財務の安全性が増します。
間接金融の手段
金融機関からの借入れには、次の形があります。
| 手段 | 仕組み | 主な用途 |
|---|---|---|
| 証書貸付 | 金銭消費貸借契約書を交わして借りる | 設備資金などの長期資金 |
| 手形貸付 | 借用証書の代わりに約束手形を金融機関に差し入れて借りる | 短期の運転資金 |
| 当座貸越 | あらかじめ決めた極度額の範囲で、必要なときに随時借りられる | つなぎの運転資金 |
| 手形割引 | 受け取った手形を満期前に金融機関へ譲渡し、満期までの利息にあたる割引料を差し引いた額を受け取る | 売上債権の早期資金化 |
このほか、不動産担保に頼らない方法として、在庫や売掛債権を担保にするABL(動産・債権担保融資)があります。また、信用力を補う仕組みとして、信用保証協会の保証付融資があります。保証付融資では、会社が返済できないとき信用保証協会が金融機関へ立て替え払いをしますが、会社の返済義務がなくなるわけではなく、以後は信用保証協会へ返済します。保証を受けるには信用保証料の負担が必要です。政府系の日本政策金融公庫も、中小企業・小規模事業者向けの融資を行っています。
直接金融の手段
株式による調達(増資)には、広く一般から募集する公募増資、既存の株主に割り当てる株主割当増資、取引先など特定の第三者に割り当てる第三者割当増資があります。増資は返済不要の自己資本を厚くしますが、株式の持分比率が変わるため、経営権への影響を考える必要があります。
社債による調達では、中小法人では、少人数の縁故者に引き受けてもらう少人数私募債(しょうにんずうしぼさい)が使われます。勧誘の相手方が50名未満であることなどの要件を満たすと、簡素な手続きで発行できます。
その他の資金調達手段
売掛債権を期日前に買い取ってもらうファクタリング、インターネットで小口の資金を広く集めるクラウドファンディング、国や自治体の補助金・助成金なども、近年の中小法人の選択肢です。補助金・助成金は返済不要ですが、後払いが基本のため、つなぎの資金繰りは別に必要になります。
資金調達の費用
調達にはそれぞれ費用がかかります。借入れでは金利のほかに事務手数料が、保証付融資では信用保証料が、手形割引では割引料がかかります。社債の発行には引受けや事務の費用が、増資には登記や株式事務の費用がかかります。表面の金利だけでなく、これらの費用を含めた実質的な負担で比較することが大切です。
資金管理
資金管理の中心は、資金繰り表の作成です。資金繰り表は、月ごとの現金の収入と支出、そして現金残高の見通しをまとめた表で、家計のキャッシュフロー表の法人版にあたります。損益計算書の利益と手元の現金は一致しません。売上が計上されても入金が先なら現金は増えておらず、利益が出ていても支払いが集中すれば現金は不足します。この状態を放置すると、黒字でも支払不能になる黒字倒産につながります。資金繰り表で入金と支払いの時期のずれを早めにつかみ、必要な調達を前もって手当てすることが、資金管理の要点です。
例題
次の記述が適切か、不適切かを考えてみましょう。
企業が資金を調達する方法のうち、株式や社債の発行により投資家から直接資金を集める方法を間接金融といい、金融機関からの借入れにより資金を調達する方法を直接金融という。
答え合わせ
不適切です。呼び方が逆になっています。金融機関を間にはさんで資金を借りるのが間接金融で、株式や社債の発行により投資家から直接資金を集めるのが直接金融です。「間」に金融機関が入るかどうかで名前が決まっていると押さえれば、取り違えを防げます。
応用
もう一問、調達手段の性質を考えてみましょう。
中小法人のA社は、新しい設備の購入資金を調達するにあたり、第三者割当増資による方法と、金融機関からの証書貸付による方法を比較している。貸借対照表の自己資本比率への影響という観点では、2つの方法はどう違うか。
答え合わせ
第三者割当増資は自己資本比率を高め、証書貸付は自己資本比率を低くします。増資で調達した資金は返済義務のない自己資本(純資産)になるため、総資産に占める自己資本の割合は高まります。一方、証書貸付で借りた資金は返済義務のある負債になるため、総資産が増えても自己資本は増えず、自己資本比率は下がります。財務の安全性の面では増資が有利ですが、株式を引き受けた第三者の持分が生じ、経営権への影響を考える必要があります。調達の判断は、費用だけでなく貸借対照表への効き方まで含めて行います。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 直接金融に該当する資金調達手段の選択解く
- 手形割引で差し引かれる費用の選択解く
- 税理士資格を持たないFPが行える行為の選択解く
- 弁護士資格を持たないFPが行える行為の選択解く
- 企業型確定拠出年金のマッチング拠出の要件の判定解く