債券投資
債券の仕組みと個人向け国債の商品性を理解し、最終利回りなどの利回り計算、金利と価格の逆相関、信用リスクと格付の読み方を判断できるようになります。
ねらい
決まった利子と満期の償還が約束された債券への投資を学びます。このレッスンを終えると、債券の利回りの計算ができるようになり、市場金利と債券価格が逆に動く理由、デュレーションの考え方、格付による信用リスクの読み方を判断できるようになります。
ストーリー
退職金の一部を安全に運用したい大野さんは、債券に興味を持ちました。「満期まで持てば額面で戻るなら、途中の値動きは関係ないのでは」。しかし調べてみると、債券には途中の価格変動があり、発行体の破綻というリスクもあると分かりました。「利回りの計算式もいくつかあるらしい」。債券投資の判断材料について、順に整理していきましょう。
債券の仕組み
債券は、国や企業が資金を借り入れるために発行する有価証券です。額面100円あたりで表示される価格で発行・売買され、保有中は表面利率(クーポン)にもとづく利子を受け取り、満期(償還日)には額面で償還されます。
発行価格が額面より高い発行をオーバーパー発行、低い発行をアンダーパー発行といいます。市場で途中売買できるため、購入価格と償還額(または売却価格)の差が損益になります。
個人が買いやすい代表的な債券に、個人向け国債があります。変動金利型10年・固定金利型5年・固定金利型3年の3種類があり、いずれも**金利の下限が年0.05%**に設定され、発行から1年経過すればいつでも中途換金できます(中途換金時には、直前2回分の各利子〈税引前〉相当額×0.79685が差し引かれます)。毎月発行され、1万円から購入できます。
債券の利回り計算
利回りは、1年あたりの収益(利子と償還差損益)を投資額で割って求めます。どの時点で買い、いつまで持つかで、4つの利回りを使い分けます。
| 利回り | 場面 |
|---|---|
| 応募者利回り | 発行時に買い、償還まで保有する |
| 最終利回り | 途中で買い、償還まで保有する |
| 所有期間利回り | 買った後、償還前に売却する |
| 直接利回り | 購入価格に対する毎年の利子だけを見る |
最終利回りの式は次のとおりです。
最終利回り(%)=(表面利率 +(額面100円 − 購入価格)÷ 残存期間)÷ 購入価格 × 100
計算例で確かめます。表面利率2%・残存期間4年の債券について、額面100円あたり98円で購入し、償還まで保有する場合の最終利回りは、(2+(100−98)÷4)÷98×100=(2+0.5)÷98×100で約2.55%です。毎年の利子2円に加えて、償還差益2円を4年で割った0.5円が1年あたりの収益になる、と読み下せます。
金利と債券価格の関係
市場金利と債券価格は、逆の方向に動きます。市場金利が上昇すると、新しく発行される債券の利率が高くなるため、低い利率のまま発行済みの債券は魅力が下がり、価格が下落します。価格が下がった分、その債券を買う人の利回りは市場水準まで上昇します。反対に、市場金利が低下すると、既発債の価格は上昇します。
ポイント
「金利上昇は債券価格の下落、金利低下は債券価格の上昇」。価格と利回りは逆に動きます。この逆相関は、債券分野で最も繰り返し問われる関係です。
金利変動に対する価格の感応度を測る指標がデュレーションです。デュレーションは投資資金の平均回収期間を表し、残存期間が長いほど、また表面利率が低いほど長くなります。デュレーションが長い債券ほど、金利が動いたときの価格の変動が大きくなります。
債券のリスク
- 信用リスク: 発行体が利払いや償還をできなくなるリスクです。目安になるのが格付機関の格付で、BBB格相当以上が投資適格債、BB格相当以下が投機的債券とされます。格付が低いほど、信用リスクの分だけ利回りは高くなります。保有中に格下げされると、債券価格は下落し、利回りは上昇します。
- 金利リスク: 上で見た、市場金利の変動により価格が変動するリスクです。信用リスクとは原因が異なる別のリスクである点に注意します。
- カントリーリスク: 発行体の国の政治・経済情勢に起因するリスクです。外国の債券では、発行体自体の信用力に加えて国の情勢も影響します。
注意
信用リスクと金利リスクは別のリスクです。格下げされて信用リスクが高まったときも、市場金利が上がって金利リスクが顕在化したときも、どちらも債券価格は下落して利回りは上昇します。値動きの向きが同じでも原因が異なるため、問題文がどちらの原因を問うているかで見分けましょう。
このほか、特殊な債券として、株式に転換できる権利の付いた新株予約権付社債や、対象の株価によって償還の条件が変わる他社株転換条項付債券(EB債)などがあります。これらはデリバティブの性質を持ち、通常の債券より複雑なリスクを負います。
例題
次の空欄にあてはまる数値を計算してみましょう。
表面利率1.5%、残存期間2年の固定利付債券がある。この債券を額面100円につき101円で購入し、償還まで保有した場合の最終利回りは( )である(小数点以下第3位を四捨五入。税金・手数料は考慮しない)。
答え合わせ
約0.99%です。最終利回りの式に当てはめると、(1.5+(100−101)÷2)÷101×100となります。かっこの中は、毎年の利子1.5円と、償還差損1円を2年で割ったマイナス0.5円の合計で1円です。これを購入価格101円で割って100を掛けると、約0.99%になります。額面より高い101円で買っているため、償還時に1円の差損が生じ、その分だけ利回りが表面利率1.5%より低くなる、という関係を式が表しています。
応用
もう一問、金利と価格の関係を考えてみましょう。
Aさんは、表面利率が固定された長期の債券を保有している。今後、市場金利の上昇が見込まれる場合、この債券の価格と、債券を新たに買う投資家から見た利回りは、それぞれどの方向に動くと考えられるか。
答え合わせ
価格は下落し、利回りは上昇すると考えられます。市場金利が上昇すると、より高い利率の新発債が現れるため、低い利率のまま固定された既発債は相対的に見劣りし、価格が下がります。価格が下がった分、その債券を新たに買う投資家にとっての最終利回りは市場水準まで上昇します。さらに、この債券が長期(残存期間が長い)であるほどデュレーションが長く、同じ金利上昇でも価格の下落幅は大きくなります。金利の見通しと残存期間の長さをセットで考えることが、債券投資の判断の軸です。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 保有株式の値下がりに備えるオプション取引の選択解く
- オプションの買い手の損失の限定の判定解く
- 外貨預金の預入時に適用される為替レートの選択解く
- 外貨建MMFと預金保険制度の関係の判定解く
- 変額保険の死亡保険金の最低保証の判定解く