株式投資
株式の注文と受渡しのルール、信用取引の仕組みを理解し、PER・PBR・ROE・配当利回りなどの投資指標を計算して銘柄を評価できるようになります。
ねらい
株式投資の取引ルールと、銘柄を評価するための投資指標を学びます。このレッスンを終えると、注文方法と受渡しのルール、信用取引の仕組みが分かり、PER・PBR・ROE・配当利回り・配当性向を自分で計算して、株価の割安・割高や企業の収益力を評価できるようになります。
ストーリー
株式投資を始めた矢野さんは、気になる銘柄のページで「PER15倍・PBR1.2倍・ROE8%」という数字を見つけました。「15倍とは何が15倍なのか。この銘柄は割安なのか」。株式投資の共通言語であるこれらの指標は、決算の数字と株価から自分で計算できます。実技試験でも、財務データから指標を計算させる問題が定番です。
株式取引の仕組み
株式は証券取引所で売買されます。売買の単位は1単元100株です。注文には、値段を指定する指値(さしね)注文と、値段を指定しない成行(なりゆき)注文があります。成行注文は指値注文より優先して成立します(成行優先の原則)。指値注文どうしでは、買いはより高い値段が、売りはより安い値段が優先され(価格優先)、同じ値段では先に出された注文が優先されます(時間優先)。
売買が成立した日を約定日(やくじょうび)といい、決済(受渡し)は約定日を含めて3営業日目に行われます。配当や株主優待を受け取るには、権利確定日に株主名簿に載っている必要があり、そのためには権利確定日の2営業日前(権利付き最終日)までに買っておく必要があります。
まとまった資金がなくても始められる方法として、毎月一定額ずつ買い付ける株式累積投資(るいとう)や、単元未満で売買できる制度があります。
信用取引
信用取引は、証券会社に委託保証金を差し入れて、資金や株式を借りて行う取引です。手元資金より大きな金額を売買できるほか、借りた株式を売る(空売り)ことで、株価の下落局面でも利益を狙えます。委託保証金には最低額と、約定代金に対する最低の割合が定められており、株価の変動で保証金の割合が低下すると、追加の保証金(追証)が必要になります。
委託保証金の最低額は30万円で、約定代金に対する最低委託保証金率は30%です(約定代金の30%に相当する額が30万円に満たない場合は30万円)。また、制度信用取引では返済期限が最長6か月と定められています。
投資指標の計算
銘柄の評価に使う指標について、ひとつの例で通して計算します。B社は、株価1,200円、発行済株式数1億株、当期純利益80億円、純資産(自己資本)1,000億円、年間配当金総額30億円とします。1株あたりでは、1株あたり純利益(EPS)が80円、1株あたり純資産(BPS)が1,000円、1株あたり配当金が30円です。
| 指標 | 式 | B社の計算 |
|---|---|---|
| PER(株価収益率) | 株価 ÷ 1株あたり純利益 | 1,200円÷80円=15倍 |
| PBR(株価純資産倍率) | 株価 ÷ 1株あたり純資産 | 1,200円÷1,000円=1.2倍 |
| ROE(自己資本利益率) | 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100 | 80億円÷1,000億円×100=8% |
| 配当利回り | 1株あたり配当金 ÷ 株価 × 100 | 30円÷1,200円×100=2.5% |
| 配当性向 | 配当金総額 ÷ 当期純利益 × 100 | 30億円÷80億円×100=37.5% |
読み方を言葉にします。PERは、株価が1年分の利益の何倍まで買われているかを表し、同業他社より低ければ利益に比べて割安と評価できます。PBRは、株価が1株あたり純資産の何倍かを表し、1倍を下回ると、会社の解散価値より株価が低い状態といえます。ROEは、株主のお金である自己資本を使ってどれだけ利益を上げたかという収益性の指標です。配当性向は、稼いだ利益のうちどれだけを配当に回したかを表します。
ポイント
PERとPBRは「割安か割高か」を測る株価の指標、ROEは「稼ぐ力」を測る企業の指標です。分子と分母が何かを言葉で言えるようにしておくと、式を忘れても組み立て直せます。
注意
ROEの分母は自己資本(純資産)であり、総資産ではありません。総資産で割ると総資産利益率(ROA)という別の指標になります。同じように、PERの分母は1株あたり純利益、PBRの分母は1株あたり純資産で、分母を取り違えると割安・割高の判断が逆になります。
株価指数
代表的な株価指数の性質の違いも、2級の定番です。日経平均株価は、東京証券取引所プライム市場の代表的な225銘柄の株価を平均した株価平均型の指数で、株価の高い値がさ株の影響を受けやすい特徴があります。東証株価指数(TOPIX)は、対象銘柄の時価総額を基準時点と比べる時価総額加重型の指数で、時価総額の大きい銘柄の影響を受けやすい特徴があります。
ディスクロージャー情報
上場企業は、決算短信や有価証券報告書で経営成績と財政状態を開示します。投資判断に使う情報は、証券取引所や企業のサイト、金融庁の開示システムで誰でも入手できます。指標の計算に使う純利益や純資産は、これらの開示資料から読み取ります。
例題
次の空欄にあてはまる数値を計算してみましょう。
C社の株価は1,200円、1株あたり純利益は80円、1株あたり純資産は1,000円である。C社のPER(株価収益率)は( )である。
答え合わせ
15倍です。PERは、株価を1株あたり純利益で割って求める指標でした。1,200円÷80円で15倍です。1株あたり純資産の1,000円を使って1,200円÷1,000円と計算すると1.2倍になりますが、これはPBR(株価純資産倍率)であり、別の指標です。PERは利益に対する倍率、PBRは純資産に対する倍率という分母の違いは、名前のE(Earnings・利益)とB(Book-value・純資産)に対応づけて覚えましょう。
応用
もう一問、配当の指標を計算してみましょう。
D社の株価は2,000円で、1株あたりの年間配当金は、中間配当30円と期末配当30円の合計60円である。D社の配当利回りは( )か。
答え合わせ
3%です。配当利回りは、1株あたりの年間配当金を株価で割って求めます。年間配当金は中間配当30円と期末配当30円を合計した60円なので、60円÷2,000円×100で3%です。中間配当の30円だけで計算すると1.5%になってしまうため、「年間」の配当金を使うことに注意しましょう。また、配当利回りは株価が下がると上昇します。利回りの高さだけで選ぶと、業績悪化で株価が下落した銘柄を選んでしまうことがあるため、配当性向や業績とあわせて判断します。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 保有株式の値下がりに備えるオプション取引の選択解く
- オプションの買い手の損失の限定の判定解く
- 外貨預金の預入時に適用される為替レートの選択解く
- 外貨建MMFと預金保険制度の関係の判定解く
- 変額保険の死亡保険金の最低保証の判定解く