ポートフォリオ運用
分散投資と相関係数の考え方を土台に、ポートフォリオの期待収益率の計算、標準偏差によるリスクの測り方、シャープレシオによる運用評価ができるようになります。
ねらい
資産を組み合わせて運用するポートフォリオ理論の基礎を学びます。このレッスンを終えると、相関係数による分散効果の判断ができ、ポートフォリオの期待収益率を計算できるようになり、標準偏差で測るリスクとシャープレシオによる運用成果の評価を使いこなせるようになります。
ストーリー
投資を続けてきた坂本さんは、株式ファンドと債券ファンドの2つを持っています。「全体としてのリターンはいくらと見込めるのか。値動きの荒さはどう測るのか。2つのファンドの成績は、どちらが良かったと言えるのか」。感覚ではなく数字でこれらに答える道具が、ポートフォリオ理論です。実技試験でも、期待収益率やシャープレシオの計算は頻出です。
アセットアロケーションと分散投資
ポートフォリオ運用の出発点は、資産をどの資産クラス(国内株式・国内債券・外国株式・外国債券など)にどれだけ配分するかを決めるアセットアロケーション(資産配分)です。長期の運用成果の大部分は、個別銘柄の選択よりも資産配分で決まるとされ、決めた配分は相場変動で崩れるため、定期的に元へ戻すメンテナンス(リバランス)を行います。
分散効果の大きさを決めるのが、資産どうしの値動きの連動性を表す相関係数です。相関係数はマイナス1からプラス1までの値をとります。
| 相関係数 | 値動きの関係 | 分散効果 |
|---|---|---|
| プラス1 | まったく同じ方向に動く | 効果なし |
| 0 | 関係なく動く | 効果あり |
| マイナス1 | まったく逆の方向に動く | 効果が最大 |
ポイント
分散効果は、相関係数がプラス1のときだけ働かず、プラス1より小さければ(プラス0.6どうしの組合せでも)一定の効果があります。マイナスでなければ効果がない、という誤解が最も多い間違いです。
期待収益率の計算
期待収益率は、起こりうる収益率をその発生確率で加重平均した値です。また、ポートフォリオ全体の期待収益率は、組み入れた各資産の期待収益率を組入比率で加重平均して求めます。
計算例をひとつずつ確かめます。
- シナリオによる加重平均: ある資産の収益率が、好況(確率30%)で10%、普通(確率50%)で4%、不況(確率20%)でマイナス2%と見込まれるとき、期待収益率は、0.3×10%+0.5×4%+0.2×(−2%)=3%+2%−0.4%で**4.6%**です。
- 組入比率による加重平均: 期待収益率5%の資産Aを60%、期待収益率2%の資産Bを40%組み入れたポートフォリオの期待収益率は、0.6×5%+0.4×2%=3%+0.8%で**3.8%**です。
単純平均の3.5%ではなく、組入比率で重みを付けることが計算の肝です。
リスクの測り方
ポートフォリオ理論でいうリスクは、損をする危険ではなく、収益率のばらつきの大きさを指し、標準偏差(またはその2乗の分散)で測ります。標準偏差が大きいほど、結果が期待収益率から上下に大きくぶれる可能性が高い、と読みます。
注意
ポートフォリオの期待収益率は各資産の期待収益率を組入比率で加重平均した値になりますが、ポートフォリオの標準偏差(リスク)は、相関係数がプラス1の場合を除いて、各資産の標準偏差を組入比率で加重平均した値よりも小さくなります。リターンと同じ感覚でリスクも単純に加重平均してしまう間違いに注意しましょう。この差が、分散投資でリスクを抑えられる理由です。
リスクとリターンにはトレードオフの関係があり、高いリターンを見込むほど大きなリスクを受け入れる必要があります。同じリスクで最大のリターンとなる組合せをつないだ線を効率的フロンティアといい、合理的な投資家はこの線上の組合せから、自分のリスク許容度に合うものを選ぶと整理されます。なお、市場価格はすでに利用可能な情報を織り込んでいるという考え方を効率的市場仮説といい、パッシブ運用の理論的な支えになっています。
パフォーマンスの評価とシャープレシオ
運用成果は、リターンの高さだけでは評価できません。大きなリスクを取って得たリターンかもしれないからです。リスク1単位あたりの超過リターンで効率を測る指標がシャープレシオです。
シャープレシオ =(ポートフォリオの収益率 − 無リスク資産の収益率)÷ 標準偏差
計算例で確かめます。無リスク資産の収益率(安全資産の利子率)を1%とします。収益率6%・標準偏差5%のファンドAのシャープレシオは、(6−1)÷5で1.0です。収益率8%・標準偏差10%のファンドBは、(8−1)÷10で0.7です。リターンの絶対値はBが上でも、リスクに見合う効率ではAが優れていた、と評価できます。
このほか、運用の巧拙は、あらかじめ定めたベンチマーク(比較対象の指数)との差でも評価します。
例題
次の空欄にあてはまる数値を計算してみましょう。
期待収益率5%の資産Aを60%、期待収益率2%の資産Bを40%の割合で組み入れたポートフォリオの期待収益率は( )である。
答え合わせ
3.8%です。ポートフォリオの期待収益率は、各資産の期待収益率を組入比率で加重平均して求めます。0.6×5%+0.4×2%で、3%+0.8%=3.8%です。組入比率を無視して(5%+2%)÷2=3.5%と単純平均するのが、最も多い計算の誤りです。比率の大きい資産Aの収益率に、答えが引き寄せられる形になることを確かめておきましょう。
応用
もう一問、シャープレシオで運用の効率を比べてみましょう。
無リスク資産の収益率を1%とする。ファンドXは収益率6%・標準偏差5%、ファンドYは収益率8%・標準偏差10%であった。シャープレシオで評価した場合、どちらのファンドの運用効率が高かったといえるか。
答え合わせ
ファンドXです。シャープレシオは、収益率から無リスク資産の収益率を差し引いた超過リターンを標準偏差で割って求めます。ファンドXは(6%−1%)÷5%で1.0、ファンドYは(8%−1%)÷10%で0.7です。数値が大きいほど、取ったリスク1単位あたりの超過リターンが大きい、つまり効率的な運用だったと評価できます。収益率の絶対値はYのほうが高いものの、その収益は2倍の標準偏差(ばらつき)を受け入れて得たものであり、リスクに見合う効率ではXが上回りました。リターンの高さと運用の効率は別物である、という視点がこの指標の核心です。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 保有株式の値下がりに備えるオプション取引の選択解く
- オプションの買い手の損失の限定の判定解く
- 外貨預金の預入時に適用される為替レートの選択解く
- 外貨建MMFと預金保険制度の関係の判定解く
- 変額保険の死亡保険金の最低保証の判定解く