マーケット環境の理解
GDP・景気動向指数・日銀短観などの経済指標の読み方と、金利・株価・債券・為替が景気や金融政策とどう連動するかを判断できるようになります。
ねらい
金融商品の値動きの背景にある経済の指標と、市場どうしのつながりを学びます。このレッスンを終えると、GDP・景気動向指数・日銀短観・マネーストックといった主要な経済指標の役割が分かり、景気・物価・金融政策の変化が金利・株価・債券・為替にどう波及するかを判断できるようになります。
ストーリー
投資を始めた小林さんは、ニュースの経済報道が気になり始めました。「日銀が利上げを検討」「GDPは2期連続のプラス成長」「円安が進行」。どれも自分の持つ投資信託に関係がありそうですが、何がどうつながっているのかが分かりません。マーケットの環境を読む力は、個々の商品知識の土台になる共通言語です。
主要な経済指標
経済の現状を映す代表的な指標について、発表元とあわせて押さえます。発表元まで問われるのが2級の水準です。
| 指標 | 発表元 | 内容 |
|---|---|---|
| 国内総生産(GDP) | 内閣府 | 国内で一定期間に生み出された財・サービスの付加価値の合計。物価変動の影響を含む名目と、取り除いた実質がある |
| 景気動向指数 | 内閣府 | 景気に敏感な複数の指標を統合した指数。毎月公表される |
| 日銀短観 | 日本銀行 | 全国企業短期経済観測調査。年4回、企業への調査で景況感を集計する |
| マネーストック | 日本銀行 | 金融機関と中央政府を除く経済主体が保有する通貨の総量。毎月公表される |
| 企業物価指数 | 日本銀行 | 企業間で取引される財の価格の動き |
| 消費者物価指数 | 総務省 | 消費者が購入する財・サービスの価格の動き |
景気動向指数には、2つの表し方があります。コンポジット・インデックス(CI)は景気変動の大きさやテンポを測ります。ディフュージョン・インデックス(DI)は、景気の各部門への波及の度合いを測ります。現在はCIを中心に公表されています。採用される指標は、景気に先立って動く先行系列(新規求人数や東証株価指数など)、景気とほぼ同時に動く一致系列、遅れて動く遅行系列(完全失業率など)に分かれます。
日銀短観で最も注目されるのは業況判断DIです。業況が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を差し引いて求めます。
計算例で確かめましょう。ある調査で「良い」と答えた企業が30%、「悪い」と答えた企業が20%だったとします。業況判断DIは30%−20%で10ポイントとなり、プラスなら「良い」と答えた企業のほうが多い状態を表します。
注意
物価の指標は発表元を取り違えやすい論点です。消費者物価指数は総務省、企業物価指数は日本銀行が発表します。「消費者=総務省、企業=日本銀行」と対で覚えましょう。
金利の決まり方と変動要因
金利は、お金の貸し借りの値段であり、資金の需要と供給で決まります。個々の要因は、次の方向で金利に働きます。
- 景気が良くなると、企業の資金需要が増えて金利は上昇しやすくなります。
- 物価が上がると、お金の価値の目減りを補うために金利は上昇しやすくなります。
- 円安が進むと、輸入品の価格上昇を通じて物価が上がり、金利の上昇要因になります。
金融政策と財政政策
日本銀行の金融政策の代表的な手段が、公開市場操作(オペレーション)です。日本銀行が金融機関から国債などを買い入れる買いオペを行うと、市場に資金が供給され、金利には低下の圧力がかかります。金融緩和の手段です。反対に、売りオペは市場から資金を吸収し、金利には上昇の圧力がかかります。金融引締めの手段です。
| 操作 | 資金の流れ | 金利への圧力 | 位置づけ |
|---|---|---|---|
| 買いオペ | 市場に資金を供給 | 低下 | 金融緩和 |
| 売りオペ | 市場から資金を吸収 | 上昇 | 金融引締め |
政府の財政政策も市場に影響します。公共投資の拡大などの積極財政は景気を刺激する一方、国債の増発を通じて金利の上昇要因にもなります。
景気・金利と各市場の関係
景気・金利の変化は、株式・債券・為替の各市場に次のように波及します。
- 株式: 景気の拡大は企業業績の改善を通じて株価の上昇要因になります。金利の上昇は、企業の借入負担の増加や、債券に資金が向かうことを通じて、株価の下落要因になります。
- 債券: 市場金利が上昇すると、すでに発行された債券の価格は下落します。金利と債券価格は逆に動きます。理由は債券投資のレッスンで詳しく扱います。
- 為替: 2国間の金利差は為替の変動要因です。日本より外国の金利が高くなると、高い金利を求めて円を売って外貨を買う動きが強まり、円安の要因になります。長期的には、2国間の物価上昇率の差で為替水準を説明する購買力平価という考え方があります。
ポイント
「景気拡大は株高・金利高の要因」「金利上昇は債券価格の下落」「内外金利差の拡大(外国の金利高)は円安の要因」。この3つの連動を軸に、個々のニュースを整理しましょう。
相場の局面に応じた商品選択も、この連動から導けます。金利の上昇が見込まれる局面では、固定金利の長期債券は価格下落のリスクが大きいため、変動金利型や短期の商品が有利になりやすいと整理できます。
例題
次の空欄にあてはまる語句を選んでみましょう。
日本銀行が公開市場操作により金融機関から国債を買い入れる買いオペレーションを行うと、市場の資金量が増加し、金利には( )の圧力がかかる。
答え合わせ
低下です。買いオペは、日本銀行が国債などを買い入れる対価として市場に資金を供給する操作です。資金の供給が増えると、お金の借り手にとって資金を調達しやすい環境になり、金利には低下の圧力がかかります。金融緩和の手段です。反対の売りオペは資金を吸収するため、金利には上昇の圧力がかかります。「買い」がお金を市場に出す方向だと押さえれば、迷いません。
応用
もう一問、指標の使い分けを考えてみましょう。
景気動向指数のCI(コンポジット・インデックス)とDI(ディフュージョン・インデックス)は、それぞれ景気の何を測る指標か。
答え合わせ
CIは景気変動の大きさやテンポを測り、DIは景気の各経済部門への波及の度合いを測ります。CIは指数の水準や変化の幅そのものに意味があり、景気の勢いを読み取れます。DIは50%を上回るか下回るかで景気の方向を判断します。現在の公表はCIが中心です。あわせて、採用指標が先行・一致・遅行の3系列に分かれること、新規求人数や東証株価指数が先行系列、完全失業率が遅行系列であることも、2級では問われます。
分からなかった点・気になった点
読み込み中です。
この章の問題を解く
章のまとめへ- 保有株式の値下がりに備えるオプション取引の選択解く
- オプションの買い手の損失の限定の判定解く
- 外貨預金の預入時に適用される為替レートの選択解く
- 外貨建MMFと預金保険制度の関係の判定解く
- 変額保険の死亡保険金の最低保証の判定解く