ライフプランニングの考え方と手法
キャッシュフロー表・個人バランスシートの作成ルールと計算式、可処分所得の計算、6つの係数の使い分けと計算ができるようになります。
ねらい
ライフプランニングの進め方と、計画づくりに使う道具・計算手法を学びます。このレッスンを終えると、キャッシュフロー表と個人バランスシートを正しいルールで作れるようになり、可処分所得と6つの係数を使った計算ができるようになります。
ストーリー
35歳の会社員の山田さん夫婦は、10年後に子どもが大学へ進学し、その5年後には住宅ローンを完済したいと考えています。「今の家計のままで、教育費と老後の備えは両立できるのだろうか」。この問いに感覚ではなく数字で答えることが、ライフプランニングの出発点です。
ファイナンシャル・プランナーは、家族の将来の出来事とお金の流れを表にして「見える化」し、問題点を数字で示したうえで対策を提案します。この一連の進め方と道具について、順に見ていきましょう。
ライフプランニングの目的とプロセス
ライフプランニングの目的は、人生設計上の希望や目標をお金の面から実現できるようにすることです。計画を立てること自体が目的ではなく、顧客が安心して意思決定できるようになることに効用があります。
ファイナンシャル・プランニングは、次の順序で進めます。はじめに顧客との信頼関係を築き、相談の範囲を明確にします。次に、家族構成・収入と支出・資産と負債・将来の希望といった情報を集めて、現状を把握します。集めた情報をもとに家計の問題点を分析し、対策をまとめた提案書を作成して顧客に提示します。提案が採用されたら実行を支援し、その後も定期的に見直します。環境や家族の状況が変われば、計画も更新が必要になるからです。
3つの道具
計画づくりでは、役割の異なる3つの表を使います。ライフイベント表は「いつ・何に・いくら必要か」の見取り図、キャッシュフロー表は「将来のお金の流れ」の予測、個人バランスシートは「ある時点の財産の状態」の確認です。
ライフイベント表
家族それぞれの将来の出来事(ライフイベント)と、そのときに必要な資金の額を時系列にまとめた表です。子どもの進学・住宅の購入・車の買替え・退職といったイベントがいつ起こり、いくらかかるのかを一覧にします。ここに書く金額は、計画づくりの前提となる見積りです。
キャッシュフロー表
ライフイベント表と現在の収支をもとに、将来の収入・支出・年間収支・貯蓄残高の推移を年ごとに予測した表です。作成には次のルールがあります。
- 収入は可処分所得で記入します。可処分所得は次の式で計算します。
ポイント
可処分所得 = 年収 −(所得税 + 住民税 + 社会保険料)
年収から差し引くのは、所得税・住民税と社会保険料の3つだけです。生命保険料や住居費は、自分の意思で増やしたり減らしたりできる支出なので、差し引きません。似た言葉の「手取り」と同じ考え方ですが、試験では差し引く項目の組合せが正確に問われます。たとえば年収700万円、所得税と住民税の合計が70万円、社会保険料が100万円の人の可処分所得は、700万円から170万円を差し引いた530万円です。
- 収入と支出は、変動率を加味した将来価値で記入します。給与は昇給し、物価は上がっていくためです。n年後の予想額は、現在の金額に「1たす変動率」をn回掛けて求めます。
n年後の予想額 = 現在の金額 ×(1 + 変動率)のn乗
たとえば現在の基本生活費が240万円で、変動率が年1%なら、2年後の予想額は240万円に1.01を2回掛けた約244.8万円になります。
- 貯蓄残高は、前年の残高を運用しながら年間収支を加減して求めます。
その年の貯蓄残高 = 前年の貯蓄残高 ×(1 + 運用利率)+ その年の年間収支
年間収支が赤字の年は、その分を差し引きます。たとえば前年の貯蓄残高が500万円、運用利率が年1%、その年の年間収支がプラス50万円なら、その年の貯蓄残高は500万円×1.01に50万円を足した555万円です。
個人バランスシート
ある時点での家計の資産と負債を並べ、純資産を確認する表です。純資産は、資産の合計から負債の合計を差し引いて求めます。
注意
個人バランスシートの資産は、買ったときの値段ではなく、作成時点の時価で記入します。住宅ローンなどの負債も、借りた額ではなく残高で記入します。
たとえば、時価3,000万円の自宅と預貯金800万円を持ち、住宅ローンの残高が2,200万円の家計なら、資産の合計3,800万円から負債2,200万円を差し引いた1,600万円が純資産です。
提案書と必要保障額
分析の結果は提案書にまとめます。提案書づくりで使う代表的な計算に、世帯主に万一のことがあった場合に遺族に必要な保障額を見積もる「必要保障額の計算」があります。必要保障額は、遺族のその後の支出総額の見込みから、遺族年金や配偶者の収入といった収入総額の見込みを差し引いて求めます。支出と収入の両方を見積もる点が肝心で、支出だけを積み上げると保障が過大になります。
6つの係数
資金計画の計算では、複利計算を手早く行うための係数を使います。試験で使うのは次の6つです。どれも「もとになる金額に、対応する係数を掛ける」形で使います。
| 係数 | 求められる金額 |
|---|---|
| 終価係数 | 手元の資金を複利で運用したとき、将来いくらになるか |
| 現価係数 | 将来の目標額を得るために、いま元本がいくら必要か |
| 年金終価係数 | 毎年一定額を積み立てながら運用したとき、将来の合計がいくらになるか |
| 減債基金係数 | 将来の目標額を積立でつくるために、毎年いくら積み立てるか |
| 年金現価係数 | 毎年一定額を受け取るために、いま元本がいくら必要か |
| 資本回収係数 | 手元の資金を取り崩しながら運用したとき、毎年いくら受け取れるか |
使い分けは、2つの問いで整理できます。1つ目の問いは「求めたいのは、一括の金額か、毎年の金額か」です。一括の金額を求めるのが終価係数・現価係数・年金終価係数・年金現価係数で、毎年の金額を求めるのが減債基金係数・資本回収係数です。
2つ目の問いは「時間の向きは、いまから将来へか、将来からいまへか」です。将来の金額を求めるのが終価係数と年金終価係数、いま必要な金額を求めるのが現価係数と年金現価係数です。
さらに、6つの係数は2つずつ逆数の関係にあります。終価係数と現価係数、年金終価係数と減債基金係数、年金現価係数と資本回収係数です。逆数の関係とは、掛けると1になる組合せのことで、どちらか一方を覚えていれば、もう一方はその係数で割ることでも計算できます。
計算例で確かめましょう。年利2%で10年間運用するときの終価係数を1.219とすると、手元の100万円は10年後に100万円×1.219で約121.9万円になります。また、年利2%・期間10年の減債基金係数を0.0913とすると、10年後に500万円をつくるための毎年の積立額は、500万円×0.0913で約45.7万円です。
例題
次の空欄にあてはまる金額を計算してみましょう。
会社員のAさんの年収は800万円である。Aさんの所得税と住民税の合計は90万円、社会保険料は120万円、生命保険料は24万円である。Aさんの可処分所得は( )万円である。
答え合わせ
590万円です。可処分所得は、年収から所得税・住民税と社会保険料を差し引いた金額でした。この式に当てはめると、800万円−(90万円+120万円)で590万円になります。生命保険料の24万円は、自分の意思で増減できる支出なので差し引きません。差し引く3つの項目に含まれない金額が問題文に混ざっていても、式のとおりに所得税・住民税・社会保険料だけを差し引くことが正確な計算の鍵です。
応用
どの係数を使うかを選んだうえで、金額まで計算してみましょう。
Bさんは、退職金2,000万円を年利1%で運用しながら、20年間にわたって毎年一定額を受け取りたいと考えている。年利1%・期間20年の資本回収係数を0.0554とすると、毎年の受取額はいくらになるか。
答え合わせ
約110.8万円です。まず係数を選びます。「手元の資金を取り崩しながら運用して、毎年いくら受け取れるか」を求める場面なので、使うのは資本回収係数でした。求めたいのが毎年の金額であること、もとになるのが手元の一括の資金であることから、この係数が選べます。次に計算します。2,000万円×0.0554で約110.8万円です。よく似た場面で使う年金現価係数は、反対に「毎年一定額を受け取るために、いまいくらの元本が必要か」を求める係数で、時間の向きが逆です。求めたい金額が「毎年の額」なのか「いまの元本」なのかを先に確かめると、取り違えを防げます。
分からなかった点・気になった点
読み込み中です。
この章の問題を解く
章のまとめへ- 直接金融に該当する資金調達手段の選択解く
- 手形割引で差し引かれる費用の選択解く
- 税理士資格を持たないFPが行える行為の選択解く
- 弁護士資格を持たないFPが行える行為の選択解く
- 企業型確定拠出年金のマッチング拠出の要件の判定解く