ファイナンシャル・プランニングと関連法規
税理士法・弁護士法・保険業法・金融商品取引法などとの関係を理解し、資格のないFPにできること・できないことを場面ごとに判断できるようになります。
ねらい
ファイナンシャル・プランナーの業務と、税理士法・弁護士法などの関連法規との関係を学びます。このレッスンを終えると、それぞれの資格を持たないファイナンシャル・プランナーにできることとできないことが分かり、相談の場面ごとに判断できるようになります。
ストーリー
ファイナンシャル・プランナーの佐々木さんは、顧客から次々と質問を受けました。「私の今年の医療費控除の申告書を作ってもらえますか」「父の遺産分割でもめていて、弟との話し合いをまとめてほしいのです」「この保険に入りたいので手続きをお願いします」。
どれも顧客の切実な相談ですが、佐々木さんがそのまま引き受けてよいものと、引き受けてはいけないものが混ざっています。ファイナンシャル・プランニングの業務は税金・法律・保険・投資と幅広い分野にまたがる一方、これらの分野には、法律で定められた資格を持つ人だけが行える業務があるからです。資格を持つ人だけが行える業務を「独占業務(どくせんぎょうむ)」といいます。
判断の軸
各法律の内容に入る前に、場面を判断するための共通の軸を押さえましょう。軸は2つあります。
1つ目の軸は、説明の一般性です。制度や商品の仕組みについての一般的な説明は、資格がなくても行えます。一方、特定の顧客の具体的な事情に踏み込んだ個別具体的な相談・代理・書類作成は、それぞれの資格を持つ人の独占業務になります。
2つ目の軸は、業(ぎょう)として行うかどうかです。「業として」とは、反復継続して行うことをいいます。独占業務の多くは、業として行うことが禁止の対象で、報酬を得るかどうかにかかわらず禁止されるものもあります。たとえば税理士法の独占業務は、有償か無償かを問いません。
ポイント
一般的な説明はできて、個別具体的な相談・代理・書類作成はできない。これが関連法規に共通する判断の軸です。そのうえで、法律ごとの細かな線引きを確認します。
税理士法
税理士資格を持たないファイナンシャル・プランナーは、個別具体的な税務相談・税務書類の作成・税務代理を行うことができません。これらは税理士の独占業務であり、有償か無償かを問わず禁止されます。
- できない例: 顧客の源泉徴収票などの資料を預かって確定申告書を作成する。顧客の実際の収入額をもとに、納めるべき税額を計算して助言する。
- できる例: 所得控除の種類や税額計算の流れといった税制の一般的な仕組みを説明する。仮定の数値を使った計算例で税金の考え方を解説する。セミナーで税制改正の内容を紹介する。
弁護士法
弁護士資格を持たないファイナンシャル・プランナーは、具体的な法律事件について、法律事務(法律判断を伴う代理・仲裁・和解案の提示など)を業として行うことができません。
- できない例: 相続人どうしで争いになっている遺産分割について、間に入って和解案を示しまとめる。顧客の代理人として相手方と交渉する。
- できる例: 民法の相続分や遺言の方式といった法制度の一般的な内容を説明する。公正証書遺言の作成時に証人となる。任意後見契約の受任者となる。
遺言の証人と任意後見の受任者には、特別な資格は必要ありません。この2つは「できる例」の定番として押さえておきましょう。
保険業法
保険募集人として登録していないファイナンシャル・プランナーは、保険の募集・勧誘を行うことができません。保険の募集を行うには、保険業法にもとづく登録が必要です。
- できない例: 特定の保険商品への加入を勧め、契約手続きを取り次ぐ。
- できる例: 保険商品の一般的な仕組みや種類を説明する。顧客の必要保障額を試算する。加入中の保険証券の内容を読み解いて保障の過不足を分析する。
金融商品取引法
金融商品取引業の登録を受けていないファイナンシャル・プランナーは、顧客と投資顧問契約を結んで投資判断の助言を行うこと(投資助言・代理業)や、顧客から投資判断を一任されて資産を運用すること(投資運用業)ができません。具体的な有価証券について、値上がりの見込みなどの投資判断を助言し報酬を得ることが、登録の必要な行為にあたります。
- できない例: 顧客と契約を結び、特定の株式の売買のタイミングを繰り返し助言して報酬を受け取る。顧客の資産の運用を任され、自分の判断で売買する。
- できる例: 景気動向や金利の一般的な見方を解説する。新聞・官公庁の公表資料など、誰でも入手できる情報を提供する。金融商品の一般的な仕組みとリスクを説明する。
その他の関連法規
社会保険労務士資格を持たないファイナンシャル・プランナーは、労働社会保険関係の申請書類の作成や提出の代行を業として行えません。一方、公的年金制度の一般的な説明や、年金の受給見込み額の試算は行えます。
司法書士資格を持たないファイナンシャル・プランナーは、不動産登記の申請書類の作成や申請の代理を業として行えません。一方、登記制度の一般的な仕組みの説明は行えます。
注意
どの法律でも、間違えやすいのは「顧客のために良かれと思って個別の手続きまで引き受けてしまう」場面です。相談に丁寧に応えることと、独占業務に踏み込むことは別です。個別具体的な代理・書類作成・税額計算にあたるかどうかは、行動する前に確かめましょう。
法律ごとの線引きを一覧で確認しましょう。「できない」はいずれも独占業務、「できる」は覚えておきたい定番です。
| 法律 | できない(独占業務) | できる(覚えておきたい定番) |
|---|---|---|
| 税理士法 | 個別の税務相談・申告書作成・税務代理(有償・無償を問わず) | 一般的な税制の説明、仮定の数値での計算例 |
| 弁護士法 | 具体的事件の和解案の提示・代理交渉 | 遺言の証人・任意後見の受任、法制度の一般的説明 |
| 保険業法 | 保険の募集・勧誘・契約の取次ぎ | 必要保障額の試算、保険証券の分析 |
| 金融商品取引法 | 投資顧問契約による個別の投資助言・運用の一任 | 公表資料の提供、一般的な相場観の解説 |
例題
次の記述が適切か、不適切かを考えてみましょう。
税理士資格を持たないファイナンシャル・プランナーのAさんは、無償であれば問題ないと考え、顧客の実際の収入と控除の資料をもとに、その顧客が納めるべき所得税額を計算して伝えた。
答え合わせ
不適切です。個別具体的な税務相談は税理士の独占業務であり、有償か無償かを問わず、税理士資格を持たない人は行えません。顧客の実際の資料をもとに納めるべき税額を計算して伝える行為は、一般的な税制の説明ではなく個別具体的な税務相談にあたります。無償なら許されるという考え方が誤りです。
応用
もう一問、できる行為とできない行為の線引きを考えてみましょう。
金融商品取引業の登録を受けていないファイナンシャル・プランナーのBさんは、顧客向けのセミナーで、日本銀行が公表した金融政策の資料と新聞記事をもとに、今後の金利の一般的な見方を解説した。
答え合わせ
適切です。誰でも入手できる公表資料をもとに、景気や金利の一般的な見方を解説することは、投資助言・代理業にはあたらず、登録がなくても行えます。登録が必要になるのは、顧客と投資顧問契約を結び、特定の有価証券についての投資判断を助言して報酬を得るような場合です。同じ「投資の話」でも、一般的な情報の解説なのか、個別の投資判断の助言なのかで扱いが分かれます。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 直接金融に該当する資金調達手段の選択解く
- 手形割引で差し引かれる費用の選択解く
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- 弁護士資格を持たないFPが行える行為の選択解く
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