ファイナンシャル・プランニングと倫理
ファイナンシャル・プランニングの社会的な役割を踏まえ、顧客利益の優先と守秘義務という職業的原則が身につき、具体的な相談の場面に当てはめて判断できるようになります。
ねらい
ファイナンシャル・プランニングが社会で求められる背景と、ファイナンシャル・プランナーが守るべき職業的原則を学びます。このレッスンを終えると、顧客利益の優先と守秘義務の2つの原則が身につき、具体的な相談の場面で適切か不適切かを判断できるようになります。
ストーリー
独立して相談業務を行うファイナンシャル・プランナーの高橋さんのもとに、40代の会社員の夫婦が訪ねてきました。相談の内容は、住宅ローンの借換えと、老後に向けた資産運用、そして親から受け継ぐ予定の土地のことです。話を聞くうちに、夫婦の年収や貯蓄額、家族の健康状態といった、他人には明かさない情報が次々と高橋さんに共有されていきます。
顧客は、自分の家計の深い部分を専門家に預けて相談します。だからこそ、ファイナンシャル・プランナーには、預かった信頼に応えるための職業的原則が求められます。
ファイナンシャル・プランニングの社会的ニーズ
ファイナンシャル・プランニングとは、顧客の人生設計上の希望や目標をお金の面から実現できるようにする、計画づくりのことです。この計画づくりと、資産の設計・運用・管理に関わる相談業務を担う専門家を「ファイナンシャル・プランナー」といいます。
ファイナンシャル・プランニングが求められる背景には、お金に関する判断を個人が自分で下さなければならない場面が増えたことがあります。年金・保険・金融商品・税金・不動産・相続と、家計に関わる制度は幅広く、内容は毎年のように改正されます。老後の生活資金も、公的な制度だけに頼らず自分で準備する必要性が高まっています。個人がこれらすべてを正確に把握して判断することは容易ではありません。
ファイナンシャル・プランニングの社会的役割
ファイナンシャル・プランナーは、金融・税務・不動産・相続といった幅広い分野の知識を使い、顧客一人ひとりの生活設計に合った資金計画づくりを手伝います。個別の商品を売ることが本来の役割ではなく、顧客の人生全体を見わたして、暮らしとお金の橋渡しをすることが社会的な役割です。
必要に応じて、税理士・弁護士・社会保険労務士といった他の専門家と連携し、顧客の課題をチームで解決に導くのも、ファイナンシャル・プランナーの大切な働きです。どこまでを自分が担い、どこからを他の専門家に委ねるのかという線引きは、関連法規を学ぶレッスンで詳しく扱います。ここでは、連携そのものが役割の一部だと押さえてください。
職業的原則
ファイナンシャル・プランナーが業務を行ううえで守るべき職業的原則として、試験範囲の細目は「顧客利益の優先」と「守秘義務の厳守」を代表として挙げています。2級では、それぞれを具体的な場面に当てはめて判断できることが問われます。判断の軸を対比で押さえましょう。
| 職業的原則 | 内容 | 判断の軸 |
|---|---|---|
| 顧客利益の優先 | 顧客の利益を最優先し、自分の報酬や会社の方針を先に置かない | 提案の理由を顧客の生活設計で説明できるか |
| 守秘義務の厳守 | 業務で知り得た顧客情報を、同意なく第三者に漏らさない | 顧客本人の同意があるか |
顧客利益の優先
ファイナンシャル・プランナーは、顧客の利益を最も優先して業務を行わなければなりません。自分の受け取る報酬や手数料、所属する会社の営業方針は、顧客の利益より先に置いてはいけません。
2級では、この原則を具体的な場面に当てはめて判断できることが求められます。判断の軸は、「その提案の理由は顧客の生活設計にとって良いかどうかで説明できるか」です。
- 顧客には掛金の負担が軽い商品が合っているのに、自分の手数料収入が多いという理由で別の商品を勧めることは、この原則に反します。
- 複数の選択肢を示し、それぞれの利点と欠点を顧客の立場で説明したうえで、顧客自身の意思で選んでもらうことは、この原則にかないます。
ポイント
提案の適否は、ファイナンシャル・プランナー側の都合ではなく、顧客の利益を基準に判断します。理由を顧客の生活設計で説明できない提案は、顧客利益の優先に反します。
守秘義務の厳守
ファイナンシャル・プランニングでは、収入・資産・負債・家族の事情・健康状態といった、顧客の重要な個人情報を預かります。ファイナンシャル・プランナーは、業務で知り得た顧客の情報は、顧客本人の同意なく第三者に漏らしてはいけません。この決まりを「守秘義務(しゅひぎむ)」といいます。
ただし、業務を進めるうえで他の専門家の力が必要になる場面があります。顧客の同意を得たうえで、業務に必要な範囲で税理士や弁護士に情報を伝えることは、守秘義務に反しません。
注意
守秘義務の判断の分かれ目は、顧客本人の同意の有無です。目的が顧客のためであっても、同意を得ずに第三者へ情報を伝えれば守秘義務に反します。反対に、同意を得たうえでの必要な範囲の共有は適切な業務の進め方です。
判断を誤りやすいのは、「顧客のためになるから」という理由で同意の確認を省いてしまう場面です。情報を共有する目的が正当でも、同意という手続きを欠けば原則に反します。目的と手続きの両方がそろって、はじめて適切な行動になります。
例題
次の記述が適切か、不適切かを考えてみましょう。
ファイナンシャル・プランナーのAさんは、顧客から住宅ローンの借換えの相談を受け、顧客が支払う総返済額は増えるものの、Aさんが提携先から受け取る紹介手数料が最も多い金融機関のローンを勧めた。
答え合わせ
不適切です。ファイナンシャル・プランナーは、顧客の利益を最も優先して業務を行わなければなりません。この場面では、顧客の総返済額が増えるという顧客の不利益よりも、自分が受け取る紹介手数料という自分の利益を優先しています。提案の理由を顧客の生活設計にとって良いかどうかで説明できないため、顧客利益の優先という職業的原則に反します。
応用
もう一問、同意の有無と共有の範囲に注目して考えてみましょう。
ファイナンシャル・プランナーのBさんは、顧客の相続対策の相談を進めるにあたり、税額の試算に専門的な判断が必要になったため、顧客の同意を得たうえで、顧客の資産の状況のうち試算に必要な情報を提携先の税理士に伝えた。
答え合わせ
適切です。業務で知り得た顧客の情報を第三者に伝えるには、顧客本人の同意が必要です。Bさんは同意を得たうえで、業務に必要な範囲に限って情報を共有しているので、守秘義務の厳守に反しません。もし同意を得ないまま伝えていれば、たとえ顧客のための行動であっても守秘義務に反し、不適切となります。また、同意を得ていても、業務に関係のない情報まで広く伝えることは、必要な範囲を超えるため適切とはいえません。
分からなかった点・気になった点
読み込み中です。
この章の問題を解く
章のまとめへ- 直接金融に該当する資金調達手段の選択解く
- 手形割引で差し引かれる費用の選択解く
- 税理士資格を持たないFPが行える行為の選択解く
- 弁護士資格を持たないFPが行える行為の選択解く
- 企業型確定拠出年金のマッチング拠出の要件の判定解く