金融資産運用の関連法規
金融サービス提供法・消費者契約法・金融商品取引法の守備範囲と救済の違いを整理し、勧誘の場面ごとにどの法律のどのルールが働くかを判断できるようになります。
ねらい
金融商品の利用者を守る法律を学びます。このレッスンを終えると、金融サービス提供法・消費者契約法・金融商品取引法の3つの法律について、守る相手・禁止される行為・違反したときの救済の違いが整理でき、勧誘の場面ごとにどの法律が働くかを判断できるようになります。
ストーリー
投資信託の購入を検討している藤本さんは、販売員から「この商品は元本割れの心配はまずありません」と言われました。実際には価格変動リスクのある商品です。「もしこの言葉を信じて損をしたら、法律は守ってくれるのだろうか」。金融商品の勧誘と販売には、複数の法律が重なって網をかけています。どの法律が誰をどう守るのかを整理しましょう。
金融サービス提供法
金融サービス提供法は、金融商品の販売にあたって、価格変動リスクや信用リスクといった重要事項の説明義務を金融商品販売業者等に課しています。あわせて、「必ず値上がりします」のような断定的判断の提供を禁止しています。
この法律の特徴は、救済の方法にあります。業者が説明義務に違反し、または断定的判断を提供して顧客が損害を被った場合、顧客は業者に対して損害賠償を請求できます。このとき、元本欠損額(元本を割り込んだ額)がその損害額と推定されるため、顧客は損害額の立証の負担を大きく軽くできます。
保護の対象は個人に限られず、事業者も含まれます(機関投資家などのプロは除きます)。
消費者契約法
消費者契約法は、消費者と事業者の間の情報の格差を踏まえて、消費者(個人)の契約だけを守る法律です。事業者の不当な行為によって誤認・困惑して契約した場合、消費者はその契約を取り消すことができます。
取消しの対象になる行為には、重要事項について事実と異なることを告げる不実告知、「必ず儲かる」といった断定的判断の提供、不利益になる事実を故意に告げないこと、勧誘の場から帰さないなどの困惑させる行為があります。
金融サービス提供法と消費者契約法の両方の要件を満たす場合には、両方の法律を適用できます。損害賠償(金サ法)と取消し(消契法)は、救済の方法が異なるためです。
ポイント
「金融サービス提供法は損害賠償・事業者も保護」「消費者契約法は取消し・消費者のみ保護」。救済の方法と保護の範囲の2軸で対比して覚えます。この対比は2級で最も問われる整理です。
注意
「断定的判断の提供」は金融サービス提供法・消費者契約法・金融商品取引法のいずれも禁止しているため、どの法律の話か迷いやすい点です。同じ行為でも、金サ法では損害賠償、消契法では取消し、金商法では業者の行為規制と、結びつく救済が法律ごとに異なります。禁止行為の名前ではなく、問われている救済で法律を見分けます。
金融商品取引法
金融商品取引法は、金融商品取引業者の行為ルールを定める法律です。投資家を守るための主なルールは次のとおりです。
- 適合性の原則: 顧客の知識・経験・財産の状況・契約の目的に照らして、不適当と認められる勧誘をしてはなりません。
- 断定的判断の提供による勧誘の禁止: 不確実な事項について断定的判断を提供して勧誘してはなりません。
- 契約締結前交付書面(書面等による情報提供): 契約の概要・手数料・リスクは、契約前に顧客に示さなければなりません。
- 広告規制: 利益の見込みについて著しく事実に相違する表示や、著しく人を誤認させる表示が禁止されます。
- クーリング・オフ等: 投資顧問契約には書面による解除の制度があります。
金融商品取引法は、投資家を特定投資家(プロ)と一般投資家(アマ)に区分し、一般投資家には行為ルールを全面的に適用し、特定投資家には一部を適用しないという柔軟な構造を採っています。
このほか、口座開設などの取引の入口では、犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯罪収益移転防止法)にもとづく取引時確認(本人特定事項などの確認)が行われます。金融機関とのトラブルは、金融ADR(裁判外紛争解決制度)で解決を図る仕組みも整えられています。
3つの法律の整理
| 法律 | 保護の対象 | 中心となるルール | 救済・効果 |
|---|---|---|---|
| 金融サービス提供法 | 個人と事業者(プロを除く) | 重要事項の説明義務・断定的判断の提供の禁止 | 損害賠償請求(元本欠損額を損害と推定) |
| 消費者契約法 | 消費者(個人)のみ | 不実告知・断定的判断の提供・不退去等の禁止 | 契約の取消し |
| 金融商品取引法 | 投資家(特定投資家と一般投資家に区分) | 適合性の原則・広告規制・契約締結前の情報提供 | 業者への行為規制・行政処分 |
例題
次の空欄にあてはまる語句を選んでみましょう。
金融商品販売業者等が重要事項の説明義務に違反し、顧客が損害を被った場合、顧客は金融サービス提供法にもとづき、業者に対して( )ことができる。この場合、元本欠損額が損害額と推定される。
答え合わせ
損害賠償を請求することです。金融サービス提供法の救済は、契約の取消しではなく損害賠償の請求であり、元本欠損額が損害額と推定されることで顧客の立証の負担が軽くなります。契約を取り消すという救済を定めるのは消費者契約法で、不実告知や断定的判断の提供により誤認して契約した消費者が使えます。「金サ法は損害賠償・消契法は取消し」という救済方法の対応は、正確に区別しましょう。
応用
もう一問、適合性の原則の考え方を確かめましょう。
証券会社の担当者が、投資の経験がなく、退職金を老後の生活資金として安全に運用したいと希望する高齢の顧客に対して、価格変動の大きい複雑なデリバティブ組込み商品を積極的に勧誘した。この勧誘は、金融商品取引法のどのルールに照らして問題となるか。
答え合わせ
適合性の原則に照らして問題となります。適合性の原則は、顧客の知識・経験・財産の状況・契約の目的に照らして、不適当と認められる勧誘をしてはならないというルールです。この顧客は、投資経験がなく(知識・経験)、生活資金という失えないお金で(財産の状況)、安全な運用を目的としている(契約の目的)ため、価格変動の大きい複雑な商品の積極的な勧誘は、4つの要素のいずれから見ても不適当です。商品の説明を尽くしたかどうか以前に、その顧客にその商品を勧めること自体が問われる、という点がこの原則の核心です。
用語の確認
金融資産運用で学んだ用語を、カードで確かめましょう。用語を見て意味を思い出し、カードを押して答え合わせをします。
表 デュレーション
分からなかった点・気になった点
読み込み中です。
この章の問題を解く
章のまとめへ- 保有株式の値下がりに備えるオプション取引の選択解く
- オプションの買い手の損失の限定の判定解く
- 外貨預金の預入時に適用される為替レートの選択解く
- 外貨建MMFと預金保険制度の関係の判定解く
- 変額保険の死亡保険金の最低保証の判定解く