企業年金・個人年金等
確定給付企業年金と確定拠出年金の違い、中小企業退職金共済・小規模企業共済・国民年金基金の仕組みを理解し、老後資金の上乗せ制度を使い分けられるようになります。
ねらい
公的年金に上乗せする企業年金と、自分で備える個人年金などの制度を学びます。このレッスンを終えると、確定給付型と確定拠出型の違いを軸に各制度の仕組みが整理でき、中小企業や自営業者向けの共済制度まで含めて、老後資金の上乗せ制度を使い分けられるようになります。
ストーリー
町工場を営む森さん(50歳)は、従業員の退職金と自分自身の老後資金の両方に悩んでいます。「従業員には退職金を用意してあげたいが、大企業のような退職金制度は作れない。自分は自営業だから厚生年金もない」。企業年金と共済制度は、まさにこうした悩みに答えるための仕組みです。会社員・中小企業・自営業者のそれぞれに、使える制度が用意されています。
企業年金の全体像
企業年金は、公的年金に上乗せして企業が従業員のために用意する年金で、大きく2つの型に分かれます。将来の給付額をあらかじめ決めておく「確定給付型」と、拠出する掛金を決めて運用の結果で給付額が変わる「確定拠出型」です。
2つの型の違いを、2級で問われる観点で整理すると次のとおりです。
| 観点 | 確定給付型(DB) | 確定拠出型(DC) |
|---|---|---|
| 先に約束するもの | 将来の給付額 | 拠出する掛金 |
| 運用リスクを負う人 | 事業主 | 加入者 |
| 退職給付債務 | 生じる | 生じない |
かつての中心だった厚生年金基金は、国の老齢厚生年金の一部を代行して運用する仕組みでしたが、現在は新しく設立することが認められていません。
確定給付企業年金と退職給付会計
確定給付企業年金(DB)は、将来の給付額を規約で定める企業年金で、労使が合意した規約にもとづいて実施する規約型と、企業年金基金を設立して実施する基金型があります。掛金は原則として事業主が負担し、運用がうまくいかず積立が不足した場合は、事業主が追加の負担を求められます。運用のリスクを事業主側が負う制度といえます。
確定給付型の退職金・年金を約束した企業は、将来の支払いに備えた負債を財務諸表に反映する必要があります。この会計処理を「退職給付会計」といい、将来の給付見込みを現在価値に直した退職給付債務をもとに費用と負債を計上します。2級では、確定給付型は企業の会計に影響し、確定拠出型は拠出時点で企業の負担が確定するため退職給付債務が生じない、という対比を押さえておきましょう。
確定拠出年金
確定拠出年金(DC)は、拠出した掛金を加入者自身が運用し、その結果で将来の受取額が決まる制度です。運用のリスクは加入者が負います。企業が実施する企業型年金と、個人で加入する個人型年金(iDeCo・イデコ)があります。
企業型年金
企業型DCの掛金は事業主が拠出し、規約に定めれば、加入者本人が事業主掛金に上乗せして拠出することもできます。この上乗せを「マッチング拠出」といいます。マッチング拠出には、加入者掛金が事業主掛金を超えないこと、そして事業主掛金と加入者掛金の合計が拠出限度額を超えないことという2つの条件があります。
企業型DCの拠出限度額は、他の企業年金がない場合は月額55,000円です。確定給付企業年金(DB)などの他の企業年金にも加入している場合は、月額55,000円からその企業年金ごとの掛金相当額を差し引いた額が限度になります(令和6年12月から、他制度の掛金相当額を実額で反映するしくみに見直されました)。
離職・転職したときは、それまでの資産を移換して持ち運べます。この仕組みをポータビリティといいます。
個人型年金(iDeCo)
iDeCoは、国民年金の被保険者が自分の意思で加入し、自分で掛金を拠出して運用する制度です。拠出限度額は、自営業者か会社員か、勤め先に企業年金があるかといった加入区分で異なります。基準日時点の加入区分別の月額拠出限度額は、次のとおりです。
| 加入区分 | 月額拠出限度額 |
|---|---|
| 第1号被保険者(自営業者等・任意加入被保険者) | 68,000円(国民年金基金・付加保険料と合算) |
| 第2号被保険者(勤め先に企業年金がある会社員等) | 20,000円 |
| 第2号被保険者(企業年金がない会社員)・第3号被保険者 | 23,000円 |
加入できるのは国民年金の被保険者で、第2号被保険者は65歳未満、第1号・第3号被保険者は原則60歳未満、任意加入被保険者は65歳未満です。
税制上の扱いは、3つの場面すべてで優遇されます。
- 拠出時: 掛金の全額が小規模企業共済等掛金控除として所得控除の対象になります。
- 運用時: 運用益は非課税です。
- 受取時: 一時金で受け取れば退職所得として退職所得控除が、年金で受け取れば雑所得として公的年金等控除が使えます。
ポイント
iDeCoの掛金の所得控除は、社会保険料控除でも生命保険料控除でもなく「小規模企業共済等掛金控除」です。控除の名前まで正確に覚えることが、タックス分野との横断問題への備えになります。
老齢給付金は原則60歳から受け取れますが、通算加入者等期間が10年に満たない場合は、受取開始できる年齢が段階的に遅くなります。
その他の年金制度
中小企業や自営業者の退職金・老後資金づくりには、次の制度があります。
| 制度 | 対象 | 特徴 |
|---|---|---|
| 中小企業退職金共済(中退共) | 中小企業の従業員 | 掛金は全額事業主が負担し損金になる。退職金は共済から従業員に直接支払われる |
| 小規模企業共済 | 小規模企業の役員・個人事業主 | 自分の退職金づくり。掛金は全額が小規模企業共済等掛金控除の対象 |
| 国民年金基金 | 国民年金の第1号被保険者 | 老齢基礎年金への上乗せ。掛金は全額が社会保険料控除の対象。付加年金と同時に利用できない |
掛金の額は制度ごとに定められています。中退共の掛金月額は、一般の従業員が5,000円から30,000円までの16種類(短時間労働者は特例として2,000円・3,000円・4,000円も選べます)で、新たに加入した事業主には、加入後4か月目から1年間、掛金月額の2分の1(従業員ごとに上限5,000円)を国が助成する制度があります。小規模企業共済の掛金月額は1,000円から70,000円まで(500円単位)で、掛金は全額が小規模企業共済等掛金控除の対象です。国民年金基金の掛金は月額68,000円が上限で、iDeCoにも加入している場合は両者の合計で月68,000円が上限になります。
掛金を払ったときに、誰の税金が軽くなり、どの控除の名前を使うのかは、制度ごとに異なります。取り違えやすいので、控除の名前とセットで整理しておきましょう。
注意
国民年金基金と付加年金(付加保険料の納付)は、どちらも第1号被保険者が老齢基礎年金に上乗せする仕組みのため、同時には利用できません。国民年金基金に加入するときは、付加保険料の納付をやめることになります。
このほか、企業が生命保険契約を使って従業員向けの年金を任意に用意する仕組みがあり、税制上の優遇のある企業年金と区別して非適格年金と呼ばれます。
個人年金と財形年金
個人年金保険
個人年金保険は、私的に老後資金を準備する保険商品です。受取期間による分類では、生きている限り受け取れる終身年金、生死にかかわらず一定期間受け取れる確定年金、生きていることを条件に一定期間受け取れる有期年金に分かれます。運用による分類では、受取額があらかじめ決まっている定額個人年金と、運用実績で受取額が変わる変額個人年金があります。
財形貯蓄制度と財形年金
財形貯蓄制度は、勤労者が給与天引きで行う貯蓄の制度で、使いみちを限定しない一般財形、住宅取得を目的とする財形住宅、老後資金を目的とする財形年金の3種類があります。財形住宅と財形年金は、あわせて元利合計550万円まで利子が非課税になります(財形年金のうち、生命保険や損害保険などの保険型のものは、払込額385万円までが非課税の限度です)。財形年金は、55歳未満の勤労者が5年以上積み立て、60歳以降に年金として受け取る仕組みです。目的外で払い出すと、非課税の扱いが取り消されます。
例題
次の記述が適切か、不適切かを考えてみましょう。
企業型確定拠出年金のマッチング拠出では、加入者は、事業主掛金の額を超えて自分の掛金を拠出することができる。
答え合わせ
不適切です。マッチング拠出の加入者掛金には、事業主掛金の額を超えないこと、そして事業主掛金との合計が拠出限度額を超えないことという2つの条件があります。事業主掛金を超える拠出はできません。たとえば事業主掛金が月1万円なら、加入者が上乗せできるのは月1万円までです。
応用
もう一問、自営業者の制度の使い分けを考えてみましょう。
国民年金の第1号被保険者であるBさんは、月額400円の付加保険料を納めている。Bさんが老齢基礎年金への上乗せをさらに手厚くしたい場合、付加保険料を納めたまま国民年金基金に加入することができるか。
答え合わせ
できません。国民年金基金と付加年金(付加保険料の納付)は、どちらも老齢基礎年金に上乗せする第1号被保険者向けの仕組みであるため、同時には利用できません。国民年金基金に加入する場合は、付加保険料の納付をやめることになります。なお、iDeCoは国民年金基金や付加年金と併用できますが、掛金の上限は合算で管理されます。上乗せ制度どうしの併用の可否は、2級で問われやすい整理です。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 直接金融に該当する資金調達手段の選択解く
- 手形割引で差し引かれる費用の選択解く
- 税理士資格を持たないFPが行える行為の選択解く
- 弁護士資格を持たないFPが行える行為の選択解く
- 企業型確定拠出年金のマッチング拠出の要件の判定解く