決算書と法人税申告書
貸借対照表と損益計算書の読み方を土台に、収益性と安全性の指標を1社の決算書から一括で計算し、損益分岐点分析と法人税申告書との関係まで判断できるようになります。
ねらい
会社の姿を映す決算書の読み方と分析を学びます。このレッスンを終えると、貸借対照表と損益計算書の構造が分かり、収益性(ROE・総資本経常利益率・売上高利益率)と安全性(流動比率・自己資本比率・固定比率)の指標をひとつの決算書から一括で計算できるようになり、損益分岐点分析と法人税申告書との関係まで判断できるようになります。
ストーリー
取引先の与信を検討している石田社長は、相手の会社の決算書を手に入れました。「数字は並んでいるが、この会社が儲かっているのか、つぶれにくいのかは、どこを見て判断すればいいのか」。決算書の分析は、儲ける力(収益性)と耐える力(安全性)の2つの視点で数字を比率に直すことから始まります。実技試験でも、決算書から指標を計算させる問題が定番です。
決算書の見方
決算書(財務諸表)の中心は、次の2つです。
- 貸借対照表(B/S): ある時点の財政状態を表します。左側に資産、右側に負債と純資産が並び、「資産=負債+純資産」が常に成り立ちます。純資産(自己資本)は返済不要の元手、負債(他人資本)は返済が必要な調達です。
- 損益計算書(P/L): 1期間の経営成績を表します。利益は段階的に計算され、売上高から売上原価を引いた売上総利益、そこから販売費及び一般管理費を引いた営業利益(本業の儲け)、営業外損益を加減した経常利益(通常の活動全体の儲け)、特別損益と法人税等を経て当期純利益に至ります。
このほか、現金の増減を営業・投資・財務の3活動に分けて示すキャッシュ・フロー計算書、親会社と子会社を一体として作る連結財務諸表があります。
決算書の分析(収益性と安全性)
次の1社の決算書から、指標を一括で計算します。B社の貸借対照表は、総資産(総資本)80億円、うち流動資産30億円・固定資産50億円。負債は流動負債20億円・固定負債20億円で、自己資本(純資産)は40億円。損益計算書は、売上高100億円・営業利益10億円・経常利益8億円・当期純利益6億円です。
分析の指標は、儲ける力を見る収益性と、耐える力を見る安全性の2つの視点で整理できます。どの指標がどちらの視点に属し、分子と分母に何を置くのかを対比しておくと、計算問題で迷いません。
収益性の指標(儲ける力)
| 指標 | 式 | B社の計算 |
|---|---|---|
| 売上高営業利益率 | 営業利益÷売上高×100 | 10億÷100億×100=10% |
| 売上高経常利益率 | 経常利益÷売上高×100 | 8億÷100億×100=8% |
| 総資本経常利益率(ROA) | 経常利益÷総資本×100 | 8億÷80億×100=10% |
| 自己資本利益率(ROE) | 当期純利益÷自己資本×100 | 6億÷40億×100=15% |
売上高利益率は売上のうちどれだけが利益として残るかを表します。総資本経常利益率は会社が使っているすべての元手でどれだけ稼いだかを示し、ROEは株主の元手でどれだけ稼いだかを示します。ROEは株式投資のレッスンで学んだ指標と同じもので、経営の側から見るか投資家の側から見るかの違いです。
安全性の指標(耐える力)
| 指標 | 式 | B社の計算 | 目安 |
|---|---|---|---|
| 流動比率 | 流動資産÷流動負債×100 | 30億÷20億×100=150% | 高いほど短期の支払能力が高い |
| 自己資本比率 | 自己資本÷総資本×100 | 40億÷80億×100=50% | 高いほど財務の安定性が高い |
| 固定比率 | 固定資産÷自己資本×100 | 50億÷40億×100=125% | 低い(100%以下)ほど、固定資産を返済不要の資金でまかなえている |
流動比率は、1年以内に支払う負債を1年以内に現金化できる資産でどれだけカバーしているかを見ます。固定比率は、長く使う固定資産を返済不要の自己資本でどこまでまかなえているかを見る指標で、100%を超える場合は借入れにも頼っていることを意味します。
ポイント
収益性は「利益÷元手または売上」、安全性は「資産・資本のバランス」。どの指標も、分子と分母に何を置くかを言葉で言えるようにしておけば、式を忘れても組み立て直せます。
注意
似た名前の指標ほど、分母を取り違えやすくなります。総資本経常利益率(ROA)の分母は会社が使うすべての元手である総資本、自己資本利益率(ROE)の分母は株主の元手である自己資本です。流動比率は流動資産が分子・流動負債が分母で、分子と分母を逆にすると支払能力の意味が反対になってしまいます。
損益分岐点分析
損益分岐点売上高は、利益がゼロになる売上高で、費用を売上に比例する変動費と、売上にかかわらず生じる固定費に分けて求めます。
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)
計算例で確かめます。固定費が3,000万円、変動費率が60%の会社の損益分岐点売上高は、3,000万円÷(1−0.6)で7,500万円です。分母の(1−変動費率)は、売上1円あたりの粗利にあたる限界利益率です。損益分岐点が低いほど、売上の減少に耐えやすい体質といえます。
決算書と法人税申告書
法人税は、株主総会で承認された決算にもとづいて申告します(確定決算主義)。ただし、会計の利益と税務の所得は一致しないため、申告書の別表四で、会計の当期純利益を出発点に、損金不算入の役員給与や交際費を加算し、益金不算入の受取配当を減算するなどの申告調整を行って所得金額を導きます。決算書と申告書は、別表四という橋でつながっている、と整理できます。
例題
次の空欄にあてはまる数値を計算してみましょう。
B社の貸借対照表によれば、流動資産は30億円、流動負債は20億円である。B社の流動比率は( )である。
答え合わせ
150%です。流動比率は、流動資産を流動負債で割って求めます。30億円÷20億円×100で150%です。分子と分母を逆にした66.7%は誤りで、「支払うべきもの(流動負債)に対して、支払いに充てられるもの(流動資産)がどれだけあるか」という意味を考えれば、流動資産が分子だと導けます。流動比率は高いほど短期の支払能力が高いと評価され、100%を下回ると、1年以内の支払いを1年以内に現金化できる資産でまかなえない状態を意味します。
応用
もう一問、損益分岐点を計算してみましょう。
C社の固定費は年3,000万円、変動費率は60%である。C社の損益分岐点売上高はいくらか。また、実際の売上高が9,000万円である場合、C社は黒字か赤字か。
答え合わせ
損益分岐点売上高は7,500万円で、売上高9,000万円のC社は黒字です。損益分岐点売上高は、固定費3,000万円を限界利益率(1−変動費率0.6=0.4)で割って、3,000万円÷0.4=7,500万円と求めます。実際の売上高9,000万円はこれを上回っているため黒字で、利益は(9,000万円−7,500万円)×0.4で600万円と確かめられます。固定費を変動費率で割る(3,000÷0.6=5,000万円)のは典型的な誤りです。分母は「売上のうち固定費の回収に回せる割合」である限界利益率だという意味から、式を組み立てましょう。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 法人税の損金に算入される税金の選択解く
- 赤字法人の均等割の納付義務の判定解く
- 損金の額に算入される役員給与の選択解く
- 中小法人の年800万円以下の部分の税率の選択解く
- 届出をしなかった場合の法定償却方法の選択解く