不動産の見方
不動産登記の読み方と対抗力・公信力の考え方、4つの公的な土地価格の使い分け、鑑定評価の3手法を判断できるようになります。
ねらい
不動産の章の入口として、物件の権利と価格の調べ方を学びます。このレッスンを終えると、不動産登記の構成と効力(対抗力はあるが公信力はない)が分かり、4つの公的な土地価格を目的で使い分けられるようになり、鑑定評価の3つの手法の考え方を判断できるようになります。
ストーリー
中古住宅の購入を検討している堀さんは、不動産会社から「まず登記を確認しましょう」と言われました。「登記には何が書いてあるのか。登記を信じて買えば安全なのか。それに、同じ土地なのに公示価格や路線価など、値段がいくつもあるのはなぜか」。不動産の取引は、権利の調査と価格の調査から始まります。
不動産登記の調査
不動産登記は、土地・建物の物理的な状況と権利関係を公示する制度です。登記記録は1筆の土地・1個の建物ごとに作られ、誰でも登記事項証明書の交付を受けて内容を確認できます。
| 部分 | 記録される内容 |
|---|---|
| 表題部 | 物理的な現況(土地なら所在・地番・地目・地積、建物なら種類・構造・床面積など) |
| 権利部(甲区) | ==所有権==に関する事項(所有者・差押えなど) |
| 権利部(乙区) | ==所有権以外==の権利に関する事項(抵当権・賃借権など) |
登記の効力は、2級で最も問われる論点です。
ポイント
不動産登記には対抗力があります。登記をすれば、自分の権利を第三者に主張(対抗)できます。しかし公信力はありません。登記の内容を信じて、真実の権利者でない登記名義人から不動産を買っても、原則としてその権利の取得は保護されません。だからこそ、登記だけに頼らず現地調査や本人確認が必要になります。
本登記の順位を保全するための仮登記という仕組みもありますが、仮登記のままでは対抗力がありません。
登記の図面には、土地のおおよその位置関係を示す公図と、正確な測量にもとづく地積測量図があります。公図は精度が低いことがあり、現況と一致しない場合があるため、現地調査とあわせて確認します。
土地の価格の調査
土地には、目的の異なる4つの公的な価格があります。
| 価格 | 決定機関 | 基準日 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 公示価格 | 国土交通省 | 毎年1月1日 | 一般の土地取引の指標。3月に公表 |
| 基準地標準価格 | 都道府県 | 毎年7月1日 | 公示価格を補完。9月に公表 |
| 相続税路線価 | 国税庁 | 毎年1月1日 | 相続税・贈与税の評価の基準。==公示価格の80%程度== |
| 固定資産税評価額 | 市町村 | 基準年度の1月1日 | 固定資産税などの課税の基準。==公示価格の70%程度==。3年ごとに評価替え |
実際に売買される実勢価格(時価)は、これらの公的価格と一致するとは限りません。「相続税は路線価の8割水準、固定資産税は7割水準、固定資産税評価額だけ3年ごと」という対応は、数字の組で覚えます。
注意
4つの価格は基準日と決定機関を取り違えやすいところです。公示価格と相続税路線価はどちらも毎年1月1日が基準日ですが、決定機関は公示価格が国土交通省、相続税路線価が国税庁です。基準地標準価格の基準日は毎年7月1日で、評価替えが3年ごとなのは固定資産税評価額だけです。
不動産の鑑定評価
不動産鑑定士が行う鑑定評価には、3つの手法があります。
- 原価法: その不動産をいま作り直したらいくらかかるか(再調達原価)を求め、古くなった分を減価修正して価格を求めます。
- 取引事例比較法: 似た物件の取引事例を集め、事情や時点の補正をして価格を求めます。
- 収益還元法: その不動産が将来生み出す収益に着目して価格を求めます。1期間の純収益を還元利回りで割り戻す直接還元法と、複数期間の純収益と売却価格を現在価値に割り引いて合計するDCF法があります。
計算例で確かめましょう。直接還元法では、1年間の純収益を還元利回りで割り戻して価格を求めます。年間の純収益が300万円、還元利回りが5%であれば、300万円÷0.05=6,000万円が収益価格の目安です。もし還元利回りが4%へ下がると、300万円÷0.04=7,500万円となり、還元利回りが低いほど同じ純収益でも価格は高く評価されます。
収益還元法は、賃貸用不動産や投資用不動産の評価と相性がよく、不動産の証券化のレッスンで学ぶ投資判断の土台になります。鑑定評価では、複数の手法を併用することが原則とされています。
例題
次の空欄にあてはまる語句を選んでみましょう。
相続税や贈与税の財産評価の基準となる相続税路線価は、地価公示の公示価格の( )程度を価格水準の目安として定められている。
答え合わせ
80%です。相続税路線価は国税庁が毎年1月1日を基準日として定めるもので、公示価格の80%程度の水準とされています。一方、固定資産税評価額は公示価格の70%程度の水準で、市町村が3年ごとに評価替えを行います。80%と70%、毎年と3年ごとという対応を取り違えないよう、「相続税は8割・固定資産税は7割」と組で覚えましょう。
応用
もう一問、登記の効力を考えてみましょう。
Aさんは、登記記録上の所有者であるBさんから土地を購入し、所有権移転登記を済ませた。しかしその後、真実の所有者はCさんであり、Bさんの登記は真実の権利関係と異なるものであったことが判明した。Aさんの所有権の取得は保護されるか。
答え合わせ
原則として保護されません。不動産登記には公信力がないため、登記の内容を信頼して真実の権利者でない者から不動産を買っても、その信頼は法律上保護されず、原則として所有権を取得できません。登記の対抗力(登記をすれば自分の権利を第三者に主張できる力)と混同しやすいところで、対抗力はある・公信力はない、という組合せが不動産登記の効力の核心です。実務で登記だけに頼らず、現地調査や売主の本人確認、権利証などの確認を重ねるのは、この公信力の不存在を補うためです。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 返還を要する敷金の収入計上の判定解く
- 消費税が非課税となる貸付けの選択解く
- 譲渡した年の1月1日による所有期間の判定解く
- 居住用財産の特例を併用した税額の計算解く
- 土地と建設資金を出し合う有効活用手法の選択解く